1. 福島原発事故-T(燃料偏) 2. 福島原発事故-U(構造編) 3. 福島原発事故-V(福島事故と煽り検証) 4. 福島原発事故-W(過去の原発事故) 5. 福島原発事故-X(放射線量と被曝)
1. はじめに 2. 放射線量と人体への影響 3. シーベルトという単位 4. ICRP、ECRRについて
5. しきい値なし直線仮説(LNT仮説)とその他の説 6. 被曝限度 1 mSv/y という法律は存在しない
7. 内部被曝、外部被曝 8. 食品中の自然放射性物質 9. 生物学的半減期 10. 内部被曝と活 性酸素 11. ああ言えばこう言う 12. ガンの放射線治療と修復機能 13. プラシーボ効果 14. ガンは病気ではない 15. 犯罪者は誰か
人体に強い放射線を浴びると障害を起こすことは過去の経験から明白である。しかしある線量以下の放射線に被曝した場合は大きく分けて三つの意見がある。
1.「しきい値なしの直線仮説」であり、別名LNT仮説とも言われる。
2. 放射線被曝線量にはある値「しきい値」があり、それ以下は人体に影響はない。
3. 逆に「しきい値」以下ではかえって健康に良いとする「ホルミシス仮説」。
いずれも仮説と言われるのであるが、それぞれを信奉する人は仮説とは思っていないようである。それぞれが互いを批判し自分の主張が正しいとして、未だに論争が絶えない。長崎・広島の原爆以来のことであり、医学の発達した時代になぜ結論が出ないのか、不思議な世界ではある。
放射線が人体に与える影響をシーベルト(Sv)の単位を使用して一つの図にしたものがある。しかしシーベ
ルト(Sv)は人体が受ける量であり、たとえば酒 1 リットルを飲んだと言う場合、1 時間で飲んだのか、一年 間で飲んだのかにより、その影響は全く異なる。ゆえにその単位を
Sv/h、Sv/年のように明確にしなければ意味 がない。単位をあやふやにして一つの図やグラフに書き込んでも混乱するだけである。図
1 は mSv/年の単位で「放射線量・影響と効果」を表したものである。

単位を統一して表示しても前述した三つの理論を並べるから、当然矛盾が生じる。ホルミシス効果があるとされる範囲内(「しきい値」以下)でありながら、一方でそこから避難するということになる。一口に放射線と言っても種類があり、それらはα線、β線、x線、中性子線、γ線である。ここでは聞き慣れない言葉が出てくるのでそれらは次のサイトを参照。
「原子の崩壊」「電磁波」「放射能関係の単位」
図 1 は mSv/年 という年単位であるが、これが秒単位の短い時間ではどうかというのが 図 2 である。
とりあえず 1 秒間当たりのシーベルトにしてあるが、これは厳密ではない。とにかく短い時間という意味である。たとえば病院で受けるCTスキャンは
5~10 秒 程度である。放射線従業者の緊急作業になると数分から数時間ということになる。本来こういう時間間隔の広いものを一つのグラフにすることは意味がなく、同じ線量を浴びる期間とその影響にはかなり曖昧な部分がある。一応放射線の影響を知るための目安でしかない。この図では一定の放射線を一瞬で浴びても、1日かけて浴びても被害程度は同じという不合理な仮定に基づいているということである。
この単位については前述の「放射能関係の単位」で説明しているが、更に付け加える。人が受ける放射線の影響は物理的な厳密さで測定することはできない。放射線の種類、人が受ける臓器により、また人の年齢により異なる。それでも一つの指標とするために
ICRP(国際放射線防護委員会)が定めたもので、物理的単位ではない。このような物理的でない単位には他に人の聴覚に関連する音圧の「デシベル」というのがある。大勢の人に色々な周波数や高さの音を聞かせ、同じ大きさに聞こえる値をある「デシベル」と決めていく「5.11 音圧」。だからこれが 40 デシベルの音だと聞かされても中には違う大きさに聞こえる人もいるということになる。いわゆる生物学的量である。この「シーベルト」もまた恣意的であり、厳密な物理量ではない。だからその決め方に異議を唱える団体もある。しかしこれに代わる単位もないから広く使われており、SI単位(国際単位)となっている。同じシーベルト値でも人によって受ける影響が異なる事があるということである。
ICRP、ECRRについて
ICRP(国際放射線防護委員会)は、民間の国際学術組織であり、イギリス公認の非営利の慈善団体である。放射線防護に関する専門家集団であり、日本を含む世界各国の放射線障害防止に関する法令の基礎となっている。1928年にスウェーデンのストックホルムで現在の前身組織を創設、1950年に現在の名称になった。その際に、放射線医学、放射線遺伝学の専門家以外に原子力関係の専門家も委員に加わるようになり、委員会の性格は変質した。核実験や原子力利用を遂行するにあたり、一般人に対する基準が勝手に設けられた。助成金の拠出機関は、国際原子力機関や経済協力開発機構原子力機関などの原子力機関をはじめ、世界保健機構、ISRや国際放射線防護学会(IRPA)などの放射線防護に関する学会、イギリス、アメリカ、欧州共同体、スウェーデン、日本、アルゼンチン、カナダなどの各国内にある機関からなされている。(以上 Wikipedia
から抜粋要約)
ICRPは現在、LNT仮説を採用しているが、当初はショウジョウバエのX線照射による遺伝的影響をその根拠としていた。ハエの実験結果が人間にも当てはまるとの考えである。さらに広島原爆被爆者の遺伝学調査が行われたが、低線量でその影響が否定されると、いつの間にかそれが発ガンリスクに置き換わってしまった。現在はこの疫学データに基づいており、「高線量で起きる障害は低い線量でも起きる筈」という仮定のもとに影響は不明だが、そうすれば安全側に立つことができるという思想である。
ECRR(欧州放射線リスク委員会)はベルギーに本部を置く市民団体つまり私的団体であり、他の国や機関とは関係ない。1997年に結成され、欧州議会内の政党である欧州「緑の党」が母体である。
ICRP を批判するために生まれたような団体であり「 ICRP のモデルは放射線リスクを過小評価しており、また内部被曝を考慮していない」と一貫して ICRP を非難し、逆に「二相モデル」などといって、低線量域ではかえって危険が増すなどと主張したりしている。
7 Sv 以上の放射線を一気に浴びれば 100 % 死亡する。これは目に見える現象である。それが 1 Sv の低い放射線になっても悪心・嘔吐の現象を生じる。さらに低い放射線を浴びても身体にそれなりの悪影響を与える。だがある放射線量から、影響がよく分からない線量がある。それでも多分なにがしかの影響があるだろう、つまり放射線は低いなら低いなりに影響があり、それはゼロになるまで続く筈である。この影響が明確になる、ならないの境目をしきい値という。線量の大きさに応じて影響も大きくなる、そのはっきりした線が右図の黒の斜線である。その境目以下ははっきりしないが、将来ガンなどの発症があるだろうと仮定して黒の斜線をゼロまで直線を引くと(これを外挿といい図中の黒の点線)全体が直線となる。これがしきい値なしの直線仮説である。これに対してしきい値(100 mSv/年程度)以下は身体的影響がないとするのがしきい値仮説である(赤線の実線)。逆にしきい値以下はかえって健康に良いと言うのがホルミシス仮説である(青線)。さらに低線量では高線量より悪い影響があるとするのもある(赤の点線、バイノミナル効果、バイスタンダー効果、ゲノム安定性など)。それでこのしきい値以上の線量でははっきりした影響があるので確定的影響(急性障害)といい、しきい値以下ははっきりせず確率的にしか判定できない障害つまり 何十年か経って現れるガンなどでありこれ以下を確率的影響(晩発性障害)という。一方を支持するものは他方を批判し、互いに論争が行われ決着がついていない。
一般公衆の被曝限度は 1 mSv/y と法律で決められている」という言葉がネット上あふれ、これはかなり広く認識されているようである。しかしそんな法律は日本には存在しない。肩書きのある誰かがいい加減なことをネットで公表するとすぐに広がってしまう。市民団体や自治体までもそれを信じ、また教科書や辞典などにも 「被曝限度は1
mSv/y が我が国の法律だ」となっている。だから児童の被曝限度が 20 mSv/y などとんでもないと騒ぎだす。
その根拠として提示されている法律は「放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」であり、その14条11第一項第四号(ロ)(3)と第五号(イ)(3)である。これは放射性物質を取扱う事業者が事業所から外部に排出する排気や排液の濃度を定めたものである。その濃度は文部科学大臣が定めるとなっており、その定めた値が
1 mSv/yである。このほかの法律では「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づく規則に「周辺監視区域には 1 mSv/yの線量限度を超えないこと」と定めている。これらはいずれも環境を守るためのものであり、人体への直接の被曝ではない。事業所の周辺監視区域を
1 mSv/y 以下にするということであり、それなら区域外に遠い一般大衆に対しての被曝はほとんどゼロになる筈である。これを「法定の被曝限度 は
1 mSv/y 」と表現すれば逆に、一般大衆に対してほとんどゼロであるべき被曝限度を大きくし、それを緩めている事になる。それほど厳しい制限であり、管理のための設定である。また ICRP が環境への放出を 1 mSv/y としていてもそれはあくまでも勧告であって法律ではない。さらに ICRP は原子力発電所に関しては、その敷地境界では 0.05 mSv/y と提案している。そしてLNT仮説を容認している ICRP でさえ次のように述べている。「この仮説は放射線管理の目的のためにのみ用いるべきであり、すでに起こったわずかな線量の被曝についてのリスクを評価するために用いるのは適切ではない」。事業者が環境を守る管理のための規制ならもっと少なくすることも可能であろう。だが
少ない線量を 危険性があるかもしれないとして、それを行政に反映させることは避けよということである。それは住民に多大な負担を強いることであり、莫大な費用を無駄に費やすことになる。
外部被曝とは身体の外から受ける主にγ線の放射線被曝のことであり、内部被曝とは放射性物質が体内に入りその物質から出る放射線(α線、β線、γ線)の被曝を受けることをいう。内部被曝は放射性物質を飲食物により、また粉塵を吸い込んだりするほか、傷口から血液中に取り込まれることによる。内部被曝で問題とされるのはとくにα線とβ線による被曝である。しかし通常人体に有害なほどに汚染された空気中に居ること自体、特別な事情がないかぎり、一般人にはあり得ない。そういう地域からは当然避難しており、また食物も店や市場から入手するものは汚染されていない。行政を信用できないというのであれば話は別である。
| 米:30、食パン:30、魚:100、牛肉:100、牛乳:50、ドライミルク:200、干ししいたけ:700、清酒:1、干しコンブ:2000、生わかめ:200、茶:600、ポテトチップ:400、ワイン:30、ビール:10 原子力安全研究協会より |
我々が日常食べている食品中にも放射性物質が含まれている。その主なものは K40 である。植物細胞や動物の筋肉にはカリウムが多量に含まれているので、野菜や肉などを食することで当然 カリウム40 を体内に取り込むことになる。そしてこれは体内においてベータ線やガンマ線を出すため、内部被曝を受ける。体重 60 kg の人で、カリウム40 が 4,000 Bq、炭素14 が2,500 Bq、ルビジウム87その他で 500 Bq である。これらも含めた食品からの被曝量は 0.35 mSv/y とされている。 右の表は食品中の自然放射性線量の一例である。食品の暫定規制値はセシウムについて 水や牛乳:200、野菜:500、肉・水産:500(単位:Bq/kg)となっている。
| 核種 | 半減期 | 経口摂取(Sy/Bq) | 吸入摂取(Sv/Bq) |
| C14 | 5730年 | 5.8×10-10 | 5.8×10-9 |
| K40 | 12.8億年 | 6.2×10-9 | 2.1×10-9 |
| Cs134 | 2年 | 1.9×10-8 | 2.0×10-8 |
| Cs137 | 30年 | 1.3×10-8 | 3.9×10-8 |
| I131 | 8日 | 2.2×10-8 | 7.4×10-9 |
| Pu239 | 2.4万年 | 2.5×-7 | 1.2×10-4 |
| Sr90 | 19.1年 | 2.8×10-8 | 1.6×10-7 |
| U235 | 7年 | 4.7×10-8 | 8.0×10-6 |
人は平均 50 Bq 程のカリウム40を食物から取り入れている。これが全部蓄積されればどんどん増えていくが、排出も行われ摂取量とバランスして
4,000 Bq で一定する。摂取量が少なくなれば体内の蓄積量も少なくなっていく。排泄によって体外に出され半分に減少する期間を生物的半減期という。そして右の表の半減期(物理的半減期)と生物的半減期を考慮した半減期を有効半減期という。カリウム40 は 60 日、セシウム137 は 90 日と言われている。物理的半減期が生物的半減期よりはるかに長い場合は 有効半減期はほとんど生物的半減期に等しくなる。
規制値ぎりぎりの牛乳を1日に 200 g 摂取した場合のセシウム137 での平衡に達する内部被曝のシーベルトH は次のようになる。 H=1日の摂取量×濃度(規制値)×有効半減期 ×実効線量係数(上の表より)
=0.2(kg/日)×200(Bq/kg)× 90(日)×1.3×10-8 (Sy/Bq)=0.0000468 Sv=0.0468 mSv
「外部被曝も内部被曝も被害の程度は同じだ」、「いや内部被曝は外部被曝の何倍も何百倍も大きい」とする意見が交錯している。「プルトニウムは飲んでも大丈夫」といった東大教授はネット上でメチャクチャたたかれている。経口より吸入が問題なのだと論争はつきず、個人間や組織間で見解が異なる。さて内部被曝で問題とされているのはα線による
DNA の損傷である。右の図で赤い点はプルトニウム粒子とする。これから放出されるα線は約 40μm の距離を飛び、DNA を直撃する場合(赤の点線)が
20 % の割合で起きるらしい。当然このときは DNA を直接損傷する。α線が飛ぶ方向は任意であるから残り 80 % は細胞を通過し周囲 40μm
にある約 16 個の細胞の原子をイオン化する(赤の実践)。このとき活性酸素ができてそれが DNA に悪影響を与えるということである。以上が内部被曝は外部被曝より危険だという理由である。しかし内部被曝の危険性を主張する人はDNAの修復機能や細胞死(アポトーシス)にはあまり言及しないようである。さらにDNAの 97 % はジャンクDNA(役に立たない)であるといわれている。故にジャンクDNAが破損する確率が大きい、さらにそれが間違った修復がなされても実際の影響はない?となる。
さらに活性酸素とはよく聞く言葉だが一般的には次のように述べられている。
活性酸素とは、電子のバランスが崩れた酸素分子から発生する、反応性の高い物質のことである。
それらは活性酸素種ともいい、一重項酸素,ヒドロキシラジカル,スーパーオキシドアニオン,ペルオキシル,アルコキシル,ヒドロペルオキシル,過酸化水素,次亜塩素酸,オゾン,ペルオキシ硝酸などを総称していう。呼吸によって体内に取り込まれた酸素のうち約
2〜3 % が細胞内でエネルギーを発生させたときに活性酸素となる。活性酸素発生の原因となるものには、激しい運動あるいは労働、飛行機や新幹線などの高スピード、睡眠不足、アルコール、合成洗剤、医薬品、薬物食品添加物、殺虫剤、防腐剤、除草剤、電磁波、紫外線などがある。活性酸素が体内で多量に発生すると体内の細胞を傷付け、傷付いた細胞が隣接している細胞を破壊し、ドミノ倒し式に次々と組織を傷つけてしまう。このため、活性酸素はガン細胞の発生や老化を促進するほか、病気の 90 % 以上に関係していると言われている。これらはいずれも反応性に富み,種々の分子と反応して過酸化などを起こす。これらの活性酸素は体内の抗酸化物質によって分解されるが、抗酸化物質は加齢と共に体内から減少する。一般的に活性酸素は悪玉のようにいわれているが、活性酸素の強い酸化力は人間の生命維持に重要な役割を果たしている。白血球が体内に侵入した病原菌などを死滅させるときに活性酸素が必要であり、また肝臓では有害な物質や毒物を解毒する際にも活性酸素の酸化力を利用する。しかし必要以上に活性酸素が増えたときは体内の酵素(抗酸化物質)によってすみやかに分解され無害化される。活性酸素は多くても少なすぎてもいけない。それを生体は自動的に調節しているのである。
しきい値があるのかないのか議論はつきない。だいたい原発賛成派はしきい値はあるといい、原発反対派はないという。原発事故の被害例を分析しても同じ事例を解析しているのに、立場が違うと自分の主張に合うように解釈し、一方はこれがしきい値のある証拠とし、一方はない証拠だという。チェルノブイリ事故の死亡者数の発表でも個人や組織によって大きく異なりバラバラである。プルトニウムの毒性についてもある人は「最高の猛毒」といい、別の人は「飲んでも大丈夫」という。また年間 1 mSvの被曝限度をかたくなに主張する学者がいる一方で、年間 100 mSvまでは大丈夫と主張する学者もいる。
ICRP を手厳しく批判している ECRR は自分たちは科学的だと主張しているが,ホルミシス仮説に対しては「本委員会は、暫定的にホルミシスは存在するかもしれないと結論する。もしそれが存在するとしても、それの長期的な効果は有害なものである可能性がある。本委員会は、放射線防護の観点からは、ホルミシスについては考慮すべきではないと勧告する。」と 2010 年勧告で述べている。さらに世界には自然放射線(10 mSv/y)の高い地域の人々が自然放射線の低い地域の人々と比べて健康に差がないという事実に関しても「本委員会は、この分野の研究からの証拠は放射線防護目的には有用ではないと結論する。とりわけ低レベル放射線被ばくに対する低いリスクの証拠として認められない。」と同勧告で述べている。自分たちの主張に反するような事実や証拠があってもそれは「見みないことにする」ということであり、これはとても科学的態度とは思えない。
100 mSv/yで、ガン死リスクが 0.5% 増加するという事に対して「ガンの死亡率は 30% だからそれが 30.5 % なってもたいしたことない」という見解に対して「交通事故死は
0.6 % でたいしたことないからといって対策を講じないか」との反論がある。これはガンの確率的影響と交通事故の確定的影響とを混同している。確定的影響には対策が可能である。「世界には
10 mSv/y の自然放射線の地域では他と比べて健康の影響に特に差はない」という報告に対しても「彼らは長いあいだその環境で自然淘汰されて、強い人だけが生き残ったのだから他と比較しても意味がない」となる。日本の自然放射線は
1.5 mSv/y あり、自然淘汰というなら日本人も自然淘汰されており、多少強い放射線にも抵抗力があることになる。多くの識者や組織が色々なことをいっても、しきい値があるなしの結論はいまだ出ていない。しかしそれぞれの論者は「自分の論こそ正しい」と主張し続けている。
ガンの治療法には放射線治療があり、様々なガンに対して全身照射や局所照射等を行う。
一例として●白血病治療の全身照射での照射線量は 2 Svを 1日2回、3日間、計 12 Sv というのがある。7 Sv を一回に浴びれば全員死亡と言われているのに、これは相当に強烈だと思うが分割照射することで無事治療されているようである。●そのほか小児ガンでの局所照射では 663 MBq/kg というのもあり、体重 10 kg とすれば当然この10倍となる。これでも後遺症としての二次ガンのリスクは 1~5% 程度という。●このほか甲状腺線ガン治療としてヨウ素131 のカプセルを飲んで内用療法とする。なおこのとき投与される放射線の量は3.7~7.4 GBqである。これは水道の規制値300 Bq の実に1~2千万倍である。当然身体から放射線を放出するので患者は隔離される。これはまさに経口による内部被曝である。さらに汚染された食品が規制値の何倍とかいうレベルとは、雲泥の差である。
なぜこういうことが可能かというとガン細胞は修復機能が失われており、纏めて一度の照射でも分割照射でも差がない。しかし正常細胞は修復機能があるから、ガン細胞と正常細胞が同じ線量を照射されても大きなダメージを受けないということである。「しきい値なしの直線仮説」を支持する人達は人間のこのような修復機能を全く無視していると思う。また内部被曝の害ばかりを問題にする人がいるけれど、内部の放射性物質が逆にガン細胞を死滅させることだって当然あり得ることである。「毒をもって毒を制する」ということがあると思いたい。放射線を浴びてガンになって何も治療しないで居る人はいないであろう。人の生命力を医者が助けてくれる。ガンになったのは放射線の影響かどうかは全くわからないのであり、それを疑っている方が身体に悪い。
わずかな放射線量を気にし生活を犠牲にしてまであれこれと悩む。放射線の直接の影響より、この気苦労によりガンやその他の病気を引き起こす。「病は気から」という諺どおりである。放射線の影響を論じる人も、心の影響を論じる人はほとんどいないようである。心と体がどれほど関係が深いか一つの例を紹介する。かってアメリカでベストセラーになった本「奇跡的治癒とはなにか」(バーニー・シーゲル著、石井清子訳、日本教文社刊)の中の一節を抄訳する。
ライト氏はすすんだリンパ肉腫にかかっていた。オレンジ大の腫瘍が脇の下、ももの付け根、胸、腹と随所に見られた。脾臓と肝臓が肥大し胸のリンパ管もふさがり、胸から 900~1800 cc のミルク状の液を毎日抜き取っていた。酸素吸入をし、唯一の薬は鎮痛剤であった。そのころ クレビオツェン という新薬の話を耳にした彼はそれを自分に試すよう熱心に頼んだ。しかしこの新薬は、3~6ヶ月は生きる可能性の患者に試される予定であったから、その週の内に死ぬかもしれない彼は対象外であった。それでも熱心に懇願するので金曜日に一度だけ投与することを医師は約束した。それまでに彼は死ぬから他の患者にまわすつもりであった。そして三日後に彼の所に行ったときに驚きの光景を目にする。寝たきりだった彼は病棟を歩き回り看護婦と楽しげに語り合っている。腫瘍の塊は消え、大きさも半分になっている。ライト氏は劇的に回復していたのである。新薬を投与したわけではない、ただ新薬を試すという希望が与えられただけである。そして投与しなくても済むはずであった新薬は週に三回行われることになった。十日も経たぬうちに彼は死の床を離れ、あろうことか自分の飛行機に乗り1万2千フィートの上空を飛んでいたのである。しかし2ヶ月も経たないうちに、例の新薬は全く効果がないという報告が出始め、それをライト氏が知ることになる。悲観した彼の病状は元に戻りまた惨めな生活を送ることになる。一計を案じた医者はライト氏に言う「クレビオツェンはもともと効果のある薬だった、それの改良品、以前の2倍の効力のある新薬が明日到着する」と。彼は当然その新薬の実験を希望し、医者はそれを承諾した。しかしその新薬とは偽りでありただの水である。それでもそれを投与された彼の回復ぶりは最初の時よりさらにドラマチックであった。腫瘍は消え、胸水は引きまた空を飛び始めた。誰が見ても健康体であった。水の注射は続けられ二ヶ月以上元気が続いた。しかしついにクレビオツェンの最終結果が新聞にでた。「クレビオツェンはガン治療に効果なしと断定」。これを知ったライト氏は二日後に再入院し、さらに二日後息を引き取った。
これはプラシーボ効果(偽薬効果)の典型と思われる。そしてプラシーボ効果は患者の 1/3 に有効とされている。原始的医療はこのようなプラシーボ効果を巧みに利用してきたが、これは現代でも有効である。患者が希望をもつことでストレスを緩和しこれが回復の鍵となる。
前述の書籍では病院を訪れる人の 70 % は不安や悩みが原因で病気になっているという。まさに「病は気から」であり、心と体に関して同書から抜き書きした言葉を次に並べてみる。
1. すべての人間が持っている内なる力を使えば奇跡が起きる。
2. 治せない病気はない。ただ治せない人間がいるだけだ。
3. 望まれずに生まれ、愛されずに育った子供は白血病になりやすく、両親の諍いも原因になる。
4. ガンは本来病気ではない。絶望感がガンを生じ、逆に希望や生き甲斐が人を再生する。
5. 医者が治せない患者を祈祷師が治す事がある。医者は心の力を 10% しか使わないからである。
6. 医者の不用意な言葉で健康な人が死ぬことがあり、逆に確信的言葉で人は生き返る。
7. 患者の心に希望の灯をともせたら、実際の治療が始まる前にすでに治療は始まっている。
8. 末期患者とは身体的条件ではなく、その心が末期ということである。
9. 脳は免疫系を直接コントロールする、ゆえにこれが抑制されるとガンが発生する。
10. ストレスはガン発生の最大の原因となる。だがストレスをストレスと感じなくすることも大事である。
11. 幸せな人は病気にならない。愛の欠如と人生の意義の喪失がガンを発症させる。無意味な日常からの逃避と して病気になる。心が健全であれば身体の衰えも少ない。
ガンになる原因はわかっている。前述の書籍によれば「人生の絶望感」がガンを発症させる。その絶望感を軸にして、心配性、ストレス、イライラ、などなどが心を蝕んでいく。1
mSv/y 程度の放射線被曝の物理的で直接的な身体的影響などは些末であり、悩みによる影響の影に隠れて見えてこない。しかし放射能汚染に絡む様々な気苦労や「放射線恐怖症」の方が「心を被曝」し、心が壊れて免疫系を破壊しガン細胞を発生させる。希望に満ちた平穏な生活が原発事故を期に一変する。それにだめ押しをするように「放射線の恐怖」を煽り、今にも東京や日本全体が放射能まみれになり、遠くに逃げても食べる物すべてが汚染され、内部被曝は避けられないと脅しまくる。名もなき市民の煽りなら無視も出来るが、一応それなりの肩書きを持つ専門家らしき輩の煽りなら信じる人も少なくない。もちろん、これまでの原発を安全だとして推進してきた政府や原子力関係者は、天災が原因だとしても、こういう事態を招いたことは第一の犯罪者かもしれない。しかし事故後において
「煽り派」は「放射能に対する安全派」を人々を危険にさらす犯罪者だと決めつけた。しかしながら「煽り派」は「安全派」よりはるかにはなはだしく犯罪行為をしていると思われる。「煽り派」の言葉に振り回され、心配のあまり病気になる人の方が、安全だと言われて安堵する人より圧倒的に多いであろう。ネットで見る限り、世間には最初から心配性が多く、危険だと言う人にはなぜか同調者が多く、安全だというと非難される事が多い。危険でないものを危険だという「煽り派」は自分が犯罪者だと知るべきである。たとえ放射線に被曝し大きなダメージを受けても、「大丈夫だ、免疫力が防いでくれる」という強い希望をもてば、ガン、その他の病気を寄せ付けないであろう。
−了−