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第四章 ものづくり数学    

第 四 章 目 次  4.1 実用数学とは  4.2文章問題   4.3  y=ax → y=ux     4.4 三角関数  
4.5 指数関数 y=ux   4.6 対数関数 logay=x  4.7 数学あとがき  4.8 数学公式集.pdf  
 コーヒータイム(4)詰め将棋と魔方陣  執筆後記

4.6 対数関数  logay = X

 4.6.1  対数関数の基礎 

  (1) 対数グラフ   

指数関数のグラフ 先に示した指数関数 y=ax  において (a>0,a≠1、y>0)のとき
     Logay=x ・・・・・・・・・・・・・・・・・(19)
と書いてこの x を a を底とする y の対数という。また y を a を底とする x の真数という。通常この(19)式で x と y を入れ替えて、 y=Logax とし指数関数と対数関数は逆数関係にあるとする。しかしxとyを入れ替えることは、グラフを反転させることであり、本質的な内容は変わらない。再掲図18 が図 20 になるだけである。




対数関数のグラフ  y=axを対数関数に変換する場合、Loga を両辺につける。そうすると Logay= Logaa となる。後に述べるように対数の場合、指数x は Log に掛ける数になる。
Logaa =xLogaa 、 そして Logaa = 1 であるから Logay =x となる。 従って x= Logay のグラフは y=ax のグラフと全く同じものである。これをわざわざxとyを入れ替えるから y=Logax となり、グラフは反転することになる。この関係は対数目盛を使用することでこれらは直線にすることができる。それが 図21 である。x軸を等分目盛、y軸のみ対数目盛にすることで直線になる。a を変数 u に替えると、任意の値で 図21 のように全面を埋め尽くすことになる。直線の方が遙かに利用価値が高い。曲線のグラフについてその特徴を単調に減少するとか増加するとかを教科書で説明しているがあまり利用価値がない。

指数と対数の関係は実際の数値を式に入れてみると理解が早いかも知れない。   指数関数  y=a ,  1 = 100 ,  10=101 ,   100=102 ,            25=52 ,   81=34
  対数関数   Logay=x,   log101=0 ,  log1010=1,
       log10100=2,   log525 = 2 ,   log381=4
指数関数を利用する場合、a とx が既知で yを求めると言うケースが多いかも知れない。しかし対数の場合は a と y が 既知でxを求めるつまり指数を求めることになる。いずれにしても二つの変数が決まれば残りの未知数が求められ、関数電卓があれば理屈を知らなくてもこれらは極めて容易に求められる。

(2) 対数法則 

 (3) 指標と仮数  

  対数の性質として指標と仮数との関係を数式を用い実例で示すと次のようになる。
まず適当な数 0.000291から21900までの数字の対数を求めたものである。
対数の法則 log 10 m・n=log 10m+ log 10n、 log 10 mn=nlog 10 m を用いる。
 
常用対数の整数部を指標といい、小数部を仮数という。上の例で log100.000219 = において が指標、0.34 が仮数である。またlog1021900=4.34において4 が指標、0.34 が仮数である。この場合仮数は共通であり、指標が異なるだけとなる。整数部分がn桁の対数の指標はn-1 である。小数第n位から始まる小数の対数の指標は n(すなわち-n)である。ゆえに対数表とは常用対数の仮数表のことである。
1 から 10 までの対数が仮数となるから、どんな数も上の例のように 10 の累乗の積の形にすることで対数値を得ることができる。   

  (4)  対数グラフの特徴

 図21(前頁)はy軸だけ対数目盛にしたものである。
真数yは対数目盛であり決して 0 にならず、限りなくそれに近づくだけである。図21 は 10-10で終わっているが、10-11、10-12 といくらでも下に伸ばすことができる。しかし目盛りの寸法自体が小さくなることは決してない、言い換えれば小さくなればなるほど拡大された数字が表現されることになる。逆に大きい方も目盛りの寸法は同じであるから、大きくなればなるほど縮小された数字を見ることになる。これらが対数目盛の最大の特徴である。y=ux という単純な 3 変数関数のなかの x が指数になっただけの指数関数 y=u と対数関数x=loguyであるがこれだけで応用範囲が格段に広くなるのである。
y=logaxのグラフは y を対数目盛にすると 図22 のように曲線になる。両対数に書いてもやはり曲線になるが、図22 で y と x を入れ替えて x =logayとすると直線になる。故に指数関数(y=u)の文字を入れ替えて逆関数にする必要はさらさらない。直線にできるのであるから、それに絞って以後の説明をする。 

 (5) 底の変換と自然対数

対数の底に何を持ってこようと自由であり、特にe(2.7182818)を設定した場合は自然対数ということは前述した。しかしこのe(ネイピア数と呼ばれる)だけでなくどんな数字を底にしても、このy=10x のグラフで事足りるのである。それは対数の底の変換法則を利用することで可能になる。例えば次のようである。
底の変換と自然体数
ちなみに e は次の式で求められる。
eの式

 (6) 対数目盛の作り方

対数目盛さて今度は電卓を使って対数目盛を作る方法を図23で説明する。
対数目盛は等分目盛りと同じ長さでも数値の幅を大きく取れるので、工学の数式をグラフにするには最適である。まず最初に 1 から 10 までの目盛りの長さを適当に決める。
例えばそれをL(cm)とする。図23でAの点を 1 と定める。次にここから目盛りの長さを決めていくのであるが、Aの点は 1 だからこの対数値はゼロ、故に長さもゼロとする。次に 2 の対数値(常用対数)を求める。
Log102=0.301 であるからこれに長さ L を掛けて、その実際の長さを目盛り、そこを目盛り 2 とする。以下同様にして9まで目盛る。10 の位置は長さL そのもである。10 から 100 までの目盛り、また100 から 1000 までの目盛りも 1 から 10 までの目盛りと全く同じ長さであり、目盛りの数値だけを10 倍、100 倍とする。図24 にそれを示したが、等分目盛り(参考)と比較すると違いがよくわかる。対数目盛では、数値が大きくなるほど目盛りの間隔は狭くなり、等分目盛りと大きく異なるところである。また対数目盛では 0 を表現することが出来ない。0.1、0.01 と小さくはなるが、決してゼロにはならない。

(7)  対数目盛の特徴 (計算尺)

対数の性質図25 は対数の性質を示したものである。図中 a の目盛りは前述の方法で作ったものである。
(1)は a と a-1 を反対(左右逆)に並べたものであり、このようにすると目盛りの数値は互いに逆数関係になる。ここでは下の目盛りを 1/10 に付け替えて a の逆数になるようにしたが、上下の絶対寸法は全く同じである。
(2)では a の目盛りを 2 だけずらして並べたものである。こうすると上下の目盛りの関係はずらした分だけの比を表す。この関係はかけ算や割り算に使用できる。(3)は a の目盛りの長さを半分にして a と並べたものである。これにより a/2 の目盛りはaの二乗の値になり、逆から見れば平方根が得られる。同じように目盛り長さを1/3にすれば3乗または立方根の関係となる。ただしこれらすべてにおいて、位取りは数値が合うように修正しなければならない。このような関係が計算尺に利用されているのであり、また対数グラ
フやモノグラフ(計算図表)にも応用されるのである。

(8) 対数の特徴(直線)

速度の図 実際に前述の L = vt の式を対数グラフに置き換えてみる。再掲 10 図の等分目盛りではこのグラフは曲線である。それを対数グラフにすると図 26 のように平行な直線群になる。また図 11 のように勾配が変化する直線の場合はどうなるか。それは図 27 のようになり、やはり平行な直線群になる。等分目盛りと違って、対数グラフの場合はどんな配置をしても、また縦軸横軸にどんな変数を持ってきてもすべて直線になる。縦軸の対数の目盛りを上下逆にすると、直線群も方向が変わる。目盛りの長さを半分にすれば 2 乗の値を示す。これまで示してきたような性質を利用すればかなり複雑な式でも、計算図表(ノモグラフ)が製作できる。しかしあまり懲りすぎるとかえって使用法にとまどうことになり、無用の長物となる。関数電卓があれば、それを利用した方がよい場合もある。しかしそれでも、ノモグラフにはノモグラフの特徴があり、精度は悪いが、それが欠かせない分野もある。

  4.6.2  指数関数と対数関数のグラフ

(1)  詳細な真数を求める

対数関数のグラフ 指数関数と対数関数は同じであることはすでに述べた。そして図19 のような荒っぽい図は容易に書くことができる。x軸の目盛を等間隔に決めて、u=10 とし 45°の直線を引く。通常はy軸x軸の目盛が決まっていてそれにグラフを書くのであるが今回は逆にグラフを先に書いて、それにより目盛を決めるという訳である。x軸だけ決めてグラフを書きy軸の目盛を決めていく。故にy軸は対数目盛であることは分かるが目盛のより細かい所は不明である。これを明らかにしようというのが本項の目的である。x 軸は等分目盛だから、拡大し数値を入れるのは容易である。しかしy軸はそれができない。要するに指数関数 y=u のグラフからこのy軸(真数)の値を求めるのである。関数電卓を使えば簡単だがあえてそれを使用せず(だだし指数の計算だけは電卓を使用する)、グラフだけから求めてみるのである。それは指数と対数の関係を理解する一助として有効かと思えるからである。考え方はy=u は 3 変数関数であり、それらの二つの変数の値が決まれば残りの一つが決まる。u=10 の直線は任意の角度でも良く、45°の必然性はない。45°は見栄えがよいだけのことである。さて図19 で、y=10 の直線においてx=1 なら、y=10 である。y=6 の直線では x=1 ならy=6である。当たり前のことであるが、それではこのy=6 という直線をどうやって正確に書いたかということである。それは 6 の累乗を計算して、すでに決定している y の目盛に合致する x の値を求めるのである。それがx=9 であり、69 = 1.007×10 7 である。この2点(0、1)と(9、107)を結べばy=6となる。以下同様にして u=2、3,4,....9 までを正確に直線が描ければ、x=1 に対応する y の値を求めることができる。それがすなわちy軸の 1 から10 までの目盛において1から 9 までの整数の目盛になる。

  (2) 整数値 u のグラフを書く

さて整数の累乗だけでは、切りよくyの目盛に合致する数がないものがある。たとえば 3、7,11 等である。そこでさらに工夫する。図28 において u=10 の線上で x における 0.5 の位置は目盛の中間でありそれはまた寸法的に y 軸の目盛の中間でもある。そしてx=0.5 のとき、y=u0.5=100.5=√10=3.16 となり、この数値が、すなわちy目盛の中間値の値でもある。従って 3.5、7.5 等の累乗が3.16×10 に一致する数値があれば正確な直線を描くことができる。これらの計算結果を表1に示した。そしてこれをグラフ化したのが 図29である。(0,1)を原点として a=1~10 までの線が全部そろったことになる。

(3) グラフを拡大する

そして図 29 の赤い鎖線で囲った部分(yは 1~10、xは 0~1)の範囲を拡大したのが図30である。2,3,4、....という整数 u のそれぞれの線とx=1 の縦軸との交点から水平線を引くとy軸に 1 から 10 までの対数目盛ができあがる。対数目盛は 1 から 10 まで決まればそれでよい。あとは数値だけを 10 倍づつまたは 1/10 づつにしていけばすべての数に対応できる。これで「yの目盛を細かく記入する」という作業は終わりである。
図 30 において x=0.5 の赤線上における各 u 線との交点はy軸にその平方根を読み取ることができる。 指数関数において u>0 であればどんな数でも良い。これは対数関数に於いても同じである。そして u が 10 の場合に常用対数、u=2.7182818※1の場合に自然対数といい Log の代わりに Ln の記号を使う。
一般に対数の底(u)に何を選ばなければならないという理由はない。実用上必要に応じて選べばよい。
x=loguyであり、3 変数関数として任意の値が選べる。※1これを自然対数といい、eで表す。












4.6.3  指数・対数のグラフ

指数・対数グラフ さて今度は電卓を用い、図 30 を書き換えたのが 図 31である。Y=u のグラフであるが、この図において赤線は常用対数を表し、緑の線は自然対数を表している。xの値は対数の仮数であり、指数でもある。
 このグラフは大抵の数学書の巻末に付属している対数表をグラフにしたものである。
対数の底が 10 または e 以外に2、3,4...... などの線も記入してあるが、これらの線から直接それらの低に対する値を得るには Y の値が 10 になるまで延長しなければならい。
( u=2 の場合x=3.32 )
しかし常用対数( u=10 )の赤線 1 本だけですべての低に対応できるのである。
それは対数の底の変換を利用することで可能になる。x=loguy=log10y/log10u となり u が決まれば log10u は定数になる。たとえば 8 の自然対数は x=log e 8 = log 10 8 /log 10 e =0.90/0.433 = 2.08 となる。

 4.6.4  対数関数の応用

  (1) 株式罫線(応用その1)

株式罫線 対数グラフの特徴を目視で実感できるのは株価のグラフであろう。どういう訳か株価のグラフはすべて等分目盛りで作られている。そして株価に合わせて目盛りを調節しているから、グラフの目盛の種類はやたら多くなる。ゆえに変動の幅を知るためには、グラフの目盛りの大きさを常に認識していなければならない。等分目盛りでは1~10 万までの大きな幅を絶対に固定できず、株価に合わせてサイズ変更するしかない。それは等分目盛りの宿命である。図32は等分目盛りの例である。目盛りが拡大されており、株価が大きく変動しているように見える。これを対数目盛に置き換えたのが図33であり、動きが止まったように見える。株価の変動は絶対値ではなく比率で比較しなければならない。1000 円が1100 円になっても10 % の変動であるが、50 円が100 円になれば、100 %の変動である。こういう事が一瞥で分かるのが、対数グラフであり、等分目盛りではほとんど不可能である。1円から百万円まで、要するにすべての株価を一つの目盛りサイズでカバーできるようにすれば、表示されたグラフのデータの大きさがそのまま比較できる。目盛の大きさに関心を払う必要は全くない。グラフの形を見ただけで変化を知ることが出来る。目盛りサイズが同じだからどんな株価であってもその対数目盛の必要な部分を切り取って使用すればよい。対数目盛がもっとも効果を発揮する応用例と思われる。対数目盛を使用したグラフもたまに見かけるが、株価に応じて目盛りサイズを変えているから、ほとんど意味がない。

(2)  金利関係の計算図表(応用その2)

さて今度は指数関数の項で紹介した貯金や積立、ローン償還などを対数尺を用いて計算図表にする場合を紹介する。次ページの図34がその計算図表であるが、いきなり複雑そうなグラフで面食らうかも知れない。対数の応用としては計算図表が最も説明し易いと思われるのであえて紹介する。

イ、 据え置きの計算

 図34において中央のピンクの図が(1+r) を計算する所であり、4.5.3.2 節で述べた内容を図にしたものである。例として年利率r が0.06(6%)で15年間 ある金額を据え置いた場合、元利合計はいくらになるかを計算する。まず図の下の目盛りn(回数、月数)の 15 から、図のように赤の矢印で上に向かい、r=0.06 との交点を求める。この点から水平線を引く。これが左側の青い線と交わり、預けた元金が何倍になるかを表す係数 K1 の値が示される。それは(1+r) に他ならない。図では 2.39 の値が得られる。これは預けた金額が 15 年で 2.39 倍ということである。元金にこの倍率をかければ、元利合計が得られる。50 万円預ければ、50×2.39=119.5 万円である。 従って K1 =元利合計/元金 という式が成立する。

ロ、定額積立の計算

これは一定の金額を一定期間積み立てた場合の元利合計を求める場合である。説明を簡単にするために、前例と同じ条件とする。年利 0.06、期間 15 年 一定の金額を積立てると元利合計はいくらになるか。
この場合も必ず(1+r) という式が顔を出す。故に前例と同じく横に引いた線を利用し、右の青い図を使用する。 この横線の右端に黒丸があり(ここも当然 2.39 である)、この点から短いガイド線に沿って黒い補助線1に進み、その線上の青丸(A)に至る。この点から右の利率rの目盛線上の 0.06 に線を引く。この線と中央の線(倍率K2)との交点に倍率 24.7 が得られる。この場合の K2 は元利合計が毎年の積立金額の何倍かを意味している。 K2=元利合計/一回の積立金額である。 仮に毎年 5 万円 定額で 15 年間 積立てると 5×24.7=123.5 万円となる。積立て総額は 5万×15=75 万円である。

ハ、償還金額の計算

これはある金額 P を借りて定額で一定期間返済していく場合である。やはり前例と同じく、借入金 P を年利 0.06 で借り、15 年で返済すると K1 は 同じく2.39 である。今度は図の左の黄色い図面を使用する。
K1の線上の赤丸(2.39)からガイド線に沿って補助線 2 上の点(B)に至る。この点から左端の利率rの線(0.06)に線を引く。この線と赤線(倍率K3)との交点に9.7 が得られる。この K3 は借入金Pが定額で返済する金額の何倍になるかを示している。 例えば 100 万円を借りて 完済するには、毎年いくら返済すれば良いかという場合 K3 =借入金/毎回の返済額=100/9.7 =10.31 万円 となる。 返済総額は 10.31×15=154.65 万円となる。
この図 34 における中央の据置(ピンク色)の部分は、先に紹介した図 31 と基本的には同じものである。 図 31 では Y=10 のグラフであるが、それが 図 34 では Y=(1+r) に変わっただけのことである。そしてこの据置の図が一定額をある期間預けっぱなしのときの、元利合計が何倍かを表す基本の部分である。この Y の値からガイド線を経て補助線に進むのはこのグラフを作るために目盛りを変換しているためである。例えば積立ての場合は
K2=〔(1+r)/r〕〔(1+r)-1〕である。ここで(1+r)= Y と置くと
  K2=〔(1+r)/r〕[Y-1〕となる。
さらに (1+r)/r=(1/r)+ 1 = 1/R 、Y-1 = Y1 とおいて整理すると K2 = Y1/R となって単純な形になる。実際は対数の目盛りをつくり、RやY1 を計算して対数目盛とし、Rの場合はそれを図ではrで表示しているのである。Y1 が補助線となり、また利率rは対数目盛が裏に隠れており、表面上は対数目盛ではない。償還の場合も K3=〔(1+r) - 1〕/r(1+r) であるから、先ほどと同じく
 (1+r)=Y とすると K3 =(Y-1)/rY
故に (Y-1)Y=Y2 とおくと K3=Y2 /r となり、先の K2 と同じ形になる。
だから補助線と倍率 K2 や K3 と利率rとの関係は単純なノモグラフとなっている。据置のグラフの下にn(回数)の目盛りがあるが、この範囲はまだ狭い。もっと広げることもできるが、図が大きくなるのでやむを得ず 40 までとした。しかしたとえばこの図からでも 60 回などの大きなnの値に対しても計算は可能である。
n が 60 の場合は 60/2 = 30 として図から K1 の値を求める。その K1 の値を 2 倍にしたK1 を K1 線上に求める。後は同じ操作でよい。この根拠は次の式による。
【Y =(1+r)2n 、log 10 y=2nlog 10(1+r)】
もう一度整理すると
据置の場合 K1 =(1+r)
積立の場合 K2 =〔(1+r)/r〕〔(1+r)-1〕=Y1/R
償還の場合 K3 =〔(1+r) - 1〕/r(1+r) = Y2 /r
積立や償還の計算をするとき最後に使用する利率はK1を得るときの利率と同じでなければならない。
K の各式中に(1+r) を得る場合の r と別の r が存在するからである。
応用例としては少し難しすぎたであろうか。しかし Y = 10X や log 10Y = X の応用から一歩も出ていないのである。このような図をみると一瞥してしり込みする人がいる。簡単な公式でも工夫によって有用な発展は可能であることを知ってもらいたい。

ノモグラフ

4.6.5  追記(まとめ)

(1) 理論的とは

91頁の式(参考3) LFT はアルキメデスが発見したテコの原理であり、彼は「我に支点と棒を与えよ、さすれば地球を動かしてみせる」と言った。現実的にはあり得ないことであるが、理論的には可能であるとアルキメデス自身は疑わなかったであろう。しかし理論的とはどういうことかを考えてみよう。地球を動かすような支点も長い棒も物理的にあり得ないことであるが、100 歩譲ってそれを与えたとする。
前式から L1F1 >L2F2
  L1= 地球の質量 6×1024 kg  F1= 地球と支点の距離 6.4×106 m (地球の半径とする)
  F2=人間の質量 60 kg    
 故にL2>6×1024 ×6.4×106 /60= 6.4×1029 m 
となる。現在観測可能な宇宙の大きさは 150 億光年(1.4×1026m)とされているから、想定される棒の長さは、そのおよそ 4600 倍である。宇宙の大きさから 4600 倍もはみ出してしまう長い棒が必要になる。これでも理論的には可能というべきか。もっというならばこのテコの全体には均一な重力圏になければならない。無重力のなかでは何も起こらない。しかし数学的にはなにも矛盾がないので、「数学的には可能である」と言うべきであろう。物理的、工学的に実現可能なものでなければ、「理論的に」とはとても言えないであろう。数学的には問題がないとしても、実際には荒唐無稽なものがあることも知らなければならない。
それもこのように実際に数値をいれて計算値を算出してみなければわからない。数学が先にあるのではなく、物理現象が先にあって、それを数学的にどのように説明できるかということが科学技術である。先に数学的想定をして、だからそれに合う自然現象があるはずだとするのは本末転倒である。ちなみに実際のテコの長さには限界があり、その実用範囲はせいぜい数十mであろう。世界最大級とされるクレーンでもそのスパンやアームの長さはたかだか 50 m程度でしかないのである。

(2)  スケーリング

  スケーリングとは日本語に訳せば拡大縮小とでもいうべきであろうか。式 y=zx において2変数を決めれば残りの変数が計算出来る。ただし2変数を決める場合、数学的に矛盾がなければどんな数字でも良い。しかし工学における数式ではそんなことは決してあり得ないし、起こり得ない。数値は限定された範囲内にあり、つまり最大最小が必ず存在するし、それ以外は適用できないと知るべきであろう。
スウイフトの「ガリバー旅行記」には小人の国や巨人の国が出てきて、彼らは我々と同じような生活、振る舞いをしていたという。これは物理的には有り得ないことである。幾何学の図形なら円形でも三角でも大きさに関係なくその性質は変わらないとしている。しかし現実にはそういうことは有り得ないのである。
101頁(29)式をもう一度再掲する。
     PL/48EI・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (29)                 
前述したように梁のたわみの式である。たわみdは梁の長さ ? の3乗に比例するのである。
長さが 2 倍になれば、たわみは 8 倍になる。長さが 3 倍になれば たわみは 27 倍になる。これを荷重に比例させるためには分母にある I も 3 乗に比例しなければならない。これは梁の断面に関する変数であるから、要するに断面積を大きくすることになる。これは梁の場合であるがすべからく、形を有する物はその形状によりそれぞれ材料力学的影響を受ける。大型動物の象やカバがずんぐりした姿をしているのはこのためである。幾何や力学では材料が変形するという考えはないが、現実の物理現象は物質が中心となり、三次元空間のなかで千変万化し、それが様々な物理法則を生み出している。材料力学はまさに変形を扱う学問であり、単なる力学とは大きな違いがある。

4.7  数学あとがき

 四則演算から始まり指数、対数の応用例を紹介してきた。簡単な式でも多くの科学技術をある程度理解していないと、数式の応用はままならないことが理解できたかと思う。ましてもっと高度な数学で、それ自体の理解がやっとの状態ではその応用など、どだい無理な話である。一般の工学における数式に対して、その文字に適用される数字の幅は極めて狭い。純粋の数学のように限りなくゼロに近い数字または無限大に近い数字などは皆無である。だから計算図表で全体を表現することも可能になる。この本に掲載した図表の多くに対数を採用したが、対数にすることで理解しやすくなる事象も多いのである。最後に基礎的な数学公式を紹介した。中には一生使用することがないものもあるであろう。例えばヘロンの公式などは数学書の中にさえわざわざ「使われない数式」として紹介しているものもある。科学技術に数学は欠かせないが、また一方で数学と無縁の技術も多数ある。それは経験が最優先される技術であり、数学を使って作り上げられた機械類をただ使用するだけでよい場合もある。しかしそれでもこの章で紹介した数学程度は「ものつくり」に欠かすことのできない基礎として必要と思うのである。

   黄金比

これが美しいのだと言われ、さらに数学的にもそうだと説明されると頭に染みこんでしまう。
黄金比とは縦と横の長さの比が1:1.62 の長方形のことである。名刺のサイズや文庫本などがこの黄金比に相当する。昔から言われていることであるが、それならハガキやA4版の書籍などは黄金比に設定して良さそうであるが、それらは若干外れている。正方形が美しいのだと信じればそうなるだけとも思えるが、黄金比は次のようにして作図出来る。
黄金比辺長1の正方形ABCDを描き、それをEFで二等分する。対角線ECの長さをEを基点にしてHまで回転させる。このときのAHの長さが1.62となる。長方形ABGHが黄金比の長方形となる。
逆な表現をすると長方形ABGHから正方形ABCDを切り取り、残りの長方形DCGHがもとの長方形ABGHと相似であるとき、これらの長方形の縦横の比を黄金比という。 1± 5
さらに図において1:x=(x-1):1 の関係から x2-x-1=0 から
となり、これを計算するとx=1.618034 となる。
美しいかどうかは別として、昔からあるパルテノン神殿やミロのビーナス、富嶽三十六景などに黄金比が隠されているとか、またオウムガイその他の生物にもあるなどと数学者や教官等が検証抜きに言っている。写真を掲載し、それらしく引いた線分で説明されると信じたくもなるが、上の方法で簡単に検証できる。著名な人が述べていても嘘であることは直ぐに判明する。別に黄金比でなくても正方形でも円でも十分に美しいと思う。

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