ものづくり技術手帳

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第七章 ものづくり周辺

第七章 ものづくり周辺 目次  7.1 特許  7.2 財務諸表  7.3直接原価計算  7.4 製図の基礎  
7.5 接着の基礎  7.6 物理定数   コーヒータイム(8) 杉原千畝   執筆後記(第七章)

ものづくり周辺




第七章 ものづくり周辺

 知識と知恵 あまり響きの良くない「専門バカ」という言葉がある。これは自分の専門には通じているが、それ以外のことについては全く疎(うと)いということである。これが特別な存在だとしても、では我々は「専門バカ」ではないと言い切れるであろうか。他の知識だって人並みにあると自負していても、それはただ暗記しているだけで知恵にまでなっていないこともある。広辞苑には知識は「知っていること」、知恵は「知っていることを分類整理して物事に対処する心の働き」とある。たとえば将棋を例にとると、将棋の規則や様々な戦法が将棋の知識であるとすれば、実戦は知恵比べである。様々な戦法の解説本をすべてを暗記したところで名人になれるというものではない。多少強くはなっても考える力がなければ意味がない。知識は誰でも得られる。しかし実戦の知恵は知識を土台にした自らの思考以外にない。要するに「知識とは覚えること」、「知恵は考えること」である。
知識のレベル しかし我々は知恵の元になる中学程度の基礎知識さえ十分とはいえないのではないか。現在様々なクイズ番組が放送されており、それには一般人から、芸能関係、政治家、大学教授など多くの人が参加する。その中には純粋に中学程度の学問的なことに関して答えられない人もいる。出演者に知識レベルの低い人を特別に選んだ訳ではないであろう。一部をもって全体を測るわけではないが、これは任意抽出された人々だから、およそ国民全体のレベルも似たようなものである。さらに専門家が自らの専門的なことも曖昧ということもある。「大学教授がどうしてこんなこと知らないの」「政治家ならこういうこと知っておくべきでは」という具合である。
技術が細分化され、急激な進歩により学ぶべき知識は激増した現代である。だからこそどうでもいい問題でなく、中高生程度の学問的な問題に答えられないというのでは、職業人として問題であり、信用もされないであろう。まして自分の仕事に関連することに疎(うと)いのでは仕事自体がうまくいく筈がない。その分野には自信があると思っていても、それはあまりに狭い範囲でしかないと知るべきである。「知識がなければ知識を有する人を雇えばよい、何もすべてを知る必要はない」といった有名な経営者がいた。しかしそれを実行するのにさえ、そのための最低の知識が必要である。当たり前のことが当たり前のこととして実行されていない故に有名企業や大きな組織体でも様々な事件を引き起こした。不祥事が起きてから従業員を教育するとして、マニュアルを作る。それは「今更こんなことを」と思えるような、まさに小学校の教室の壁にでも貼ってあるような幼稚な内容にならざるを得なくなる。
オンチ ある主婦は「うちの旦那は機械音痴、方向音痴、ビデオの予約も出来ず、常識的なことにも全く無知です。だが一流大学をでて有名企業に就職し今は難しい仕事をこなしているようです。」といった。だが筆者はこういうことを信じない。難しい仕事かどうかその主婦が知らないだけではないか。こういう社員はいずれは「化けの皮がはがれ」リストラの候補に上がるかも知れない。そうならないためには常に自己研鑽を怠らないことである。
この章の「ものづくり周辺」は「ものづくり」の純粋な技術的基礎知識からはやや離れているが、必要と思われることを述べてみた。まさに「ものづくり周辺」のほんの一部である。
「深い穴を掘るには広い穴を掘る必要がある」のであるが、膨大な知識をすべて学ぶなど不可能である。だが「全く知らない」ということと「およその概略は程度は知っている」との差は極めて大きいと思うのである。

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