第 四 章 目 次 4.1 実用数学とは 4.2文章問題 4.3 y=ax から y=ux 4.4 三角関数 4.5 指数関数 y=ux 4.6 対数関数 logay=x 4.7 数学あとがき 4.8 数学公式集
コーヒータイム(4)詰め将棋と魔方陣 執筆後記
関数のうちの最も簡単な一次関数であるが一般的な式では y = ax + bとなる。この式 y=ax+b ・・・・・・・・・・・・(1)
で a は定数であり、かりに a=2 、b=0 とするとそのグラフは 図1の @のようになり、a=2 、b=2 とすればそのグラフは図1のAである。この式で
a を定数としているが、どんな値でも取り得るものとして a も変数と考えて u と置くと
y = ux + bとなる。
bも定数であるが、この式に具体的物理量を当てはめる場合、ux とbの次元が一致していなければ足し算が不可能であることは前述した。
ここでは簡単にするために、このbを0とすると(1)式は
y=ux ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
となり、これは 3 変数(3元)の2次式である。これをx-yのグラフに表すと図 2 のように、全面がこの式の線で埋め尽くされることになる。だが物理量にマイナスはないから、実際工学的に使用するグラフは
図3 のように第一象限だけのグラフとなる。さて 今度は y と u を入れ替えると u = yx となりこれを変形すると(3)のような分数関数になる※1。
y=u/x ・・・・・・・・・・・・・・・(3)
このグラフは 図 4 のような曲線になる。この場合もすべての値をグラフに書き込むとやはりこの式の線で図を埋め尽くしてしまう。しかし分数関数などとあらためて考える必要はない。(3)式において
y と u または x と u を両軸にとると分数関数でなくなる。実際に文字式においては、y も x も様々な文字に置き換えられるので、yとxを両軸にとらなければならない理由は何もないからである。図3のように直線になるように決めればよい。要するに(2)も(3)も文字を入れ替えれば同じであり、わざわざ面倒な曲線になるような設定をする必要はない。y
軸 x 軸ではなく、縦軸横軸と考えた方がよい。要するに積の形になる文字を両軸にとらなければ直線になるのである。 実用数学では前述したように数字には必ず単位がついており、それがどれほど純粋数学と大きな差を生み出すかをこれから順に調べていく。
この章では y = ux という単純な式がどれほど多くの基礎的物理法則に関係しているかが分かればよいであろう。
※1 別にyとu を入れ替える必要はない。 y/u=x は x を縦軸に u を横軸にとれば、x は分数関数である。
面 積
面積は幅b×高さhであり、それを A で表すと A = hb となる。この式が y=ux と同じ形であり、文字が変わっているだけである。図 5 において、(1)は長方形h×b が面積を表すことは自明の理である。しかし(2)から(4)までの三角形や台形、円そして(5)や(6)の不定形の面積までもすべて基本は 幅×高さ
で表されるのである。例えば円の場合の面積はA= π(b/2)2 であることはすでに学んでいる。これを変型するとA=(π/4)b2 となり、b2つまり長さの二乗に π/4 という係数を掛けた形になる。台形は A=h(c+b)/2 であり、三角形は A=hb/2 となり、いずれも係数×長さの二乗の形になる。問題は(5),(6)の不定形の場合であろう。これも長さの二乗に何か係数を掛けた値になるはずであるが、この係数値が不明であり、それを見つけるのは不可能に近い。この場合は
図 6 のように小さな方形の面積に分解し、その方形の面積をすべて足し算するのである。二次元(面積)をいくら足し算しても二次元である。小さく分ければ分けるほど精度は上がり、これが積分の考え方である。実際はこんな面倒なことをしなくても重量測定し面積の比較で容易に求めることができる。しかし土地のような大きなものはやはり三角測量というこの手法で足し算することになる。さて面積を
A としてy軸にとり、幅 b をx軸にとって h の値を変えたグラフの例は 図 7 のようになる。この場合 h は係数であるが、種々の値を取り得るので変数と見なして、それらをすべて書き加えると前述したように、この図は直線群で塗りつぶされる。赤線は h= b の場合であり、これは正方形を意味し、y=x2 のグラフと同じものである。
体 積
次に体積の場合を考えよう。体積は高さh×幅b×奥行cであり、それはまた高さh×面積 A と同じであり、三次元である。
V =h×b×c=h×A
体積V をy 軸に取り、x 軸に高さhをとると、面積 A が係数となり、そのグラフの例は 図 8 になる。直方体は高さh×幅b×奥行cであるが、どんな体積でも長さの三乗に係数を掛けた形で表される。例えば球体の体積は V=(4π/3)r3 (r:半径)である。このような単純な計算で求められない不定形の体積はやはり、小さな立方体に分割し、それをすべて足し算する。これもただ考え方をいったまでで、実際はこんな面倒な計算はしないで比重と重量測定により体積を求める。しかし重量測定ができないほど大きなものはやはり小さな立方体に分割することしかできない。この体積の例では変数は
4 つである。しかし二つの変数、幅と奥行きを面積に置き換えて一つの文字にすると三個の変数になる。このような平面のグラフにする場合は、変数がどんなに多くても二つの変数と残りを纏めて一つの変数にすると、y
= ux の式と同じ形になりグラフ化が可能になる。 図 8 の赤線は正方形の場合であり 式は y=x3 となる。
面積や体積は長さのみの二乗、三乗であったが、今度は単位が異なる物理量の積である。距離(長さ)を時間で割ると速度を表すことは、すでに紹介したが再掲する。
υ = L/t・・・・・・・・・・・・・・・ (4)
この式を変形すれば L =υt や t = L/υ が得られるが、形が変わっても式の意味は全く同じである。この式を υ を縦軸に、横軸に L をとったグラフの例は 図 9 であり、当然t は直線となる。L を縦軸に、tを横にとってもグラフは 図 11 の直線群となる。υ とtを両軸にとれば L は曲線になる(図10)。 式を変形しても内容が変わらないように、グラフもまた 9、10、11 の図の意味は全く同じである。
「y = ax は分かるけれど、L = υt はわからない」ということにはならない筈である。
距離を時間で割れば速度が得られるのは明らかであるが、この式だけでは速度に関してほんの一面しか表現していない。車の場合などは、速度ゼロからいきなり
40 km/h などの速度になるわけではない。
つまり加速という問題がつきまとうのであり、υ = L/t の式は現実的にはあくまで平均速度でしかない。
図10は具体的な数字を目盛ったグラフであり、時速40 km/hで4時間走ると赤点の位置に距離が示され、160kmが得られる。 さらに80 km/hで5時間走行した場合は、青点の位置に400kmと読み取れる。赤線や青線で囲まれた面積はそれぞれの距離を示しているが分数関数のグラフでは当然のことであり、とりたてて言及することででもない。
縦軸横軸の積が面積を表しそれが距離を表すことは、分数関数のグラフでのみ成立することを覚えておこう。(これは式からも明らかである。図14と関連)。
縦軸横軸の積が面積を表しそれが距離を表すことは、分数関数のグラフでのみ成立することを覚えておこう。(これは式からも明らかである)。
しかし実際の走行は連続しており、現実に近い状態を一つのグラフで考えると図 12 におけ
る矢印のついた赤線で表すことになる。ここで図 12 において速度ゼロからの加速部分を考えてみる。ここを拡大したのが 図 13 である(時間の単位は秒に変更)。
図 13 において赤線は直線であるから、このグラフの式は υ = 係数×t という式で表されなければならないはずである。
従ってこの場合速度の増加量
υ2−υ1 =Δυ を時間の増加量
t2−t1 =Δt で割った値でなければならない。 つまり Δυ/Δt であり、これが加速度 a といわれるものである。 故に
υ =(Δυ/Δt) t = a t ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5)
となり、図 13 の直線部が理解できる。
加速度の単位は速度を時間で割るから (m/s)/s=m/s2 となる。これはあくまで瞬間の時間における平均加速度であり、1 秒間に 1 m/sの割合で速度が増加してゆくということである。
これらを纏めて、一括して 図 14 のように説明されることがある。
青の斜線で囲まれた部分が初速 υ0で走行した距離(L0 = υ0t)であり、緑の線で囲まれた部分が等加速度による走行距離(L1 =at2/2)ということである。つまり、三角形の高さ at とそれに費やした時間t の積 at×t = at2 であり、三角形の面積であるからこれを 1/2 とするのである。そしてこれらの合計値
(L0 + L1) = L がt 時間の走行距離となる。そして次式が示されて説明は終わる。
υ =υ0 + at ・・・・・・・・・・・・・・・(6)
L = L0 + L1 = υ0t + at2/2 ・・・・・・(7)
しかしこの 14 図 はかなり理解しづらい図である。
この図の面積は式 υ =L/t を表現したものであり 図 10 と同じ分数関数である。故に青の斜線部分の面積が L = υ0 t であり、 υ0 = L/t となるのである(図10参照)。
しかし赤の線 は υ = at であり、a はその勾配である。このグラフの縦軸は速度υ であり、このグラフに υ = at と υ0 = L/t 、つまり 分数関数と一次関数を同じ図に同居させて(図12と図13)、それぞれの面積を合計するのはかなり理解しずらいと思われる。
υ=L/t ではυとt が逆比例の関係にあるのに、a という加速度を介すると υ = at と比例関係になるのも頭の切り替えが必要である。要するに 図 12 のような分数関数になる変数の配置で説明することに難があると思われる。
L を求めるためには(7)式を 図 11 のように L とt を両軸に配置した方が分かりやすい。そうすれば L(y軸)はt(x軸)に関して 2 次式となり、図 15 に示す曲線となる。
図中の青線は L 1=υ0 t
赤線は L2=at2/2
黒線はこの合計(L = L1 + L2)である。
車が 10 m/sで走っていて、28 m/sに加速するのに 6 秒かかる場合の、加速度と 6 秒間に進んだ距離を求めよ。
【解】この場合の加速度は Δυ/Δt から a = (28 −10)/6−0=3 m/s
10 m/s で 6 秒間走るから L1 = 10×6 = 60 m
加速による走行距離は L2 = at2/2 =3×62/2=54 m
全走行距離は L = L1 + L2 =60 + 54 = 114 m
さて(6)式も(7)式も右の項は和の形になっている。これらの項は当然その単位や次元が同じでなければ足し算が出きないことは前述した。また当然左辺と右辺もそれらは同じでなければならない。
それを調べてみることにする。(6)で左辺はυ(m/s)であるから左辺の項もそれぞれυ(m/s)でなければならない。
a =υ/t であるから at =(υ/t)t =υ となり左右は同じυ である。
(7)で υ0t も at2 も 左辺と同じ L の次元でなければならない。
υ0t = (L/t)t = L 、 at2 = (L/t2)t2 = L となり 左右の次元は一致する。
同じ速度の次元であっても、一つの式に単位を(m/s)や(km/h)を同居させていはいけない。もし同居させるなら換算係数をかけなければならなず、距離の場合も
m と km を混在させるなら換算係数が必要である。この計算結果は 図 15 に表現されている。
平均時速 60 km で走っている車が急ブレーキを掛けて 20 m 進んで停止した。このときの加速度と止まるまでの時間はいくらか。
【解】 まず速度と加速度の単位を整合させるため 60 km/h = 16.66 m/s とする。
加速度は(6)と(7)からt を消去した 次式を導く。
2 aL = υ2−υ02 ・・・・・・・・・・・・・・・・(8)
(8)式に L=20 、υ0 =16.66 、 υ = 0 を代入して
a =( 0 −16.662 )/2×20 =−6.94 m/s となる。この場合、加速度は減速だから負になる。
時間は (5)式を変形し t =υ/a として υ = 16.66 、 a = 6.94 を代入し
t= 16.66 / 6.94 = 2.4 s となる。
さて(1)式のような速度の式が、実際に広く使われているのは、鉄道のダイヤグラムであろう。実際のダイヤグラムの例を 図16 に示しておく。図11
のように縦軸に距離を、横軸に時間(実際の目盛りは 1 分を 1 mm 間隔とし、一日 24 時間とするので、横幅は 1.4 mにもなる)として、グラフを書くと直線になる。縦軸には距離に合わせて各駅名を目盛りにする。列車は往復するから、どちらかの係数は−になる。快速は赤線で示され、普通電車を追い越してゆく状況がひと目で分かる。当然ながら各電車のグラフの傾斜がその速度の大きさを表している。駅での停車時間があるから段付きのグラフになる。
発車時の加速度は瞬間的だからこの図では完全無視されているが、それで何も問題はない。y = ux という関数が L =υt に文字が置き換わっただけであるが、実に分かりやすい応用例である。一見してこれが(y = ax)
つまりυ =L/t の式だけの応用であるとは、製作している本人も気がついていないかも知れない。
作り方を覚えれば L = υt の式など知らなくても製作できるからである。