3.1 国際単位系 3.2 法定計量単位 3.3 法定基本量 3.4時空、力学関係単位 3.5材料力学関連の単位3.6 熱関連の単位 3.7 電磁気関連の単位 3.8 光関連の単位 3.9 放射能関連の単位 3.10 その他の単位3.11 特殊な単位 3.12 非SI単位 3.13 各種単位換算表 3.14 SI単位関係史 コーヒータイム(3)青春執筆後記(第三章)
1687 年ロバート・フックは「ばねに力Fを加えるとその力とばねの伸びxは比例する」という法則を発見する。現在の常識からすれば、極めて当たり前のことである。それから 120 年も経って、トーマス・ヤングは弾性限界内においては「荷重によって生ずる材料の応力 σ とそのときの歪み ε とは比例し、その定数 E は材料に固有である」という原則を提示した。その定数はヤング率または弾性係数と呼ばれるものである。ばねの場合はその伸びは目で見ることが出来るほど大きい。だからそれを ばね秤として利用することができる。だが、材料自体の場合の歪みは極めて小さい。精密な測定器がなければとても表現できないから、長い年月を要したと思われる。これらは材料力学の基本となる原則である。そして材料力学は理論が主体の力学とは違い、材料の物性データがなければ始まらないのである。材料と名の付くゆえんである。
単位面積の気体や液体に力が加わった場合、圧力というが、それが固体になると応力といい、Pa または N/m2で表す。鉄鋼関係では N/mm2 を使用するが、これは MPa (メガパスカル)と同じである。材料関係では右図のような圧縮、引張、剪断強度などにも Pa の単位を使用する。
σt は金属や繊維などの細長い材料を引張り、その力 F を材料の面積で割った値である。破断するまで引張ったときの応力を引張強度または引張強さという。引張始めると材料が伸びていく。このときの力 F と伸びが直線的に比例する限界値を降伏応力という。この比例限界を超えると急に伸びが大きくなり、比例しなくなる。
σc は引張の逆であり、比較的比重の小さい材料に適用される。鋼材のように強度が大きいものは圧縮に適さない。比重が小さいから試験片の断面積は引張り試験よりはるかに大きくなる。これも単純に圧縮力 F(N) を断面積で割った値である。
τは文字どおりねじられる材料に発生する。機械の駆動用軸などに常に発生する応力である。この場合の応力は荷重を断面積で割っただけで得られるほど単純ではない。
引張も圧縮も荷重は材料の軸方向にあり、これと直交する断面の垂直方向に生じる応力だからこれを垂直応力ともいう。これに対し剪断応力は右図(1)のようにリベットは中央で上下にずれようとする。荷重がすれ違うのであるが、この場合も荷重Fをリベットの断面積で割った値が剪断強さ(剪断応力)となる。
(2)は接着剤の試験片であり、この場合も接着面が剪断される。剪断の意味を理解しやすい例であり、通常引張剪断という。
材料を引張ればどんな材料でも伸びる。最初の長さを?0、伸びた後の全長さを?1 として 伸びた割合 ε は ε = (?1 -?0 )/ ?0 となり、これは + の値になる。一方直径の方はこちらは当然縮むのである。
最初の直径を d0、引張後の直径を d1 とすると ε´= (d0- d1 )/d0 とおく。
これらの関係は比例することがわかり、
ε´/ε = μ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・(20)
としてこの μ をポアソン比という。多くの金属では 0.28~0.33、プラスチック等で 0.1~15 である。
構造計算には必要な値である。
前述のヤングの原則を式で表すと次のようになる。
E =σ/ε ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(21)
このヤング率 E を剛性率または弾性係数ともいう。(21)式における歪み ε は単なる歪みの絶対値ではなく右図に示したような歪み率
ε = ΔL/L0 =(L1-L0 )/ L0 である。この値は非常に小さいので
E は大きな数値となる。ε は無名数であるからヤング率(剛性率)の単位は応力と同じ Pa (N/m2)になる。
引張または圧縮の場合を縦弾性係数という。剪断変形の場合横弾性係数といい、G で表す。歪みを γ とすれば G =τ/γ となる。(詳しくは5章18節参照)
例 題
長さ 0.5 m で直径 2 mm の針金 ( E = 602 GPa)に体重 60 kg の人がぶら下がったとした場合、針金はいくら伸びるか。
【解】針金の断面積は (0.002/2)2 ×π=3.14×10-6 m2
針金に生じる応力は σ = 60×9.8/3.14×10-6
= 1.87×108 Pa (19.06 kgf/mm2)
伸び率 ε は(21)式から ε=σ/E = 1.87×108/602×109 =9.08×10-4
従って針金の伸びは Δ? =ε?0 = 9.08×10-4 ×0.5=4.54×10-4 m = 0.45 mm
右図において(A) は材料力学における片持ち梁といわれるものである。力 P(N) と材料の腕の長さ L(m) との積を曲げモーメントという。これは物体を回転させようとする力の働きであり、次の式で表す。
M = PL・・・・・・・・・・・・・・・ (22)
(B) の場合は単純支持梁であるがこの場合の曲げモーメントは
M = (P/2)(L/2) = PL/4・・・・・・・ (23)
どんな材料でも力が加われば変形する。それを中心に構築したのが材料力学である。しかし単なる力学の場合は、そのような変形を無視し完全剛体として考える。いずれにしても力はベクトルであるから方向や向きを考慮しその合成や分解の計算を行う。(22)や(23)
式は簡単な形をしているが、支持点や作用点が多くなると複雑な計算式に発展する。どんなに複雑でも曲げモーメントは力と長さの積であることに変わりはなく、単位も
N・m である。
右図のような集中荷重を受けた両端支持梁がある。この梁における A , B 点の反力を求めよ。
【解】反力 RA と RB の二つの支持力で全荷重を支えていることから
RA + RB =600 + 900 = 1500 N・・・・・・・・・ (a)
これだけではどうにもならないので、曲げモーメントから、もう一つの式を導く。この場合 A の位置をボルトと考えそれをスパナ で回すことを考える。しかしこのスパナは荷重と反力が釣り合ってまわらないスパナである。そのことから次の式が導ける。
600×2.5 + 900×3.5 = RB ×5.2
RB =(600×2.5 + 900×3.5)/5.2=4650/5.2=894.2 N
故に(a)式 から
RA =605.8 N
もし RB をボルトとみなして、RA を求めても同じ結果になる。
900(5.2-3.5) + 600(5.2-2.5) = RA×5.2 より
RA = 605.8 N となり (a) 式より RB =894.2 N
右図の場合はモーメントと同じ単位であるが、この場合力 F は円周方向の回転、ねじりなどの力であり、これをトルク(T)という。トルクはこの回そうとする力 F と回転の中心からの距離(半径) L の積で表わされる。すなわち T = FL である。このトルクはモーターやエンジンなど動力機器や回転する部品などでよく使われる単位である。
この N・m という単位は前項で述べた仕事や後に述べる熱量と見かけ上同じである。単位は同じでも名称が異なる例は少なくない。モーメントやトルクにしても、J と同じだからとしてそれに置き換えると意味不明になる。一種の位置エネルギーには違いないが、物理量としての状況にふさわしい名称が付けられている。内容は同じでもそれぞれの分野に適した単位に構成されているのである。エネルギーの場合は特にその多様性から多くの単位で表現できると言うことでもある。動力機器の場合はトルク
T と回転数 n(1/min) から、動力 (KW)P を求めることができる。
P =2πnT/60×1000 (kW) ・・・・・・・・・・・・・・・・・(24)
長さの 3 乗だが体積を表しているわけではない。前ページの図における梁の場合、その断面形状により曲げ荷重 P に対する抵抗力が異なってくる。長方形断面の場合の Z は次式で与えられる。h=厚さ、b= 幅 とする。
Z = bh2/6 ・・・・・・・・・・・・・・・・(25)
様々な断面の梁について、断面係数が計算されているがその例を次頁の表に示す。
前の図(3.5.3) (B) の梁が長方形断面 (bh) とすれば、このときの梁の最大応力 σ は次のようになる。
σ = M/Z = (PL/4)(bh2/6 ) = (2/3)PL/bh2 ・・・・・・・・・・・・(26)
前出の断面係数は梁の強度に関するものであるが、この断面二次モーメントは梁の撓みに関連するものである。右図は梁に荷重 P(N) をかけたときの撓みを示しているが、梁は一見なめらかな曲線を描いているようだが、全体が一つの円弧を形成しているわけではない。しかし少なくとも荷重の付近はそれに近いものとして次の式が成立する。
1/ρ = M/ EI・・・・・・・・・・・・・・・・ (27)
ここで ρ は曲率半径、E は 前出のヤング率、I が断面二次モーメント(または慣性モーメント) である。この I の値は断面係数と同じく、種々の断面について計算されており、その例のいくつかを
下の表(3.5.6)に示した。
これは名称は異なるけれど単なる長さの基本単位(m)と同じである。しかし前述したように同じ組立単位にも名称が違うと、それなりに物理内容が異なるものがある。この撓みにしても複雑な組立単位が整理され消されて残ったのが(m)だけということである。前述したように、材料に力を加えれば撓(たわ)んだり変形したりする。それに例外はなく、梁も荷重
P(N) によって撓む。その計算式は前出の 3.5.3 節モーメントで述べた図中片持ち梁 (A) の先端集中荷重の場合の撓み d は
d = PL3/3 EI ・・・・・・・・・・・・(28)
同じく上図の両端単純支持梁の中央集中荷重のときの撓み d は
d = PL3/48 EI ・・・・・・・・・・・・・・(29)
〔∵ (28) 式において P に P/2、L に L/2 を代入する〕
ここで単位を整理してみると PL3/EI は
N・m3/Pa・m4 = N/Pa・m =(kg・m/s2)/(kg/s2)= m
となり、もろもろの単位が消去されて m だけが残る。撓みという長さを求めるのだから当たり前のことではある。
例 題
厚さ50 mm 、幅 30 cm、 長さ 4 m の木材の足場板がある。スパン(支持間隔)を 3.8 m とし、中央に
60 kg の荷重を負荷した時の中央部の撓み d を求める。但し木材のヤング率を 9×109 Pa とする。
【解】この条件では(29)式がそっくり適用できる。まず 断面二次モーメント I を求める。
足場板の断面は長方形であるから右の表より
I = bh3/12 の式から
I = 0.3×0.053 /12 =3.12×10-6 m4
荷重 P は P = mg より
P = 60×9.8 = 588 N(kg・m/s2 )
ヤング率 E は題意より E = 9.8×109 Pa
(29)式にこれらの値を代入して
d = 588×3.83 /48×9×109 ×3.12×10-6 =0.024 m=2.4 cm