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番外編:福島原発事故-V(煽り検証)

 1. 福島原発事故-T(燃料偏)  2. 福島原発事故-U(構造編) 3. 福島原発事故-V(福島事故と煽り検証) 4. 福島原発事故-W(過去の原発事故) 5. 福島原発事故-X(放射線量と被曝)    

1. 福島の原発事故と現状

  絶対安全と言われてきた原発なのに、とうとう大事故が起きてしまった。しかし事故は起きたけれど過剰反応は頂けない。真実を知って冷静になることである。専門家でさえ無知をさらけ出し不安を煽る人々がいる。これこそ大きな二次災害となる。その煽りの内容を検証してみる。福島第一原発の現状(2011/6-30 現在)では以下のようである。詳細は 福島事故まとめ  で知ることが出来る。

福島原発の爆発後の映像http://photos.oregonlive.com/photo-essay/2011/03/fukushima_dai-ichi_aerials.html

2. 核爆発は起きるか

 原子炉が核爆発する可能性は絶対ないと思われる。しかし専門家でも次のような信じられない事を言う人がいる。「燃料が溶けて固まり臨界状態に達して原爆となる。福島の原発が核爆発を起こせば、福島、栃木、茨城は避難区域になる」。しかし爆発という表現自体が曖昧であり、単に畑のスイカが割れても爆発と表現する。すでに 3 号機は核爆発だと想定する専門家もいる。この程度でも核爆発というなら、核爆発にも大小さまざまあるということになる。しかし原爆と同じだという表現をすれば、大小を超えてやはり、核兵器としての核爆発を意味することであり、その影響はおして知るべしである。原子爆弾の詳細については、原子爆弾を参照。爆発とは極めて短時間にたとえば原爆の場合は、100万分の 1 秒の間に連鎖反応を起こして急激に熱が発生し小さな塊(ゴルフボールやソフトボール程度)の核物質の体積が急膨張するために生ずる現象である。より大きな容積を占める物質が急膨張しても大した威力はない。あるいは前述の小さな塊のなかで、連鎖が続かず、小爆発(これを未熟爆発という)しても威力は激減する。また意図しない中性子により、連鎖が最終に行く前に爆発することもある(早期爆発)が、これもまた威力が激減する。要するに原爆のような爆発を起こさせるには精密に計算し意識的に行わなければ起きないのである。まず中性子の漏れを防ぎ、小さな塊を一瞬のうちに行わせる連鎖反応が 100 % 確実に進まないと起きない現象である。災害により不幸な偶然が重なったとしても原子爆弾にはなり得ない。第一の要素はウラン235の濃度が 3 % 程度であること、原子爆弾はウラン 235 やプルトニウム 239 ががほぼ 100 % 近い濃度に濃縮した物である。さらにメルトした場合、被覆管(ジルコニウム融点1850℃)が一番先に溶け始め、ウラン235 (融点 2850 ℃)だけでなく、制御棒を構成するボロンカーバイド(融点 2180 ℃)やハフニウム(融点 2200 ℃)も同時に溶融する筈であるから中性子が捕獲される。さらに中性子は系外へ漏れるのであり、その対策がなければ連鎖は続かない。3 号機の爆発を核爆発だとしても、水素爆発と大して変わりのないものとなり、未熟爆発や早期爆発となりとても原子爆弾の威力はなくなる。燃料がどれだけ大量に存在しても決して爆弾にはなり得ない。メルトしてバラバラになって落下した燃料ウランはせいぜい放射熱で温度が高くなる程度で、これのみが問題である。メルトダウンして爆発したチェルノブイリ原発も水蒸気爆発である。(後述)

3. メルトダウン(炉心溶融)

  直径 1 cm、高さ 1 cm のペレット状にしたウラン燃料をジルコニウム合金の細長い筒に封入したものを燃料棒という。この燃料が核分裂して発熱する。これを蒸気にして取り出し、タービンを廻し冷却して循環する。
この調節は制御棒の上下で調節するのは前述のとおりである。緊急時には制御棒が挿入され核反応は停止する。さらに核分裂は止まっても分裂で生じた各種物質は半減期が短く放射線を出し、発熱する。核分裂は停止しても停止直後は発熱が大きく冷却が必要であり、さらにこの冷却は続ける必要がある。主冷却がトラブルで停止しても、自動的にサブの冷却装置として働くのが緊急冷却装置(ECCS)である。しかし地震でこれらも作動しなかったため、5月中旬になって東電は次のように発表した。
 3月11日午後 3 時半ごろに津波で冷却機能を全部喪失したとみた場合、同 7 時半ごろ燃料の損傷が始まり、急速に溶融して圧力容器底部に落下。翌12日午前6 時 50 分 ごろには、ほぼ全燃料が落下したとみられる。消防ポンプで真水を注入し始めた同 5 時 50 分ごろには、圧力容器下部が損傷。格納容器への水漏れが起きたが、小規模にとどまった。真水の注入は午後 2 時 50 分ごろ止まってしまい、直前の同 2 時半ごろに格納容器の圧力逃がし弁を開く「ベント」ができたが、同 3 時 36 分に水素爆発に至った。
冷却が止まれば燃料棒は高温になり、被覆材がとけ燃料は落下する。どんなに少量でも溶ければメルトダウンである。これにもまた程度がさまざまである。全部溶ければフルメルトダウンである。さらに燃料棒被覆材のジルコニウムと水とが高温で反応して、水を分解し水素と酸素を発生する。これが水素爆発の原因である。ちなみにジルコニウム合金の融点は 1850 ℃、燃料の二酸化ウランの融点は2800 ℃ である。これだけの高温になり、1 号機、3 号機はフルメルトダウン、2 号機は 35 % 溶融となった。圧力容器の底にたまったであろう溶融物の冷却は行われており、それらの温度は 100 ℃ 前後である。
炉心溶融(メルトダウン)と関連づずけて論じられるのがチャイナシンドローム(1979年3月16日に公開されたアメリカ映画の題名で訳すると「中国症候群」となる。それからわずか 12 日後に、スリーマイル島原発で事故が起きたため、この映画は大ヒットした。)である。高温の溶融物が地面を溶かし地球の反対側にまで達するというおとぎ話である。言及するのもバカバカしいジョークであり、こういうことは 100 % あり得ないことである。

4. 再臨界

  臨界とは燃料編で述べたように、一個の中性子が連続して核反応を起こす現象である。圧力容器内では燃料棒を臨界が生ずるように計算されて配置されている。まさにドミノ倒しのように準備されているからそれが可能になる。燃料棒が溶融して落下する状態はドミノがばらばらにされた状態である。偶然でも部分的にドミノ倒し現象(再臨界)が起きたとしてもそれはすぐに止まってしまう。長いドミノの整列が偶然にできあがると考えるのは馬鹿げたことである。海水注入に関して「再臨界の可能性はゼロではない」と言ったとか言わないとか。専門家がよく言う言葉だと発言者はいうが、こういう表現は一種の「責任逃れ」ではないかと思われる。たとえば「階段から転げ落ちて死ぬ確率はゼロではない」とか「旅客機が墜落する可能性はゼロではない」といって「階段を使用しない」「飛行機に乗らない」ということをするであろうか。そしてかりに事故が起きたときに、「私はあのときそういうことを指摘した筈」と弁解する逃げを用意しているのである。

5. プルトニウムの危険性

 福島第一発電所の3 号炉には MOX 燃料が 32 本使用されている。この MOX 燃料には 6 % 程度のプルトニム239 を含んでいる。このプルトニウム を「かって人類が遭遇した物質で最高の毒性を持ち、ウランの数万倍危険である」と煽る学者がいる。

放射性物質の崩壊 
 放射性物質 減期(年) 崩壊形式  比放射能 Bq/g
ウラン U235  7×108  α  8.7×104 
ウラン U238 4.56×10 α+γ  1.24×104 
プルトニウムPu239 2.4×10 α+γ  2.3×109 
プルトニウムPu240 6.6×103  α+γ  8.4×10
ヨウ素 I131  8日  β+γ  4.6×1015 
セシウムCs137  30  β+γ  3.2×1012 
セシウムCs134  β+γ  4.8×1013 
ラドン Rn222  3.8日  α  5.7×1015 
カリウム K40  1.3×109  β  2.6×10

また「福島 3 号機には MOX 燃料で 60 % の大量のプルトニウムが使用されている」と表現される。数万倍とか 60 % という数字だけが一人歩きし、極めて危険だという噂が広まる。しかしこれらは情報を聞きかじりし、早とちりによる誤解である。ウランの数万倍の危険というのは右の表に見るようにプルトニウムの半減期はウランより短い。その分、比放射能(単位質量当たりの放射能強度)が大きくなる。ウラン235 とプルトニウム 239 の比放射能の比は 2.3×109/8.7×104=26,437 となり、これが数万倍危険という根拠であろうか。比放射能で比較すれば半減期の短いヨウ素やセシウムはプルトニウムより遙かに危険な物質となる。また MOX 燃料にプルトニウムが 60 % というのも誤解である。使用済みの燃料にはウラン 238 から生成したプルトニウムの同位体が燃料全体の 1 % 存在する。それらの同位体はプルトニウム238、239、240、241,242 等であり、その中の比率がそれぞれ 1.8%、60 %、24%、11%、3.8%ということであり、プルトニム 239 が 60 %で一番多い。しかし全体の量の 60 % ではなく、1 % の中の比率であるからその値は全体の 0.6 %でしかない。比放射能が大きいとしても問題にするような量ではない。またプルトニウムの放射能の害を除けば、金属プルトニウムとしての人体への害は他の金属と比べて特別なものはない角砂糖5ヶ分で日本人が全滅する」などという話はどこからでたのであろう。プルトニウムの被曝の危険性が問題になるのはプルトニウムを取り扱う原発等の作業員に対してであり、それ以外の一般人には無関係な話である。ウランより重いプルトニウムは遠くに飛散する量は極めてわずかである。また体内に取り込んだ場合の内部被曝を問題にするにしても、人工の元素であるプルトニウムは、生命体にとって不要な物質である。たとえ経口摂取で取り込んでも、すぐに排泄され、吸入しても多くははき出される。たとえ肺に沈着してもそれでガンを発症したという実例も今までに存在しない。「プルトニウムは猛毒」というのは架空の話である。

6. プルトニウムの核兵器転用?

 プルトニウム239 は核兵器の材料であり、長崎に落とされた原爆もプルトニウム239 である。MOX燃料にはプルトニウム239 が 4〜9% 含まれている。故に MOX 燃料からプルトニウムを分離して核爆弾が製造可能と短絡的に考える向きがある。プルトニウムとウランとは化学的性質が異なるから、ウランからプルトニウムを分離するのはウランの濃縮よりは簡単かも知れない。さらに兵器級には 90 % 程度に濃縮が必要であるが、低濃度でも可能であるとも言われる。またウラン235 と プルトニウム239 とが 50:50 程度でも核爆弾が可能だと主張する人もいる。原爆の方式にはウランの場合はガンタイプがプルトニウムの場合はインプロージョン方式がある。混合ならまた別の方式になるのだろうか。しかしこれらを行うには乗り越えなければならない技術的課題が多すぎる。いずれにしても開発が伴うことであり、ただ原料のプルトニウムが存在するというだけのことである。確かに原料が存在すればまさに「その可能性はゼロではない」といえる。しかしこれは現実的でない。一体そんなことを大金を投じ、開発に絡むことを秘密裏に行えるであろうか。出来る出来ないではなく、全く意味のないことであり、可能性はゼロではないかもしれないが、限りなくゼロに近いと言えるであろう。

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