第三章目次
3.1 国際単位系 3.2 法定計量単位 3.3 法定基本量 3.4 時空、力学関係単位
3.5 材料力学関連の単位 3.6 熱関連の単位 3.7電磁気関連の単位 3.8光関連の単位
3.9放射能関連の単位 3.10その他の単位 3.11 特殊な単位 3.12 非SI単位 3.13 各種単位換算表 3.14 SI単位関係史 コーヒータイム(3)青春 執筆後記(第三章)
1592 年 にガリレオが原始的な目盛りのない温度計を発明した。それから温度計は種々工夫されたが、ようやく 1720 年頃、ファーレンハイトは水銀の温度計を作り、当時寒剤で得られた最低温度を零度、氷の融解点を32
度、体温を 96 度とした目盛り(華氏)をつけた。この目盛りが華氏目盛(°F)であり、現在欧米で使用されている。1742 年にはセルシウスが,沸騰水を
0 度とし,氷点を 100 度とする水銀温度計を作った。後にこの目盛りは逆転させられるが、これが摂氏(℃)である。この華氏にしても摂氏にしても、自然現象の異なる二つの温度間を等分割している。しかし自然現象は温度が上昇しても体積が完全に比例して増加するわけではない。とすれば等間隔に目盛ることは正確さを欠くことになる。それでは、温度に比例して直線的に膨張する物体は何かというと、理想気体なのである。ボイル・シャルルの法則〔前出3.3.5(4)式〕は実在気体について発見されたものであるが、実在気体では
Ar や He など少数の気体以外はこの式には完全には当てはまらない。ゆえにこの法則に従う気体を理想気体という。そしてまた気体分子運動論などによって、理論的に全く同じ式が導かれている。故にこの式に基づき設定された温度が理想気体温度(ケルビン
K )である。そして水の三重点を 0.01 ℃ (273.16K) とし、これまでに知られていた絶対温度 −273.15℃ (0K) の間を
273.16 等分したものを 1 K と定めたのである。 水の三重点を 273.16 K と定めることにより、目盛り幅 1 K は 1 ℃ と同じになる(図A参照)。
実際、理想気体に近い実在の気体(ヘリウムや水素等)を用いても、このような熱力学的温度を測定することは大がかりな設備を必要とする大変な作業である。またこれだけであらゆる温度範囲を測定することは不可能なので、比較的簡単で再現性のある方法として、国際温度目盛が国際的に協定されている。その定義定点を図Bのように定め、どのような温度計(補間計器)を使用するかを指定している。
なお セルシウス℃ は SI単位では固有の名称を持つ単位である。その値は 1 ℃ = K−273.5 と定義されており、水の氷点と沸点とは無関係になっている。

これは 3.4.7 の仕事と同じ単位であり、名称が異なるだけである。しかし長い間使用してきた cal をジュール(J)にしろ といわれてもとまどう人が多いであろう。ジュールは仕事またはエネルギー関係の物理的用語であり、その意味をしっかり理解しておく必要がある。ジュールとは前述のように「1
N の力で 質量 1 kg を 1 m 動かす時の仕事量」であるから、単位は (N・m)である。実際に数字を当てはめた具体例でいうと 100
gの物体を高さ 1 m から落下させたときの エネルギーである。 100 g の物体を手の平で支えていれば、1 N 程度の力を常に受けていることになる。そして
100 g を 10 m から落下させれば 10 J であり、100 kg の物体であれば わずか 1 mm の落下で 1 J になる。 逆に
1 kcal は 427 kg を 1 m 持ち上げるほどの大きなエネルギーである。ジュール とキロカロリーの関係は前述したように
1ジュール = 1/4.1855 = 0.0002389 kcal であり、
1 kcal = 4185.55 J である。
さて cal の定義は「純水 1 g を標準大気圧のもとで 1 ℃ 上昇させる熱量」と説明したが、これでは説明不足なのである。水は温度範囲によって比熱が変わり、どの温度で測定するかを指定しなければ正確ではない。しかしそれを行うと次のように、カロリーの定義に種類が多くなる。
1. 15度カロリー:水を14.5℃から15.5℃に上げる熱量 4.1855 J
2. 計量法カロリー:3600/860:旧計量法の定義 4.18605 J
3. 熱化学カロリー:17℃の実測値 (新計量法) 4.1840 J
4. 国際蒸気表カロリー:水を 0℃〜100 ℃ までの平均 4.1868 J
ここで示した数値が 実は仕事当量なるものである。がそれがこんなに異なっては問題である。ならばもっと精密に測定すべきと思われるが、熱量をジュールで表現すれば良いことであり、仕事当量の意味はなくなったのである。ただ仕事当量の測定は水の比熱測定という新しい目的のために行われるようになった。
前節でcalの定義は「純水 1 g を標準大気圧のもとで 1 ℃ 上昇させる熱量」と述べたが、これは則ち比熱の定義でもあり、その値は 1 calである。比重が無次元量であるという考え方からすれば、比熱も無次元量でなければならないが、なぜか kcal/kg・℃ という単位がつく。つまり「質量 1 kg を 1 ℃ 上昇させるに必要な熱量」であり、SI 単位にすれば J/kg・K である。故に記号は c で表し、単に比熱でなく比熱容量という。温度 ℃は 温度差であるからこれを K としても同じである。水 1 kg の比熱容量は 4.1855 kJ/kg・K であり(水14.5 ℃ から15.5 ℃ に上昇)、これはとりもなおさず仕事当量の値である。固体や液体はそのままでは体積の変化はないから、比熱の数値は 1 種類である。しかし気体の場合は温度によって体積が変化する。従って、体積が一定の場合は Cv で表し定容比熱といい、圧力一定の場合を Cp で表し定圧比熱という。気体の場合のこの差は大きく理想気体では Cp− Cv = R(気体定数)となる。(2.1.5参照)
熱伝導率の定義は次頁の図のように材質が一定で一様なものと仮定した場合、「面積 1 m2 の材料が 1 m 隔てた距離において 1 ℃ の温度差があるとき 1 秒間に流れる熱量」であり、この原理はフーリエの法則といわれる。これを式で表すと移動する熱量
Q の単位を(W・s)とすれば
Q = λt T A/L ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(30)
λ:(W/m・K)、t:(s)、T:(K)、 A :(m2 )、 L :(m)
故に熱伝導率 λ は
λ= QL/tTA ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(31)
となり単位は(W/m・K) である。(31)式をみれば、λ は長さ L を面積 A で割っているが、約分されて長さの単位だけが分母に残ることになる。結果を見ただけでは式の由来は分からない。
例 題
厚さ 50 mm で、熱伝導率 λ = 0.1 W/m・K のコンクリートの壁がある。この壁の両サイドに 50 ℃ の温度差があるときこの壁を通過する熱量を求めよ。
【解】 λ = 0.1 、 この問では時間も面積も指定されていないが
時間は 1 秒、面積は 1m2 としてよい。
T = 50 K(50 ℃ の温度差は 50 K と同じ)、 L= 50 mm =0.05 m 、これらを(30)式に入れて
Q = 0.1×1×1×50/0.05 = 100 W・s
これが 1 秒間、1 m2 に流れる熱量である。もし面積が大きくなればこの値にその数字を掛ければよ い。時間に関しても同じである。
これは熱伝導率と混同し易い。単位の中で m が m2 に変わっただけであるが、これは材料の厚さに関係なく、面積に比例することなのである。熱移動の形式には主に固体に対しては熱伝導、液体気体に対しては対流、空間では放射(輻射)の三形態がある。ここでの熱伝達率は固体と流体との境界面に生ずる薄い膜(境膜という、右図で厚さtの部分)に起因するものである。逆に流体が高温の場合もあるが、固体と流体との間に温度差があるとき、固体に接触している流体はごく薄い膜を形成しこの部分は殆ど動かない。だから静止状態の流体の熱伝導率に近い値を示す。
しかしそれはきわめて薄いために熱伝達率(熱伝達係数ともいう) h は次のように厚さに無関係の次元になる。
Q = htA ・・・・・・・・・・・・・・・・・(32)
(32)式より h = Q/tA ( W/m2・K) 。 そしてこの値は流体の状態、則ち強制対流か、自然対流かによって大きく異なる。固体の両サイドが流体の場合もあり、窓ガラスや、熱交換機の管の内、外などがそれである。そしてこの場合例えば、ガラス窓を一つの熱通過の抵抗体とみなしての総体的な値(これを熱通過率
k という) は次式で与えられる。 k = 1/(1/h1 + d/λ + 1/h2)
ここで h1 、 h2 はそれぞれ内、外の熱伝達率であり、d は板(ガラス)の厚さである。
故にk の単位は W/m2・K であり、この場合(32)式は具体的には次のように置き換えられる
Q = kt A ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(33)
例 題 4 mm のガラス窓を有する部屋の外気温度が 0 ℃ で室内が 25 ℃ とする。この場合、単位面積当たりガラス窓から逃げる熱量はいくらか。またガラスの内側、外側の表面温度はいくらか。
但し窓ガラスの熱伝導率は 0.76 W/m・K , ガラス外側の熱伝達率は 60 W/m2 ・K であり、内側の熱 伝達率を 10 W/m2 ・K とする。
【解】 まずこの場合の熱通過率は
k = 1/ (1/10 + 0.004/0.76 +1/ 60 )= 1/(0.100+0.005+0.016)=1/0.12 = 8.26
W/m2・K
温度差は θ は 25−0 = 25 ℃ = 25 K 、故に単位面積からの放熱量は (33) 式から
Q = 8.26×25 ×1 =206.5 (W)
この熱量はまた外側だけの境膜、ガラス、内側の境膜をそれぞれ通過してきている。
故に内側のガラス表面の温度を θ1 については Q = 10 ×(25−θ1)×1 = 206.5 が成立する。
これから θ1 =25−206.5/60 = 21.56 ℃
同様にして 外側のガラス表面温度 θ2 は Q = 60× (θ2 −0)×1 = 206.5 が成立する。
これより θ2 = 206.5/60 = 3.44 ℃
熱力学の第一法則は色々な表現法があり、これまでの J や N・m の説明を再現すれば「熱と仕事とは共にエネルギーの一種であり、熱を仕事に変えることもまたその逆もできる」となり、これも熱力学第一法則の一つの表現法である。熱はどのような形に変換されても消滅はしない。つまりこれはエネルギー保存の法則の表現でもある。つまり熱力学の第一法則はエネルギー保存則なのである。エンタルピーの単位もまた熱量の単位であるが、エネルギーの名称が異なる例である。ある物質に熱量Qを加えると内部エネルギー U を増加させ、その物体を膨張させ機械的仕事 W を行わせる。これが同時に起こるのであり、これをエンタルピーといい、式で表すとエンタルピー H は H = U + W となる。ここでWはその物質の圧力 p と体積Vの積で表せる。故にこの式は次のようになる。
H = U + pV ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(34)
ここで U の単位は当然 J であり、pV も(N/m2)(m3)=N・m となり J の単位である。物質 1 kg についてのエンタルピーを比エンタルピーともいう。
熱力学の第二法則もまた様々に表現される。曰く「熱は高温から低温に一方通行で流れる。」「熱は独りでに低温から高温に移ることはできない」「効率
100 % の熱機関はない」等であり、経験上当たり前のこと、かなり常識的な表現である。このいずれも不可逆変化であり、「覆水盆に返らず」を熱力学第二法則で定量的に述べたのがエントロピーである。エントロピー S は閉鎖系において「絶対温度Tの物体に外から微少の熱 Q を加えるとエントロピーが増加する」と表現され、次式で表される。
S = Q/T ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(35)
エントロピーは途中の道すじには関係せず始めと終わりの状態にのみに依存する状態量である。
参考11. 伝 熱
物体にはすべて温度があり、それの高い方から低い方に流れる。熱力学の第一法則(エネルギー保存則)と第二法則(熱流の一方通行)が一緒になって熱伝導は起こる。そしてこの熱が伝わる形式には
1. 熱伝導(主に固体間) 2. 対流 or 熱伝達(流体) 3. 輻射or放射(電磁波)の 3 形式がある。
どんなに複雑な伝熱でも基本的にはこの3方式に分解出来る。物質には固体があり、気体や液体があり、電磁波が存在するので、伝熱が一つの形式だけと言うことはほとんど無くこれらが複合された状態で伝熱が行われる。燃焼機器一つ見ても、これら三つの伝熱形態が含まれる。
また固体については、異種材料の組み合わせや、円形、フインなどの形状により計算が複雑になる。流体については蒸発潜熱や凝縮熱などが関係し、さらに熱だけの伝達だけでなく流体自体の移動が伴う。また輻射の場合は、固体表面の黒度や反射などが関係してくる。難しいのは、これら三つが複雑に絡み合っており、それをどう処理するかが問題なのである。伝熱については普通高校で学ぶことはないと思う。しかし伝熱は機械工学、電気工学、化学工学、環境工学、エネルギー関連などあらゆる分野に関係する工学である。紙の容器で炊飯する事や、裸足で火の上を歩く「火わたり」など一見
不思議に思える事柄も、熱伝導を理解すれば不思議ではなくなる。熱伝導に限らず、多くの物理現象の基本の理論や式はそれほど難しくはない。難しくしているのはそれらが入り組んでいることによる。
もうすこし詳しくは5.10参照
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