ものづくり技術手帳

HOME目次籍情報籍購入案内

番外編:福島原発事故U(構造編)

  1. 福島原発事故-T(燃料偏)  2. 福島原発事故-U(構造編) 3. 福島原発事故-V(福島事故と煽り検証) 
 4. 福島原発事故-W(過去の原発事故)    5. 福島原発事故-X(放射線量と被曝)

1. はじめに

福島原発事故を受けて過度に心配する向きがある。原子力の専門家でさえ無知をさらけ出し核爆発すれば大惨事になるとか考えられないようなことをいう。ネットにはメルトダウンしてチャイナシンドロームになるとか、猛毒のプルトニウムが大量に飛散するなどと、極度の心配性的書き込みがある。このような「狼が来る!」的な煽りの発言を信じる信じないのまえに、まずは原子力発電の概要を知ることも肝要かと思われる。

2. 原子炉の全体構造

  原子力発電には減速材に水を使用する軽水炉(LWR)といわれるものである。それには沸騰水型(BWR)と加圧水型(PWR)の二種があり、福島原発は沸騰水型である。沸騰水型は東北電力、中部電力、北陸電力、四国電力等であり、加圧水型は北海道電力、関西電力、四国電力、九州電力などである。それに使用される格納容器にもマークT型とマークU型の2 種類あり、福島の 1〜5 号機はマークT型、6 号機のみマークU型である。
 沸騰水型の特徴:原子炉圧力容器内で発生した蒸気をそのまま蒸気タービンへ導入して発電するシステムである。圧力容器の内圧は約 70 気圧、蒸気温度は同圧力に対する飽和温度(約 280 ℃)の蒸気となる。この蒸気は原子炉内の水が直接沸騰したもので、わずかながら放射能を帯びており、この蒸気を漏れないように対策が施されている。制御棒は下から上下させる。
 加圧水型:発生した熱を高い圧力をかけて水の沸騰を抑え、高い温度の水(高温高圧水)の状態で運転する原子炉である。その高温高圧水を熱交換器(蒸気発生器)に送り、そこで蒸気を発生させて蒸気タービンに送り発電を行う。高温高圧水は圧力 160 気圧、温度 325℃ 程度、これと熱交換して発生する蒸気は、約 55 気圧の飽和蒸気(温度約 270 ℃)を使用する。原子炉圧力容器と蒸気発生器が別々であり、蒸気タービンへ送られる蒸気は、熱交換機で発生した蒸気が使われる点が前述のBWRと大きく異なる。なお、圧力容器からの高温高圧水 を1 次冷却材とよび、その閉じたループを 1 次系という。一方、蒸気の方は 2 次冷却材といい、その循環系統を 2 次系という。 制御棒は沸騰水型とは逆に上から上下させる。いずれの場合も、ウランの必要量を連続して分裂させるために制御棒を上下させて調節する。さらに非常時のための「緊急炉心冷却装置」(ECCS)を備えている。原子炉圧力容器の大きさは、110 万 kW(キロワット)級の沸騰水型(BWR)の場合で、高さおよそ 22 m、直径が 6 mである。下の画像をクリックすると拡大図面を見ることがでる。

 沸騰水型 加圧水型  マークT、U  マーク型図   圧力容器  BWR燃料棒 PWR燃料棒  緊急炉心冷却装置



3.原子力発電の制御法

前述したように通常の軽水炉の燃料に含まれる ウラン235 の量は 3〜4 % 程度であり、残りは燃えないウラン238 である。中性子で分裂するのはウラン 235 のみであり、その際に発生する中性子の数が 1 より多いと超臨界となり、分裂反応が進みすぎる。この中性子を制御棒に吸収させることで常にその数を限りなく 1 に保つのである。制御棒にはカドミウム合金、炭化ホウ素、インジウム、ハフニウムなどが使用される。制御棒を上下して行うが、地震等の緊急時には自動的に挿入され停止するようになっている。減速材としての水も多少自己制御機能を有している。

4. 非常用炉心冷却装置(ECCS)

  通常運転時に蒸気で熱を取り出す給水ポンプ等の循環系が破損して機能しなくなったとき、当然制御棒が自動挿入され核反応は停止する。しかし燃料棒の放射性物質が放射線をだしながら発熱するのでこの熱を除去しなければならない。これを防ぐために非常用炉心冷却装置(ECCS)が設置されている。しかし福島第一原発は地震や津波で電源がすべて喪失、冷却装置が作動せず、燃料棒の露出が続き、炉心溶融(メルトダウン)が生じた。

5. 福島原子炉詳細仕様

  福島原発の詳細仕様を下の表に示す。出力とはタービンによる発電能力であり、熱出力とは原子力(分裂熱)の出力であり、この差が大きいほど効率は悪くなる。たとえば 1 号炉では 138 万 kw の発熱に対して 46 万 kw しか電力が得られない。46/138=0.33 であり、つまり効率は 33 % ということである。余分の熱は海水を温め温排水として海に捨てているのである。ちなみに火力発電の効率は 40 % 程度であるが、最新のコンバインドサイクル(ACC)方式では 60 % になるという。尚 3 号炉には MOX 燃料が 32 本使用されている。

6. 高速増殖炉

  プルトニウム239 を16〜21% 、残りをウラン238 と微量のウラン235(核反応起動用としての役割を果たす)の混合燃料(MOX燃料)を使用する。高速の中性子を使用するので高速という。さらに使用した燃料以上に新しく燃料が再生されるので増殖炉という。役に立たないウラン238 を利用可能なプルトニウム239 に変換する。ここまでの説明ならさに「夢の原子炉」である。しかしその倍増率が大問題であり、それに要する時間は増殖炉の稼働率が 85 % として 50 年 と計算されている。50 年 の長い時間をかけて倍増しても何の意味もない。看板に偽りありで、これでは本当の「夢」の原子炉であり、「絵に描いた餅」である。さらに「軽水炉の 40 倍の速度で核反応を起こさせ、高密度(軽水炉の 7〜20 倍)の発熱を取り出すために、熱伝導率の高い金属ナトリウムを使用しなければならないから、小さなトラブルでも大事故につながる。軽水炉での炉心温度は 300 ℃ であるが、高速増殖炉では 500 ℃ である。金属ナトリウムは水や空気と激しく反応し取り扱いが極めて難しく、漏出事故が頻発する。技術的難しさの故に先進各国では開発を中止し、継続しているのは中国、ロシヤ、インドなど少数の国しかない。我が国も「もんじゅ」がトラブル続きで計画が何回も延期されている。六ヶ所村の再処理施設が本格稼働しておらず、燃料調達にも問題がある。

高速増殖炉の仕組み

次へ 福島事故と煽り検証

HOME