ものづくり技術手帳

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第八章 ものづくり開発事例

8.1 蜂の巣を工場で作る   8.2 畑違いの用途  8.3 アルミハニカム  8.4 再び塩ビハニカム
8.5 汚水処理装置  8.6 ロールコア    8.7 再びアルミハニカム   8.8 フィルター   
8.9 サンドイッチ構造  8.10 我が立つところ深く掘らば・・・  
 コーヒータイム(9)上杉鷹山  執筆後記(第八章)

8.7 再びアルミハニカム

8.7.1 材料の幅

中芯材の幅はこれまで365とか500 あるいは600 であり、1m×2 m のパネルを作るときはそれらを並べることになる。ドアや建具には枠材や仕切があり、大きさに不自由することは少なかった。しかし枠材がないパネルを作る場合は中芯材の大きさが重要になる。並べなくてもいい1枚のサイズが要求される。しかしハニカムを作る場合、製品の幅を広くするには素材の幅も広くなければならない。素材の進行方向と平行に接着剤ラインをつける従来の方法ではこれは避けられない。もし必要とする幅の広い材料が入手できない場合はどうするか。製品幅を1200 mm にしたいとき、アルミ箔の幅は 1560 mm になる。これはハニカム用としてはまず入手不可能と考えたほうがよい。

(1) 特許はあっても

ハニカムの成型法 狭い材料で幅の広いハニカムを作るには、接着剤ラインを素材の進行方向と直角に塗布することである。この方法にはすでに外国の石油会社が特許を取得していた。その全体の構成は図8.60のようである。これを 図8-14-1 と比べてみると原料は 1 個と工程は簡素になっている。この方法では片面接着で良く、幅のせまい材料でも、長さLによってハニカムの幅を任意に設定できる。しかしこの特許は基本特許であり、理論的方法を示しているだけである。故にこの方法でハニカムを作るとなると難しい技術的問題に直面する。具体的方法が示されなければ、この方法でハニカムは作れない、単なるアイデア特許である。紙が原料なら広幅のものは容易に得られるから、面倒なこの方法を採用するメリットはない。前述したように紙の場合、接着剤を乾燥することは愚の骨頂である。

(2) ノーメックス

ノーメックスハニカム ノーメックスはデュポン社のメタ系アラミド繊維(ナイロン)の登録商標である。この不織布(ペーパー)も幅の広いのは入手不可である。だからこの場合は前記の特許による方法しかない。それまでノーメックスハニカムは輸入品しかなかった。それであるユーザーから当社での製造を打診してきた。製品サイズは 1.2 m ×2.4 m である。しかし試作は行ったが製品化は諦めた。すでにこの特許(図8.60)は切れていたが、機械化が極めて困難な材料である。ハニカムの幅は1.2mであるからシートの切断長さは1.6 mになる。この素材は湿度による伸びが大きく、乾燥すると静電気が発生する。静電除去器を使用してもそこを通過するとすぐに静電気が発生する。引張強度は大きいが腰が弱く、とても図8.60のような工程には乗らない。だからこの材料でのハニカムメーカーは積層を手作業で行っている。仮に1枚1枚正確に積層する機械的手段を講じたとしてもシートを固定させないとずれてしまう。とてもトランプのカードを揃えるようなわけにはいかない。ハニカムのブロックができたら展張してフェノール樹脂の含浸硬化工程を経るが、紙のように一回で済むのではない。紙と違って含浸というより塗装に近いから所定の量にするには数回必要となる。次に厚さ切断をするのであるが、大きさが1.2 m×2.4 m を切断する装置がまた高価である。これは他に転用がきかない。総体の投資額は非常に大きく、安定した需要が確実でないと手出し無用となる。これが試作による結論であるが、その過程でハニカムの成形についてだけは画期的な方法を考えたのである。

(3) 理解不能の特許

積層側面拡大図 どうにも扱いづらい素材であるならいっそのこと巻き取ってしまえばいい。ただしこの場合、接着剤は幅方向に塗布することにする。これをそのまま巻き取ると一回転ごとに巻太りにより接着剤線がずれていく。できあがったハニカムは図8.62のように全体が平行四辺形のハニカムになるであろう。これではどうにもならないから、このずれを何とか解消する手段を講じなければならない。図8.63のように巻取っても絶対に接着剤線がずれない方式である。図8.64において塗布ロールと巻取りドラムまでのシートの長さ、ハニカムの成型法そして図中の制御ロールが重要な要素となる製法である。これは画期的な方法だと、特許申請の書類を書き上げ、弁理士に渡したのであるが、手続きをしてくれないのであった。「内容がいまいち理解できない、もっと分かるように説明して欲しい」というのである。つまり接着剤線がずれないはずはない。必ずずれる、どんなことしてもずれるはずだと主張する。一週間も考えた方法だから理解できないのは無理もない。これはノーメックスだけにしか使えないし、仮に特許が確定しても宝の持ち腐れだから、出願はやめにした。たとえあのとき特許を確定させても、現時点ではすでに有効期限が切れている。しかし、出願後の放棄ではないから今出願しても、確定する可能性はあるかも知れない。この方式を実現するには、多くの試行錯誤の実験が必要であろう。しかし図8.60の特許の方式より、はるかに有効なはずである。つまり図8.60の方式でノーメックスを材料とするなら積層は手作業によらざるを得ない。しかし図8.63は明らかに不可能な方式だから通常はこれに関する思考を停止する。それを解決するという発想すら起こらないであろう。幅方向塗布で何の工夫もなく巻き取れば前述のように図8.62 のようなハニカムになる。セルがはるかに大きい場合は平行四辺形もあまり苦にならない。故にこの方法にはすでに出願がなされており、公知の技術になっている。

8.7.2 幅の広いアルミハニカム

ノーメックスハニカムは諦めたが同じ成型機で再度アルミハニカムに挑戦した。アルミ箔の幅は650mm 、これを長さ 1560 mm の長さに切断して 積層すると図8.65(B)のようなサイズになる。セルサイズが6.3 mm の場合は積層枚数を750枚にすると長さは2.4 m になる。従来のハニカムの約3倍の大きさでありブロックの重さは約 100 kg になる。

(1) 切断の長さ

アルミハニカムブロック 図8.60の方式に置いて切断長さを決定するには図8.66のように線ピッチの1.5倍の奇数倍に設定しなければならない。そのように設定しても、長さを測定して切断したのでは、決して正確にはいかない。何故ならば長さを測定したのでは、どうしてもわずかな誤差が集積されるからである。したがってこの場合は接着剤線と同調してマークを印刷し、そのマークの数を読み取らなければならない。長さ(アナログ)ではなく接着剤線の数(デジタル)が重要なのである。マークを印字しそれを読み取るという単純なことであるが、これだけのことでもたくさんの工夫が必要なのである。

(2) 自動積層

この方式において最も重要な部分であり、手作業か機械化か分かれる所である。しかしながらノーメックスでは不可能でもアルミ箔だから機械化が可能である。流れてくるアルミ箔をコンベヤーの上に乗せマークを読み取り、所定の位置に正確に停止させその位置で切断する。その箔を切断したアルミ箔と同じ大きさの平らな吸盤※1で持ち上げ移動させ、そこで積層する。接着剤線には乾燥しても多少の粘着性が残っているからそれが可能になる。何百枚も積層しそれがずれないためにも、またその後のハンドリングのためにも粘着性は必要な性質である。吸盤の吸着面はアルミ板に無数の孔をあけたものであり、吸引ポンプで引く構造である。だがこれが、また逆にやっかいな問題を生じる。接着剤は必然的に上面にあり、吸盤が吸い付ける面になる。当然吸盤にも粘着し、これは積層するときの解放時に時間的遅れを生じさせる。すぐには吸盤から離れてくれないのである。吸盤から空気を吹き出しても空気の伝達は遅く時間的に間に合わない。これも簡単なことで解決できるものである。吸着面にサンドペーパーを貼り付けただけでる。それだけで粘着性は解消し箔の吸引に何も問題はなく、解放の遅れもなくなった。
※1 このような吸盤も当然市販はされていない。軽くて多穴の平板を手作りしたものである。

(3) プレス

アルミハニカム 積層品を加熱圧締して接着剤を硬化させてブロックは完成する。このとき接着剤線が本来の幅より広がるという現象が起きる。アルミの場合これが最もやっかいな問題である。プレス時に広がらなくすれば、今度は積層時の粘着もなくなるのである。また積層枚数が多いから、わずかの箔の厚さムラが、増幅されて、熱盤が平行であっても高圧をかけると圧力ムラが生じ部分的に接着剤が広がったりそうでなかったりする。しかしこれらも特殊なクッション材を挟むことで解決することができた。厚さ切断は従来技術のみで可能であるから、その装置はすべて外注である。接着剤の塗布を縦から横にする、ただそれだけのことであるが、そこには特許だけでは知ることのできない多くの技術が必要となる。

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