第 四 章 目 次 4.1 実用数学とは 4.2文章問題 4.3 y=ax → y=ux 4.4 三角関数
4.5 指数関数 y=ux 4.6 対数関数 logay=x 4.7 数学あとがき 4.8 数学公式集PDF
コーヒータイム(4)詰め将棋と魔方陣 執筆後記
三平方の定理はBC1000年頃バビロニア人が発見し、BC500年頃にそれを証明したのがピタゴラス学派である。それほどに幾何学は古い。ピラミッド建設にも当然必要であったはずの数学、その中心はやはり三角関数である。三角関数は嫌いな数学の代表とされるがそうであっても、三角関数は使用される頻度は高いのであり、それほど難しいものではない。
基本は右図のように、直角三角形において角∠θと三辺のどれか一つが、決まれば他の 2 辺も決まる。三角関数にはたくさんの公式があるが、それらの多くはこの図から容易に導くことができる。たとえば図中の式から
b = a×sinθ、c = a×cosθ、
tanθ=b/c=sinθ/cosθ であり、ピタゴラスの定理から a2 = b2 + c2
故に 1=(b/a)2 +(c/a)2 = sin2 θ + cos2θ となる。
また前式 sin2θ + cos2θ = 1 の両辺を cos2θ で割ると tan2θ + 1 = 1/cos2θ が得られる。
また直角以外のどんな三角形でも、一つの角と 2 辺が決まれば、他の要素が決定する。これらから正弦定理や余弦定理などが導かれる(付録の公式集参照)。その他倍角の式や加法定理等種々あるが、それらの存在を知るだけで良いであろう。要は基本をしっかり身につければ次の応用問題も難しくはないと思われる。
さきほど述べたように、三角関数の角∠θと他の一辺が分かれば他の辺を求めることができる。これを利用して、地球の大きさを求めたのが、BC200年頃のエラトステネスである。エジプトのシェネ(現在のアスワン)では夏至の正午には、太陽光線が井戸の底を照らす、つまり太陽が真上に来る。一方アレキサンドリアでは同じ時刻に物体に影ができる。太陽光線は地球上は何処でも平行光線と考えて良い。故に同じ時刻に、真上に来る太陽と、影を作る太陽があるということは、地球が丸いからではないか。という発想から彼は地球の大きさを求めた。
(解)それで彼はシェネとアレキサンドリアの距離(おおよそ青森から大阪までに相当)を歩測ではかったということになっている。
右上の図において、角度θは棒の影から測定できる。これにより、その距離 A は 925 km、角度θは 7.2°であった。三角関数から地球の半径は X
は tanθ = A/X から
X = A/tan7.2 = 925/0.126 = 7341 km
故に円周 L は L = 7341×2×π = 46,125 km
三角関数を使用しなくても、円周を求めるなら単なる比例から次のように求められる。
925/7.2 = L/360 から L = 925×360/7.2 = 46,250 km となる。
青森から大阪くらいの距離を歩測で測ることが可能かどうか、不明であるが、ラクダの一日の走行距離から何日かかるからということらしい。それでも現在地球の全週は
40,000 km とされているから、かなりな正確さである。(こういう古い時代の記録は後に改ざんされることもある。ただこういう測定方法が可能であり、応用例としての参考である)
次は実際に応用している例である。右図のようなハニカムをその壁面の大きさを利用する場合、体積当たりの表面積が重要な要素になる。だからセルサイズc
が決まれば表面積 S
(m2/m3)が直ちに求められる事が必要になる。そのような関係式を作ってみよう。
(解)
初めてだと考え方にとまどうかも知れない。式の形として は S = a/c となる( a は定数)。
セルサイズcが小さいほど表面積は大きくなるから当然その関係は逆比例になるからである。体積当たりの表面積だから、ハニカムの体積でそれに含まれる表面積を割れば良い。だからといって上の図から体積を
H×L×Wとし、それに属する面積をすべて計算するような事では相当に面倒な計算になる。応用問題の場合、題意をどのように計算に反映させるか、その工夫の程度によって計算が複雑であったり、簡単になったりする。
この場合右図真ん中のグレーのセル一つに注目するとこのセルの六角形の面積 A と深さ(H)を掛けたものが体積であり、それに属する内面の表面積は六角形の各辺の合計
L に深さ(H)を掛けたものである。周辺のセルがこれを取り囲んでおり、この六角柱の体積に対して外面はすべて他のセルで覆われるので表面積には計算外となる。どのセルをとってもそれが連続している限
りこの関係は変わらない。なお深さは計算上消えてしまうからここでは面積と辺の長さの関係だけになる。正立方体を考えなくても、六角形の面積とそれに関係する辺の長さだけでS(m2/m3)を求めることができる。
下図において a を一辺とする正六角形の面積 A は、黄色の三角形が4個と a×c の合計であり、
A = 4×{b×(c/2)÷2}+ ac =c(b+ a )・・・・・・・(9)
となる。辺の長さの合計は 6 a であるから S は
S = 6 a /c(b+ a)・・・・・・・・・・・・・・・・(10)
となる。そしてこの式の中の a や b を cで表すと、c と S との関係がはっきりする。三角関数の関係から b= a・sin30 であり、これを(10)式に代入すると
S = 6a/c(b + a)= 6a/c(a・sin30 + a)= 4/c
つまり S = 4/c・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(11)
という簡単な式になる。この(11)式では S の単位が(m−1)となっているが、これは(m2/m3)のうち、(m2)が割り算で消えている。単位体積当たりの表面積が(m−1)ではピンとこないであろう。しかし結果として 4 という係数が残ったので、分かりやすくするためこれに係数が 1 となる(m2 /m2 )をあえて追加する。そうすれば S = 4/c(m2/m3)となる。さらにセルサイズcを(m)で表すには不便なので
c= C/1000 と置き換えると C を(mm)の単位で使用できる。これを(11)式に代入すると
S = 4000/C ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (12)
この(12)式が最終的な、関係式である。セルサイズが 10 mm なら、(12)式の C に 10 を代入すれば、このハニカムの単位体積当たりの表面積は S
= 400(m2/m3)として求められる。
この例も実用的な応用例である。図 a のような形状を、展開すると図 b の展開図のようになる。このような展開図から図 a を作る場合の関係式を求める。d1、 a、 角β を決めて、希望する寸法の形状を作るとして、展開図の平面上の寸法をどう設定するかという問題である。
(解)
まず明確に分かっていることは図 a の d1 の円周は図 b におけるD1 の円周からαの角度による円弧の長さを引いたものと等しいことである。これを式に表すと
d1π = D1π−D1π・α/360 = D1π(1−α/360)
ここでπが消去されて
d1=D1(1−α/360)・・・・・・・・・・・・(13)
さらには図 a から d2 =d1 + 2x、cosβ = x/a である。
x = a・cosβ 故に d2 は次式となる。
d2 = d1 + 2a・cosβ・・・・・・・・・・(14)
また D2 = D1 + 2a ・・・・・・・・・・・・・(15)
簡単に導き出せるのはここまでであるが、しかしこれだけでは肝心の角度αとβの関係が不明である。
よって図 c の円錐形から、その関係を求める。
(イ)の円錐下面の円周 L1 を a を使って表すと (d1 /2)/a = cosβから
L1 = d1π = (2a・cosβ)π である。
一方展開図(ロ)から、外周の長さL2は円弧を引いたものであるから、
L2 = 2aπ−2aπ(α/360)=
2aπ(1−α/360) である。
L1 = L2 から
2aπ・cosβ = 2aπ(1−α/360)
故に
cosβ = 1−α/360 ・・・・・・(16)
となり、これで必要な式はすべて揃ったことになり、再掲すると次のようになる。
d1 = D1(1−α/360)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(13)
D2 = D1 + 2a ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(15)
cosβ = 1−α/360 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(16)
d2 = d1 + 2a・cosβ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(14)
たとえば、図 a において β=60°、d1= 20 mm、 a = 10 mm としたとき、展開図 b の各寸法を求める。
(1) 角度αは(16)式より cos60 = 1−α/360 から α=180°
(2) D1 は(13)式より 20 =(1−180/360)D1 より D1 = 40 mm 、
(3) D2 は(15)式から D2 = 40 + 2×10 = 60 mm となる。
(4) ちなみにd2 は(14)式より d2 = 20 + 2×10×cos60 = 30 mm となる。
(蛇足) 展開図(図b)のαの範囲は、0<α<360°であり、これ以外はあり得ない。この範囲において、図aでは角度βの範囲は 0<β<90°である。そして図
b において、αとD1 をどんどん大きくすると(ただしa は一定)、展開図はだんだん方形に近づいていき、立体にするとその形状は円筒に近くなる。