1. 福島原発事故-T(燃料編) 2. 福島原発事故-U(構造編) 3. 福島原発事故-V(福島事故と煽り検証) 4. 福島原発事故-W(過去の原発事故) 5. 福島原発事故-X(放射線量と被曝)
福島原発事故に絡んでネット上には様々な流言飛語が飛び交い、大げさに不安を煽るものや、安全で心配ないというようなものが錯綜している。主張の異なる相手に対して罵声を浴びせ非難中傷する。我こそは正しいと言わんばかりに為政者をバカ呼ばわりし、報道関係をマスゴミといい、専門家を御用学者と決めつける。経験のない大事故に、専門家にしても組織にして意見や主張が異なるからなおさら互いを批判し非難が絶えないのかも知れない。小生は何の専門家でもないが、それでも「これはおかしいのではないか」と思うことを基礎的事項を解説しながら指摘してみたい。
天然ウランにはウラン235(0.7%)とウラン238(99.3%)の同位体が存在する。ウランの原子核に中性子をぶつけるとその原子核は中性子を吸収して分裂し、ヨウ素やセシウムなどの別の原子になる。また分裂に際し高速の中性子を放出する。しかし分裂するのはウラン
235 だけであり、ウラン 238 の場合は分裂ではなく中性子を吸収してプルトニウムの同位体(239、240)などに変わる。ゆえに核燃料として寄与するのはウラン235
や新しく生成されたプルトニウム 239 だけである。この際大きなエネルギーを放出する。分裂の際に中性子が 1 個以上放出すれば次々に分裂が起こり連鎖反応が続いて行く。ウランが分裂するときには平均 2.6 個の中性子が放出される。 </p>
ウラン235 はどんな速度の中性子でも分裂するが低速であるほど分裂しやすい。ウランが分裂するときは同時に高速の中性子を平均 2.6 個放出する。高速のままでは ウラン 235 にはほとんど吸収されない。吸収させるためには中性子の減速が必須であり、その役目を果たすのが水(水分子の中の水素)である。原子力発電で使用する普通の水を「軽水」と言うが「軽い水」ということではない。
水素には同位体があり(通常の水素は原子量 1 であるが、ごくわずか原子量 2 の同位体である重水素が存在する)、水分子の水素がこの重水素である水を重水という。そして減速材に水を使用する原子炉を「軽水炉」という。核が分裂するときに放出される高速の中性子一個がもつエネルギーは 100 万電子ボルト(1.6 × 10−13 J )である。これが水素に繰り返し衝突し減速して 理想的な 0.03 電子ボルト になるまで平均 18 回 ぶつからなければならない。ウラン235 が連続分裂して連鎖反応が維持される状態を臨界または臨界状態にあるという。しかしいかんせん天然ウランの ウラン235 が 0.7 % ではどうにもならない。故にこれを濃縮して含有率を上げなければならない。そして
3 % 程度に濃縮したのが原子力発電の燃料であり、90 % 以上に濃縮したのが原子爆弾に使用される。原子力発電ではウラン235 を少しずつ分裂するように中性子を制御している。ウラン一個の分裂で生ずる
2.6 個の中性子を一個しか有効でないようにする制御(臨界状態)を制御棒の上げ下げで調節する。
ウランはいずれも中性子を吸収すれば核分裂を起こし、このとき放射する中性子は高速である。
しかし ウラン238 は高速(100万 電子ボルト以上)の中性子でないと分裂しないが、高速の中性子なら必ず分裂するというわけではない。中には非弾性衝突を起こして吸収せず跳ね返してしまい中性子を減速させる。また分裂した場合でもそのとき生ずる中性子の速度は様々であり高速の中性子は極めて少ない。さらに
ウラン238 には低速(100万電子ボルト以下)の中性子を吸収して共鳴吸収という現象が起きて分裂しない上に中性子を無駄食いしてしまう。燃料棒中の ウラン238 は低速の中性子を吸収して分裂しないかわりに、炉の運転中に
4 項で述べたように、 1 % 程度 プルトニウム239 に変換され、原子炉運転中はわずかであるがこれも核分裂して燃料として寄与する。
ウラン235(0.7%)を濃縮するのは簡単なことではない。ウラン235 もウラン238 も質量が若干異なるだけで化学的性質は同じである。故に化学的性質を利用した濃縮は絶対に不可能である。
故にその質量の差を利用した物理的方法しかない。しかしその質量差は 1:1.013 程度であり、物理的方法にしても困難を極める。原子爆弾の開発はこのウランの濃縮方法にかかっているのである。
第二次大戦中、日本もドイツも成功せずアメリカだけが成功した。濃縮方法には三つあり、遠心分離法、熱拡散法、ガス拡散法、があり、いずれも六フッ化ウランを利用する。
尚、ウランには ウラン 235 の含有量により次のような呼び方がある。
1. 劣化ウラン:ウラン235 の濃度が天然ウラン (0.7%) を下回る場合をいう。減損ウランともいう。
2. 低濃縮ウラン:ウラン 235の濃度が天然ウラン (0.7%) を超え、20 % 以下の場合をいう。
3. 高濃縮ウラン:ウラン 235の濃度が 20 % を超える場合をいう。
プルトニウム239
プルトニウムは天然にはほとんど存在しない人工の元素である。燃料棒に含まれる ウラン238 は炉の運転中に低速の中性子を吸収すると ウラン239
になりβ線を出し ネプツニウム になりさらにβ線を放出してプルトニウム239 に変わる。従って使用済み燃料中には約 1 % 程度のプルトニウム239 が含まれ、そのほかの同位体(238、239、240、241、242)が生じる。主に
プルトニウム239 に変換されるがこれもどんな速度の中性子によっても分裂する。故にプルトニウム 239 は原子力発電の燃料になり原子爆弾にも利用できる。燃えないウラン
238 を原子炉で使用することで利用可能なプルトニウム 239 が生産されるから、再利用が可能であるが、それは技術的に極めて困難である。
プルトニウムはα線を放出して他の元素に変わるが、たとえば プルトニウム239 がα崩壊するとウラン235 になる。但しその半減期は 24,100
年である。
原子炉で使用された後の燃料棒である。最初 3 % であったウラン235 は 1 % に減少し、プルトニウム239 が 1 %増加する。この使用済み燃料から ウラン 235 及び プルトニウム 239 を抽出すれば再び燃料として利用できる。ここでできるプルトニウムには各種の同位体があり、1 % の中の同位体比率は次のようである。プルトニウム238:1.8%、同239:59.3%、同240:24%、同241:11%、同242:3.8% である。このうち 239 と 241 のみが遅速中性子で分裂する。つまり奇数の原子量のみが分裂するのである。一般的には原子炉で使用された後、冷却するために原子力発電所内にある貯蔵プールで 3 年〜5 年ほど保管される。その後、核燃料サイクルに用いるために再処理工場に輸送されて処理が行われ MOX燃料 に加工される。日本においては青森県六ヶ所村に六ヶ所村核燃料再処理施設の建設が行われているが処理計画は遅れている。ここでは 1 年間で約 800 トンの使用済み燃料を処理し、有効なウランやプルトニウムを分離する計画である。ただしトラブル続きで再延期中。故に核燃料はカナダやオーストラリアから輸入している。
混合酸化物燃料の略称であり、使用済み燃料中に 1 % 程度含まれるプルトニウム を再処理により取り出し、プルトニウム 239 と ウラン 238
とを混ぜた燃料である。プルトニウム濃度を4〜9 % に高めて軽水炉用の燃料ペレットと同一の形状に加工して軽水炉でウラン燃料と一緒に使用する。
これをプルサーマル利用と呼ぶ。福島原発の 3号炉には 548 本の燃料棒の内 32 本に MOX 燃料が使用されている。なおプルトニウム 239 の濃度を 20 % 程度にしたものを高速増殖炉で単独に使用する。
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