1. 原子力発電-T(燃料偏) 2.原子力発電-U(構造編) 3.原子力発電-V(福島事故と煽り検証)
4. 原子力発電-W(過去の原発事故) 5. 放射線被害と規制値
原発事故で放射性物質が飛散され、原発近くの人々は避難を余儀なくされさまざまな風評被害もある。そして莫大な量のセシウムとか、○○より何十万倍のとか、単なる比較級を用いて危険性を吹聴する。「狼が来る!!」と叫ぶまえに正確な情報を得れば少しは冷静になれるであろう。過去の原発事故と福島原発事故とを参考に「正しい恐れ方」を次章で考えてみる。
(1)スリーマイル島原発事故 (レベル5)
1979/3/28アメリカのペンシルベニア州スリーマイル島原子力発電所で冷却材喪失により発生した。
故障で二次冷却水の給水ポンプが止まり、一次冷却系を除熱出来ず炉心の圧力が上昇し加圧器逃し安全弁が開いた。しかしこの弁は開いたまま動かなくなり、大量の冷却材が失われ、ECCSが作動したが、炉内圧力が低下しているため水位計が誤作動した。冷却水過剰と判断した運転員がECCSを手動で停止させた。結果
500 トンの冷却水が放出され、炉心上部は 2/3 がむき出しになり、燃料棒が破損。運転員の給水回復により事故は終焉した。炉心溶融で燃料の 45
%、62 トンが溶融、20 トンが圧力容器の底に留まった。
放射性物質は希ガス類約 9.25×1016 Bq、ヨウ素は約5.55×1011 Bq、セシウムの放出はなし。周辺住民の被曝は0.01 - 1 mSv 程度とされる。
(2)チェルノブイリ原発事故(レベル7)
1986/4/26 日に 旧ソビエト連邦でチェルノブイリの原子力発電所 4 号炉で起きた。この原子炉は黒鉛減速沸騰軽水炉(圧力管型原子炉)であり、操作ミスと設計ミスが重なり炉心溶融(メルトダウン)を起し蒸気管が破裂し水蒸気爆発を起こした。飛散した放射性物質は推定 10 ton、1.4×1019 ベクレルが放出された。広島原爆の 400 倍とされ、爆発後も火災は止まらず ホウ素化合物、鉛、粘土、砂など計 5000 トンを投下して、ようやく 5月6日(21日後)漏出が終わる。当然、原発から30
km 以内の居住者は移住した。
この事故による死亡者として次のように発表する機関によってまちまちである。
1. ソ連当事者 4万人 2. IAEA 4000人 3. WHO 9000人
4. LARC(国際ガン研究機関)1万6000人(40カ国対象) 5. その他 最大 80万人
なんでこんなに差があるのか、いいかげんとしか言いようがない。
原発の10 km 区域の放射性降下物は 4.8 GBq/m2 。そして 4 km2 の森は埋め立てられ、その近辺は枯れ死したマツで赤い森となった。突然変異した植物や動物も出現し、[不思議な森]とか「奇怪な森」と言われる。それでも残った三つの原子炉の運転は
2000/11 まで続けられた。破壊した炉を閉じ込めた石棺も老朽化し、今後の処置が検討されている。1991年にはこの事故が引き金となりソ連は崩壊し、現ウクライナ共和国が後処理を引き継いだ。
3. 東海村 JCO 臨界事故(レベル4)
1999/9/30 10 時35 分、茨城県東海村にある株式会社JCOに起きた事故で臨界状態が 20 時間持続した。12:30分 に500 m以内の住民への避難勧告、20時30分には10
km以内の住民には屋内退避。解除されたのは翌10月1日の 16 時 30 分頃だった。事故による直接の死者 2 名と 667 名の被曝者を出した。JCO
は燃料加工工程で国の定めた正規マニュアルではなく「裏マニュアル」を運用していた。形状制限がなされた容器(貯塔)を使用せず、作業効率のため背丈が低く内径の広い容器(冷却水のジャケットに包まれた沈殿槽)を使用した。その結果、濃縮度18.8%の硝酸ウラニル水溶液は周囲の冷却水が中性子の反射材となり臨界状態となった。その後冷却水を抜くことやホウ酸を投入するなどの作業を行い、20
時間後に終息した。この事故は犯罪である。
4. その他(レベル3以下)
1973/3 関西電力美浜1号機 で燃料棒折損事故。
1978/11/2 福島第一3号機 で制御棒5本が脱落した臨界事故(7時間半続く)。
1991/2/9 美浜原発2号機 で蒸気発生機器の伝熱管が一本破裂しECCSが作動。
1995/12/8 高速増殖炉 もんじゅ で二次冷却系で温度計の設計ミスからナトリウム推定 640 kg ± 42 kg が漏洩し、火災となった。対応の遅れや動燃による事故隠しが問題となり、この事故以来、原子炉は休止状態が続き、稼動できなくなった。(レベル1)
1999/6/18 北陸電力志賀原発1号機 で弁操作の誤りで3本の制御棒が抜けて15分間の臨界となる。 マニュアルの開閉が逆に記載されていた。
2004/8/9 関西電力美浜3号機 で2次系配管破損、高圧蒸気が噴出し作業員5名が熱傷で死亡。
2010/8/26 高速増殖炉 もんじゅ で炉内中継装置(3.3 トン)をつり上げ作業中に落下。何回も引き上げ作業を試みるも失敗し、いまだ解決せず。
| レベル | 基準 T 所外への影響 |
基準 U 所内への影響 |
||
| 尺度以下 | 0 | 尺度以下 | ||
| 異常な事象 | 1 | 逸脱 | ||
| 2 | 異常事象 | 所内のかなりの放射性物質による汚染 | ||
| 3 | 重大な異常事象 | 放射性物質の極めて少量の外部放出 | 所内の重大な放射性物質による汚染 | |
| 事 故 | 4 | 所外への大きなリスクを伴わない事故 | 放射性物質の少量の外部放出 | 原子炉の炉心のかなりの損傷 |
| 5 | 放射性物質の限られた外部放出 | 放射性物質の限られた外部放出 | 原子炉の炉心の重大な損傷 | |
| 6 | 放射性物質のかなりの外部放出 | 放射性物質のかなりの外部放出 | ||
| 7 | 放射性物質の重大な外部放出 | 放射性物質の重大な外部放出 | ||
| 5. に追加:ヨウ素ヨウ素131等価で数百から数千テラベクレル相当の放射性物質の外部放出。 6. に追加:ヨウ素131等価で数千から数万テラベクレル相当の放射性物質の外部放出。 7. に追加:ヨウ素131等価で数万テラベクレル相当の放射性物質の外部放出。 | ||||
前項で述べた事故(レベル5とかレベル7)とかの表記の意味は右の表における国際原子力事象評価基準のことである。福島の原発事故が チェルノブイリと同じレベル 7 ということで、事故の深刻度はチェルノブイリ に匹敵すると思われてしまう。しかし、右の表で見るように「かなりの」や「極めて」とか、または「重大な」とか曖昧な表現がなされている。基準が数字で表されていない。かろうじて外部に放出した放射性物質量を参考として示しているだけである。
福島の原発からは当初と違って原子力安全保安院は、77 万 テラベクレルの放射性物質が放出されたと発表した(6/6)。一方チェルノブイリは 520
万 テラベクレルだから福島はその 15 % 程度である。それなのにチェルノブイリと同じレベル 7 とはどういうわけか。表にみるように数万テラベクレル以上だとすべてレベル
7 にされてしまう。故にレベル7 には事故の程度に大きな差がある事になる。ではベクレルとはどういう単位かというと「1 秒間に一個の原子が壊れ放射線を放出する場合を 1 ベクレル」とするのである。では福島原発から放出された 77 万テラベクレルを実際の質量(g)に換算してみよう。ベクレルと( g) の換算式は右に示した通りである。どうしてこういう式になるのか、説明ははぶくが、分母の
0.693 は 2 の自然対数である。77 万 テラベクレルの核種はヨウ素131の換算値であるからすべてをヨウ素として計算してみる。結果は右の通り、162.56
g である。(前前頁の原子力発電Vにおける放射性物質の崩壊という表のなかの比放射能強度からも求めることが
できる。たとえば 7.7×1017/4.6×1015=167.3 g となる。実際の質量に換算すればわずか 162 g である。これが福島県の面積(1.38×1010m2)だけに均一にばらまかれたとしても、1.2μg / m2 にしか過ぎない。この 77 万 テラベクレル には当然海水に流出した分も含まれてい
る。海水には空気中よりもはるかに少ない量の流出でしかない筈である。それでも高濃度排水を海に流したとして海外から苦情も寄せられたが、心配しすぎの感じである。ベクレルだけで表示すれば、大きさの程度は実感出来ないが、逆に言えばこんなに少ない量でも大騒ぎしなければならないほどに、放射性物質は恐ろしいということでもある。ほうれん草の汚染基準がセシウム137で
500 ベクレル/kg なら 1.13×10−12 g / kg(1.13ピコg /kg)となる。
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