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第六章 物質(U)

   第六章 目次   6.1 空気    6.2 水      6.3 元素単体と無機化合物    6.4 有機化合物  
    コーヒータイム(6)プラシーボ    コーヒータイム(7)宗教と教義    執筆後記(第六章)

6.4 有機化合物

6.4 目次(頁内)  6.4.1 有機化合物の基本構造   6.4.2 脂肪族化合物  6.4.3  芳香族化合物
6.4.4 炭水化物(糖類)   6.4.5 アミノ酸  6.4.6 たんぱく質  6.4.7 合成繊維  
6.4.8 合成樹脂  6.4.9 ゴム

 尿素 物質すべては無機化合物と有機化合物に分ける事ができる。有機化合物とはかっては人工的に作ることは不可能とされていた生命体に由来する物質である、つまり生物という神秘的な力を必要とするものであり、それは炭素を主体とする化合物であった。しかし1828 年ドイツの F・ヴェーラーがシアン酸アンモニウムの水溶液を加熱して無機化合物から初めて生体にしか存在しない尿素を合成した。それ以後生命体に関わる物質が次々に合成され、有機という意味は失われたが、名前だけは慣習的に残った。炭素は共有結合を作りやすく、4 価の原子価をもちその化合物は 1000 万 種以上が存在する。それに対する名称もIUPAC(アイユパック、国際純粋応用化学連合、International Union of Pure and Applied Chemistory)により明確に決められているが、以前から使われている慣用名も使用されている。分子構造が分かれば名前が分かり、名前がわかれば分子構造が分かるようになっている。しかし物質によってはとてつもなく長くなるのもある。

6.4.1 有機化合物の基本構造

(1) 骨格による分類

脂肪族化合物  炭素が連続して鎖状に結合している鎖式化合物(脂肪族化合物ともいう)と、環状に結合している部分を含めた環状化合物に大別される。それらの炭素がすべて飽和して結合している化合物をアルカン類、二重結合を一個有するものをアルケン類、三重結合を一個有するものをアルキン類といい、飽和環状のものをシクロアルカンという。
環状化合物のうちC66 のようなベンゼン核を有する化合物は芳香族化合物という。
(A)アルカン  
炭素と水素からなる脂肪族飽和炭化水素のことで,環状構造を含まない。全て単結合で水素原子で飽和されている。一般式 CnH2n+2で表される。反応性が小さく、多くの試薬に対して親和力を示さないので炭素数 20 以アルカン類の名称上はパラフィンとも呼ばれる。なおプロパンまでは異性体は存在しないが炭素数が多くなるほど、異性体の数は増していく。異性体の呼称は上図の如く直鎖の炭素に左から番号を付け、官能基が付加されている位置の番号を官能基名をつけて呼称する。最も簡単なメタンは水素を頂点とした正四面体であり、他のアルカン類もこの正四面体の連続構造である。そして炭素原子どうしは自由に回転できるので図のような直線状ではないが便宜上直線的に描く。しかし構造は立体的である。
(B)アルケン
異性体  炭素原子間に二重結合を1個もち,環状構造を含まない脂肪族不飽和炭化水素をアルケンといい,一般式 CnH2n で表される。なお,二重結合を2個以上もつ鎖状炭化水素では,アルカンの語尾アンを 2 個のときはアジエンに,3 個のときはアトリエンに変える。また二重結合の位置は炭素に番号を付けて表示する。たとえば,CH2=CHCH=CH2 は 1,3−ブタジエンという。エテン、プロペンに異性体はなく、ブテンには 4 種類の異性体がある。アルケンは二重結合があるため、それが開いて付加反応を生じ高分子を作りやすい。二重結合は常温では単結合のように自由回転はできない。また二重結合は単結合よりやや短い。構造は平面的である。
(C)アルキン 分子内に1個の三重結合をもつ脂肪族不飽和炭化水素で環状構造を含まず、アセチレン系炭化水素ともいう。一般式は CnH2n−2 で表される。アセチレン(C2H2)は炭酸カルシウムに水を加えると簡単に発生する。本来無色.無臭だがこの製法のものは不純物のため臭いがする。アルキン類もまた三重結合による付加反応が生じやすい。構造は直線的である。
(D)環状構造 炭素が環状に結合する部分を含むもので環式化合物という。炭素結合では単結合のものを飽和化合物といい、二重結合や三重結合を含むものを不飽和化合物という。それらのうち環式の場合は脂環式化合物及び芳香族化合物という。特に炭素原子が環状につながった飽和炭化水素をシクロアルカン(シクロパラフィン、ナフテン)という。一般式はCnH2nで示され性質もアルカンに似ている。
(E)構造式の簡略表示 化合物を示性式で示すと面倒だとして簡略的に示すことがある。それを下の図に示す。直線のみの簡略なものであるが、当然書き方に約束があり直線の両端と角の頂点には炭素と水素がある。単直線の端には CH3 があり、角の頂点には CH2 がある。もちろん二重結合は二本で、三重結合は三本線で表し、省略された炭素と水素の数はそれに見合ったものとする。飽和環状のシクロアルカンは二重線のない六角形である。これらを元にして下の簡略表示図を眺めれば自ずと理解できるであろう。

ニューマン投影図 尚立体的な構造式を表示する場合にはニューマン 投影図があり、右図のような表示をする。正四面体の炭素が中心にあり、 点線でつないだ水素は後ろ側にあり、くさびでつないだメチル基は手前 にあることを示している。
天然ガスの成分 アルカン類の低分子化合物(メタン、エタン、プロパ ン等)は天然ガスの主成分である。これ以上の 炭素数のものは石油中 に存在する。分子量が多くなるにつれ液体から固体に変わっていく。アルカン類は化学的に安定であり、 天然に存在するが、アルキンや、アルケン等の不飽和結合を有する化合物は、石油類から加熱分解して 製する。石油は各種炭化水素の混合物であり、石油を分留して作られる製品は次のように炭素数で分け ることができる。
炭素数 1〜2   気体、燃料、合成原料         3〜4   LPG(プロパン)、合成原料  
         6〜11    液体、ナフサ、合成原料       5〜1 1  ガソリン 、溶剤、合成原料
       9〜18    灯油、(航空機用はケロシン)    10〜25   軽油、
        16〜20    油脂(ワセリン)、潤滑油     17 以上  重油、ボイラー・ディゼル燃料、
        24〜40   潤滑油、工作油        35以上  アスファルト、ろう、ワックス


(2) 異性体

異性体 分子式は同じであるが、構造が異なる分子であり、そのため性質も異なる化合物どうしを互いに異性体(isomer)という。合成した化合物には等量の異性体が生じても自然界では一方しかないものもある。「ジエチルエーテルはブタノールの異性体である」というような使い方をする。ゆえに同じ分子式でも物質の呼び名が異なる。異性体にも多くの種類がありそれらを分類すると右のようになる。

(A)位置異性体
各種異性体 官能基がついている位置が異なるものである。ベンゼン核に二つの官能基がある場合、隣り合わせではオルト(o)、炭素原子を一個 間に置くとメタ(m)、対称の位置でパラ(p)となる。
(B)官能基異性体
 アルコールとエーテルのように官能基が異なる場合である。また単糖の場合は六員環が開いて鎖状になり官能基が変わる場合である。
(C)骨格異性体
 直鎖脂肪族が枝分かれする場合であり、n-ブタンとイソブタンとの関係である。
(D)幾何異性体
 シス、トランス異性体ともいう。二つの官能基が同じ方向にあるものをシスといい、反対方向に位置するものをトランスという。またシスをβ、トランスをαで表現する。
(E)光学異性体 (鏡像異性体)(エナンチオマー)
乳酸 炭素原子一個に結合する原子団がすべて異なる物質に乳酸がある。このように 4 つの原子団が異なる炭素原子を不斉炭素原子(キラル)という。通常 * 印をつけて区別する。不斉炭素を有する化合物は右手と左手の関係のように対掌体となり、決して重なり合わないものとなる。それはまた鏡に映したときの関係と同じであるから光学異性体または鏡像異性体(エナンチオマー)という。乳酸の場合は不斉炭素に結合している原子団をどのように入れ替えても鏡像異性体は二種類にしかならない。この光学異性体ではそれらの区別をDとLを付けて表示する。
炭素数の多い有機化合物では不斉炭素の数も多く、当然光学異性体も多くなる。複数の不斉炭素がある場合鏡像にならないものをジオステレオマーという。たとえば右手を広げて鏡に映し、中指だけを折り曲げてもそれが鏡には映らないとする。この場合左右の関係は維持しても鏡像ではない。このような異性体のうち一カ所だけ異なるものをエピマーという。光学異性体は化学的性質は全く同じであるが、旋光性(偏光面を回転する性質)のみ異なるのであり、これが生体では臭いやその他で大きな違いとなる。工業的な合成では通常異性体が等量生産され、L と D が半分ずつの混合体(ラセミ体)となるが、天然のものはなぜか一方のみしか得られない。不斉炭素の数をn とすると異性体の数は 2n となり、4 個の不斉炭素をもつ場合は 16 個の異性体が存在しうる。しかし可能性はあっても天然には数種類しか存在しない。

(3) 基(ラジカル)

各種基による化合物の分類 有機化合物の水素原子を他の原子団で置き換えると当然新しい化合物になる。炭化水素分子から水素原子を一個取り除いたものを炭化水素基という。また化合物の性質を決める原子団を官能基、置換基等という。基によって化合物の分類も可能であり、それらの例を右の表に示す。
 
※1 チオール基
チオール類(R-SH)を酸化するとジスフィルド(R-S-S-R')が得られる。
-S-S- をジスルフィド基といい、この結合をジスフィド結合という。
※2 −R
 R-O- を アルコキシ基
 CH3-O-メトキシ基
 CH3CH2-O-エトキシ基という。

(4)結合

結合反応の種類 表18-2 に示した各結合はウレタンを除いていずれも水分子がとれた縮合結合である。ペプチド結合はアミド結合の一種である。ウレタン結合はイソシアネート基と水酸基の付加反応である。

6.4.2  脂肪族化合物

(1)アルコール(ヒドロキシ基を含む化合物)

アルコールの構造アルカンの水素をヒドロキシ基(-OH 基)で置換した化合物をアルコールという。−OH 基の数によって、一価、二価、多価という分類をする。また−OH 基の結合している炭素原子に他の炭素原子が何個結合しているかで一級、二級と分類する(表19参照)。炭素数の少ない低級アルコールは水に任意の割合で溶ける。アルコールの水溶液は中性である。
エーテル 酸素原子に2個の炭化水素が結合したものをエーテルといい、 -C-O-C- の結合をエーテル結合という。たとえば同じ炭化水素基を持つエチルエーテル CH3CH2-O-CH2CH3 はエチルアルコール2 分子から水一分子がとれて生成する。この反応を縮合という。

アルコール化合物

(2)アルデヒドとケトン(カルボニル基)

アルデヒド及びケトン 分子内にカルボニル基(右図参照)を持っている化合物をカルボニル化合物という。右図のようにカルボニル基に一個の水素原子が結合し、他に炭化水素基(Rで表す)があるものをアルデヒド、二個のRがあるものをケトンという。 アルデヒド及びケトンの化合物の例を右上に示す。ホルムアルデヒドを35〜38%水に溶かしたものがホルマリン(防腐剤)である。アセトンやメチルエチルケトンは強力な溶剤となる。アルデヒドは酸化されやすく相手の物質を還元し、自らはカルボン酸になるする。一方ケトンには還元性はない。

(3)カルボン酸

カルボキシル基 カルボキシル基(カルボキシ基ともいう)−COOH をもつ有機化合物をカルボン酸という。一般式 R-COOH で表す鎖状構造のみのカルボン酸は特に脂肪酸と呼ばれる。
(A)エステル カルボン酸をアルコールと加熱するとエステルが生じる。この反応をエステル化という。
    例 RCOOH + R'OH → RCOOR′+ H2O
次項の油脂(グリセリド)はこのエステル化により作られる。エステルは一般に果実のような芳香をもつ揮発性の液体であり、天然の果実に含まれる。エステルに水を加えて加熱すると分解し、元の物質にもどる(エステルの加水分解)。この反応に塩基(たとえばNaOH)を加えると加速される。塩基によるエステルの加水分解をけん化という。結果として石鹸(脂肪酸のナトリウム塩)ができる。
    例  RCOOR′+ NaOH → RCOONa + R'OH
(B) 塩 カルボン酸は塩基と反応して塩を作る。
    例 CH3COOH + NaOH →  CH3COONa + H2O
(C) 製法  カルボン酸は一般にアルデヒドの酸化によって作られる。  
    例 ギ酸の製法  HCHO +(O)→ HCOOH
(D) 酸無水物  カルボン酸2分子から水1分子がとれて酸無水物ができる。
    例 2CH3COOH → CH3COOOCCH3 + H2O  (E) 必須脂肪酸 
脂肪族化合物

リノール酸の構造式 リノール酸(n-6 系)とαリノレン(n-3系)酸は必須脂肪酸とされている。必須とは人が合成できないので食物から得るしかないことを言う。これを摂取しないと皮膚や毛髪を健康に保てなくなるということである。また n-6 系とか n-3 系というのは下図のように左端のメチル基から数えて何番目に二重結合があるかということによる。二重結合がメチル基に近いほど活性があり、酸化されやすい。また食用油が酸敗するということは、これら飽和脂肪酸の二重結合部分の炭素は活性が大きくここが酸化されるためである。

(4) 油脂(グリセリド)

油脂油脂はグリセリンと脂肪酸のエステルである。重要な食物の一つであり、エネルギー源となる。R、R'、R" はそれぞれ炭化水素基で種々ある。油脂には脂肪と脂肪油があり、脂肪はろう状の白色固体であり、脂肪油は黄褐色の液体である。不飽和脂肪酸からなる油脂は酸化されやす脂質く、空気中に放置すると薄い膜状になる。このようなもの(リノール酸やリノレン酸)を乾性油といい、油紙や印刷用インキに用いる。飽和脂肪酸(パルミチン酸、ステアリン酸)からなる油脂(オリーブ油、椿油)は放置しても固化しないのでこれを不乾性油といい、食用に用いられる。これら中間の半乾性油(ごま油、米ぬか油)もあり、化粧品や潤滑油の原料となる。不飽和脂肪酸の多い植物油に水素を添加して飽和すると液状から固体になる。これを硬化油といい、マーガリンの製造に利用される。油脂はエステルであるから酸で加水分解すると、元の脂肪酸とグリセリンになる。

(5)リン脂質

リン脂質の構造 グリセリンの二つのヒドロキシ基(−OH)に脂肪酸二つが結合し、残りの一つにリン酸エステルが結合したものをリン脂質という。生体細胞膜の主要な構成成分である。その構造は右図のようであり、親水性と疎水性の両性質を有するので界面活性剤としての性質がある。





(6)ろう

蝋ワックスともいい、一般的には融点の低い燃える物体である。このような広義の意味を説明するとややこしくなるが、ここでは狭義の意味で説明すると、ろうは炭素数の多い飽和脂肪酸と炭素数の多い一価または二価のアルコールのエステルである。動植物体の表面に広く分布し、それらから得られる固体や液体の物質である。脂肪に比べより安定であり、空気中で変質したり、細菌に侵されたりせず、個体防御の役をなす。精製すれば白色無臭である。

(7)石鹸

石鹸油脂を水酸化ナトリウムで加熱するとけん化が起こり加水分解される。このときグリセリンと石鹸(脂肪酸ナトリウム)の混合物ができる。この混合物に NaCl を加えると乳状の石鹸が浮いてグリセリンと分離される。この現象を塩析という。通常の石鹸にはパルミチン酸ナトリウムやステアリン酸ナトリウムが用いられる。石鹸は分子内に疎水性の部分(アルキル基)と親水性の部分(Naイオン)とからなる。高級の一価アルコール(C12H25OH)を濃硫酸でエステル化しても高級アルコール洗剤(C12H25OSO3Na)が得られる。

6.4.3 芳香族炭化水素

(1) ベンゼンの構造

ベンゼンの構造 六個の炭素原子でできている六角形の環をベンゼン環またはベンゼン核という。ベンゼン核をもつ化合物は芳香性があるので芳香族化合物という。その構造式は右図Aであり、簡略化して通常Bのように描くが、この結合は二重結合と単結合の中間の様な結合であるとされ、Cのようにも描くが、意味は同じである。ベンゼン核自体は安定した化合物であるが、水素は容易に他の原子や基に置き換わり置換反応を起こしやすい。
 

(2) ベンゼンの異性体

ベンゼンの異性体 ベンゼンの水素を二個、別の基で置き換えると右図のように3 種の異性体ができる。それぞれの位置により、オルト、メタ、パラとなる。物質名の前に O−、M−、P−の記号を付けて表す。(例 O−キシレン、P−キシレン)ベンゼン核が二個接合した化合物をナフタレンといい、3 個接合した物をアントラセンという。


(3) フェノール類

フェノール類 ベンゼン環に直接ヒドロキシ基が結合した化合物をフェノール類という。右図右端の化合物にはヒドロキシ基があるが、直接ベンゼン核に結合していないのでこれはアルコールである。フェノール類の水溶液は弱酸性であり、塩基と反応して塩を作る。フェノールはコールタールに含まれているので石炭酸とも言う。

(4) 芳香族カルボン酸

芳香族カルボン酸 ベンゼン環の炭素原子にカルボキシル基が結合した化合物を芳香族カルボン酸という。化合物の例を右に示す。フタル酸には 3 種類の異性体(イソフタル酸、テレフタル酸)がある。サリチル酸に無水酢酸と共に加熱するとヒドロキシ基がエステル化され、アセチルサリチル酸が生成する。CH3CO−をアセチル基といい、この反応をアセチル化という。

(5) その他の芳香族化合物

その他の芳香族 ニトロベンゼン 
 ベンゼン環にニトロ基を導入した化合物である。ニトロベンゾールともいい、黄色油状の物質である。有毒で水に溶けない。
アニリン 
アンモニアの水素原子を炭化水素基で置換えた化合物をアミンといい、炭化水素基がベンゼン核のとき芳香族アミンという。アニリンはその代表的な化合物である。弱い塩基性でアゾ化合物あり酸と反応して塩を作る。アニリンに氷酢酸
(CH3COOH)を加えて加熱するとアミノ基の水素がアセチル基(CH3CO−)で置換されアセトアニリドが得られる。アミノ基とカルボキシル基から水がとれて縮合した−NH−CO− の形をアミド結合 といいこの結合をもつ物質をアミドという。
アゾ化合物 
これは分子中にアゾ基(−N=N−)を持つ化合物であり、ベンゼン環を持つ化合物を芳香族アゾ化合物という。一般に黄色や赤色を呈し、染料(アゾ染料)や食品の色素添加物、また分析用の指示薬となる。 

6.4.4 炭化水素(糖類)

 糖も定義の難しい言葉である。一般的にはC(HO) で表される化合物であり、炭素に水が結合した形であるから炭水化物ともいう。多くの植物に存在するがすべてが一般式にあてはまらず例外もある。(たとえば、酢酸(CH3COOH)や乳酸(CH3CHOHCOOH)は一般式に該当するが糖ではない。)糖類糖質ともいい、これは生体の三大要素を表現する語呂合わせ的言葉であり、それはタンパク質脂質、とくれば当然、糖類ではなく糖質ということになる(核酸をいれて4大要素とすることもある)。例外はあるけれどここでは一般式のうち (m、n≧4)で表されるものを糖類としておこう。グルコースやフルクトースのようにそれ以上加水分解されない糖を単糖類という。単糖類の2分子が脱水縮合したものを2糖類、単糖類が多く縮合したものを多糖類という。またオリゴ糖は単糖類が3〜6分子程度が縮合した糖類である。多糖類や二糖類やオリゴ糖は各種酵素によって加水分解され単糖類になる。

(1) 単糖類

単糖類 単糖類は1個のカルボニル基(アルデヒド基かケトン基)と数個のヒドロキシ基 を持つ化合物である。官能基で分類するとアルデヒド基をもつものをアルドース、ケトン基を持つものをケトースという。炭素数で分類するとそれが 5 個の場合をペントース、6 個の場合をヘキソースという。環員構造で分類すると酸素を含んだ6員環構造をピラノースといい、5員環構造をフラノースという。

 A.  グルコース(ブドウ糖)
単糖類の代表的なブドウ糖は動植物界に広く分布しており特に果実に多い。すべての生物のエネルギー源であり、他の糖類の構成成分でもあるので地球上で最も多く存在する有機化合物となる。ブドウ糖の工業的な製法はデンプンやセルロースを酸またはグルコアミラーゼという酵素で加水分解することで得る事ができる。グルコースの構造は下図のアルドースのように1個のアルデヒド基と5個のヒドロキシ基を持つ鎖状の構造と考えられていた。しかし実際は@とBの6員環構造であり、水溶液の時のみAのアルドースがわずか1%程度生じ、@ABの 3 種類が平衡状態で存在する。水溶液でのわずかなアルドース型によりアルデヒド基の存在のためグルコースは還元性を示す。グルコースにも当然異性体があり、環状構造においては 1〜5 までが不斉炭素である。この形において1位の炭素のヒドロキシ基と6位の炭素のヒドロキシ基が反対方向にあるものをαとし、同じ方向にあるものをβとする。この一位の炭素にもとづく異性体をアノマーという。また開環したAのアルドースを想定すると不斉炭素は2、3,4,5 の4個となる。そして5位の不斉炭素(炭素1から最も遠い不斉炭素)の-OH 基の右か左(旋光性に関係する)かでD,Lを決める。@の場合は α-D-グルコースというように呼称する。
ブドウ糖

B. フルクトース(果糖)
一個のケトン基と5個のヒドロキシ基を持つ6員環を構成するグルコースの構造異性体である。
果実や蜂蜜に含まれており、最も甘味の強い糖である。鎖式構造では安定なケトン基を有するので還元性はないようにみえるが、このケトン基はアセドアルデヒド基に変化して平衡を保もつため、やはりグルコースと同じように還元性を示す。
果糖

(2) 二糖類

 単糖類2分子のヒドロキシル基から水分を失い、縮合した形の糖類である。このような形の縮合はエーテル結合を生じ、これをグリコシド結合という。二糖類は酸または酵素により加水分解して単糖類になる。
(A)スクロース(ショ糖)
サッカロースともいい、砂糖の主成分である。サトウキビや甜菜などから得られる甘味成分である。フルクトースとα-グルコースが脱水縮合したものであり、還元性はない。スクロースを酸又は酵素(インベルターゼ)によって、果糖及びブドウ糖に加水分解したものを転化糖という。
(B)マルトース(麦芽糖)
水飴や麦芽に含まれている。麦芽の中に豊富に存在するアミラーゼをデンプンに作用させるとマルトースが生じる。このため麦芽という名がついた。α-グルコースが二分子縮合した形である。酵素マルターゼで分解される。
(C)ラクトース(乳糖)
牛乳や哺乳類、人間も含め乳汁に含まれている。ガラクトースとβ-グルコースが脱水縮合してできる。

二糖類
(3) 多糖類

(A)デンプン(澱粉)(C6105)n
デンプンは分子式(C6H10O5)n の炭水化物であり、植物の光合成によって作られ、当然植物に多く含まれる。多くのα-グルコース分子がグリコシド結合によってつながり、分子量は数万から数十万もの天然の高分子化合物である。でん粉には葡萄糖(α-グルコース)が6分子で一周の螺旋を巻きながら、直鎖状(直線状)に 200〜300 個つながったアミロース(分子量は数万)と、数千の葡萄糖が直鎖状につながりさらに枝分かれをもつアミロペクチン(分子量は数十万)がある。澱粉はアミロースがアミロペクチンに包まれた状態になっており、これらは酸または酵素により加水分解されて二糖類を経て単糖になる。普通の米にはアミロペクチンは 70〜80 %、であるが、もち米はアミロペクチンが 100 %であり、この差がねばりの違いを生み出している。
(B)セルロース(C6105)n
 澱粉と分子式は同じであるが、こちらはβ-グルコースがグリコシド結合によって縮合した高分子化合物であり、分子量は百万から数千万になる。グルコースが直鎖状につながった天然の高分子であり、植物の細胞壁の主成分である。水や有機溶剤には溶けず、人間には分解酵素がないため消化できない。シロアリや馬がセルロースを分解するのは消化管に分解酵素をもつ微生物が存在するからである。セルロースはそのままでも紙や繊維として利用できるが、化学的操作により爆薬(ニトロセルロース)やフィルムやレーヨン(酢酸セルロース)の原料として利用される。
(C) セルロースの再生
セルロースは綿花や木材から繊維や紙として利用されるが、天然のままの利用だけでなく、化学的に処理して利用される。硝酸エステル(ニトロセルロース)にすれば爆薬となり、また酢酸エステル(酢酸セルロース)にすればフィルムやレーヨン、アセテートなどの繊維として再生使用される。

6.4.5 アミノ酸

アミノ酸 アミノ酸とは分子内にアミノ基とカルボキシル基を有するものをいう。故に酸と塩基の性質を示す両性化合物であり、水に溶けやすい。これら二つの基が同じ炭素原子に結合したものを特にα-アミノ酸といい、タンパク質を構成する成分である。α-アミノ酸を単にアミノ酸という。右の表の中で赤字の名称は人が体内で合成できないため食物から摂取しなければならないアミノ酸であり、これを必須アミノ酸といい八種ある。(ヒスチジンとアルギニンは幼児には必須である)
α-アミノ酸には不斉炭素があり、光学異性体が存在する。それらはD型とL型に別れるが、天然にはほとんどL型しか存在しない。たんぱく質を構成するのは、このL型のみである。しかし人工的に合成するとL型とD型が等量混じったもの(ラセミ体)ができる。したがって化学的に合成するとラセミ体になるのでこれからL型だけを選別しなければならない。現在は酵素を利用したバイオリアクアミノ酸の光学異性体ターを通して効率よく分離している。最近アミノ酸は健康のための補助食品としてブームを引き起こしており、盛んに新製品が販売されている。しかし通常の食生活をしていれば不足することはない。アミノ酸は一個の炭素にアミノ基とカルボキシル基と水素とさらに側鎖Rがつく構造であり、アミノ酸の性質はこの側鎖の性質で決まる。Rが親水性であるか疎水性であるかにより大きく異なってくる。アミノ酸にニンヒドリンの薄い溶液を加えて加熱すると青紫〜赤紫色を呈する(ニンヒドリン反応)。

6.4.6 たんぱく質

ポリペプチド結合  一つのアミノ酸のアミノ基と別のアミノ酸のカルボキシル基から水分子がとれて生じるアミノ結合(-CO-NH-)をペプチド結合という。つまりアミノ酸どうしの結合がペプチド結合である。アミノ酸が連続してつながり、それが 50 以下のものをペプチドといい、50 程度以上の高分子をポリペプチド(タンパク質)という。タンパク質には分子量が 1 万から数百万まである。分子内にアミノ酸とカルボキシル基をもつ化合物は数多く存在するが、生体に使用されるのはわずか前頁の表に示した天然の L-αアミノ酸 20 種のみである。20 種類とはいえその組み合わせは無限に近い。故に一口にたんぱく質といっても多くの物質の総称に過ぎない。タンパク質には絹、羊毛、筋肉、皮膚、血液、爪、コラーゲン、ホルモン、酵素、ヘモグロビンなどがあり、動植物が作る毒物さえ含まれる。

(1) 一次構造

タンパク質一次構造 アミノ酸が多く繋がったペプチドの両端は右図のように一方はアミノ酸であり、もう一方はカルボキシル基である。たんぱく質で何番目のアミノ酸という場合、アミノ酸側(N端末)から数える。このN端末からC端末に向かって並ぶアミノ酸配列順序をたんぱく質の一次構造という。このたんぱく質の一次構造はたんぱく質により決まっているが、たんぱく質がその機能を発揮するには次のような高次構造による。

(2) 二次構造

  これはペプチド鎖が平面的に並び、その並び方はN端末が同じ側になる並行型と、N端末とC端末が同じ側になる逆平行型との二つがある。これらは二本または三本のこともあり、いずれの場合も安定な水素結合をし、このような構造をβ構造(またはβシート構造)という。また一本のポリペプチド分子が規則正しく螺旋状に巻いた状態になり、やはり水素結合をする。こような螺旋をαヘリックスという。

(3) 三次構造

  これらの二次構造がさらに全体として折りたたまれて特定の立体構造をとる場合、それを三次構造という。
三次構造を有する複数のタンパク質が複数個集まった状態を四次構造という。このように集まるたんぱく質の集合をサブユニットという。これらの二次、三次、四次構造を纏めて高次構造という。
タンパク質分子は小さなものから大きなものまであり、形は繊維状と球状に分けられる。繊維状は毛髪や爪などを構成し当然水には溶けない。球状は酵素やホルモンなどを構成し水に溶けやすい。
加水分解して、アミノ酸だけが生ずるタンパク質を単純タンパク質といい、糖類や燐酸などを一緒に生じるものを複合たんぱくという。栄養としてのタンパク質は胃の中で酵素により分解され、最終的にα-アミノ酸に分解され吸収される。

6.4.7 合成繊維

 有機物の構造体や繊維などに使用される耐久性のある固体は分子量の小さい単量体(モノマー)の連続結合したものである。これは天然であろうと人工であろうと変わらない。そしてこれら単量体が結合する方式には付加重合と縮重合とがある。
付加重合(A)付加重合 右の式で  Z が H ならポリエチレンであり、CH3 ならポ リプロピレン、 Cl なら塩化ビニルである。
(B)縮合重合 複数の化合物の分子内から水などが取れて結合(縮合)を繰り返し、それがつながって高分子を生成する反応である。例としてポリエステル繊維の例をあげる。フタル酸にエチレングリコールが反応し、水分子がとれてエステルができる。
    nCOOH-Rh-COOH + nOH(CH2)2-OH → (-COOH-Rh-COO-(CH2)2-O-)n + nH2O
得られる分子量は一定しないので、これらの物質は異なる分子量の混合物である。
(1)ビニロン
ポリビニルアルコール日本で作られた最初の合成繊維である。反応式は右のようである。
(2)ナイロン66 アジピン酸 HOOC(CH2)4COOH とヘキサメチレンジアミン H2N(CH2)6NH2 の重縮 合によって得られる。アミド結合によるポリアミド系合成繊維であり、構造式は 表 24 のとおりである。
(3)アラミド繊維 テレフタル酸ジクロリドとp−フェニレンジアミンが縮合して出来る。
ケブラー繊維
 (4)ポリエステル 2価アルコールとジカルボン酸がエステル結合によってできる高分子をポリエステ ルという。テレフタール酸(COOHC6H6COOH)とエチレングリコールから下表のポリエチレンテレフ タレート(ポリエステル繊維)が生成する。

合成繊維一覧

6.4.8  合成樹脂

天然に存在する樹脂様のものにはロジン(松ヤニ)や天然ゴム、アスフェルトなどがある。天然ゴムを加硫して得られたエボナイト(1851年)が最初の合成樹脂であり、絶縁体として利用された。ついでニトロセルロースと樟脳から得られたセルロイド(1868年)が作られたが、これらは天然物を利用した半合成である。
真に合成樹脂といわれるものは 1907 年に開発されたフェノール樹脂であり、ついでユリア樹脂やその他の汎用樹脂が表れる。ナイロン(1935年)が石炭と水と空気から作られた絹より強い繊維と宣伝されたように、当時は石炭が用いられたが、それが石油に変わることで、1950年 以降は生産量が拡大する。
そして合成樹脂は熱可塑性と熱硬化性とに大別される。熱可塑性とは熱を加えると軟化し流動状態になる。これらはペレット状にして鋳型による成形や押出し成形ができるのでリサイクルが可能である。熱可塑性の各種ポリマーは相溶性のあるものどうしを混合して、物理的や化学的処理により合金のようにすることもできる。これには非常に多くの種類があり、これをポリマーアロイと呼んでいる。
一方熱硬化性樹脂とは熱を加えても軟化しない。一旦化学反応を起こした後は熱を加えても柔らかくすることはできない。といっても熱を加えれば硬さは減少する。熱可塑性のように流動化はしないということである。もっと高温にすればついには熱分解し、これは熱可塑性も同じである。
熱硬化性樹脂は重合度の低い液状または粉末状で鋳型に入れ硬化させることになる。硬化後は熱を加えても軟化しないので再利用は不可能である。原料の形態として粉末、液状、ペースト状で供給され、ユーザーサイドで加工することもできる。これには接着剤も含まれる。

1.熱硬化性樹脂

(1)フェノール樹脂
フェノール樹脂フェノール類(キシレノール、クレゾール等)とアルデヒド類との付加縮合反応により得られる樹脂で、合成の際に使用する触媒により2種類の合成品が得られる。右図のようにアルカリ触媒でレゾールが、酸触媒でノボラックが得られる。成型品は褐色の色となる。耐熱性、電気絶縁性、機械的強度に優れ、寸法安定性や難燃性もある。アルカリに弱く,濃い苛性ソーダで煮沸すると分解してしまう。しかし多くのプラスチックが開発されてもこの樹脂特有の性能故に、他に変えられない用途が存在する。

(2)ユリア樹脂
尿素樹脂ユリア樹脂(尿素樹脂)は尿素とホルムアルデヒドとの付加縮合重合により得られる熱硬化性樹脂である。無色透明のため着色しやすい。表面硬度はあるが、衝撃に弱い。

(3)メラミン樹脂
尿素を脱水するとメラミンが得られるが、これとホルムアルデヒドを縮合重合させるとメラミン樹脂となる。硬度や耐衝撃性、耐水、耐熱性があり、尿素樹脂より優れている特性が多い。尿素樹脂やメラミン樹脂のようにアミノ基とホルムアルデヒドの縮合重合からなる合成樹脂をアミノ樹脂とも言う。

(4)シリコーン樹脂
シリコーン樹脂シリコーンは有機珪素化合物の総称であり、シリコンは元素名(Si)であるとされているが、混同して使用されているようである。炭素と同じく珪素の原子価も4であり、多くの有機物を作る。熱硬化性樹脂に分類されているが、この樹脂の種類の多さからすれば、分類してもあまり意味がないようである。シリコーン樹脂の原料はシラン(SiH4)から誘導されるメチルシラン(CH3SiH3)、ビニルシラン(CH2CHSiH3)、フェニルシラン(C6H5SiH3)、クロロトリメチルシラン(ClSi(CH3))等を原料としてシロキサン結合を骨格とした重合体を作る。右上の図における R1 及び R2 がメチル基、フェニル基、アミノ基など様々な有機基に置き換わることで、樹脂やオイル、グリース、消泡剤、離型剤、ゴム、シラン類になる。

(5)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂にも多くの種類があり、代表的なものはビスフェノールAとエピクロルヒドリンとの反応による熱硬化性の型の樹脂を指す。構造は右図のようであり、エポキシ基が反応性を,水酸基(OH-)が接着性を示す。エポキシ樹脂はその分子量によって液状から固体まで多種多様のものがあり、多くは硬化剤の種類により常温硬化から加熱硬化があり、それぞれに性能も異なる。用途も構造用接着剤、塗料、プリント基板、コンポジット等多彩である。

エポキシ樹脂

(6)不飽和ポリエステル樹脂
単にポリエステル樹脂ということもある。無水マレイン酸やフマル酸(不飽和二塩基酸)とグリコール(2価以上のアルコール)の重縮合反応により得られるポリエステルを、希釈剤と架橋剤の役をするスチレンやメチルメタクリレートに溶解したものを加熱硬化させる樹脂である。主にガラス繊維などを補強材とするFRPに用いられる。硬化剤には過酸化ベンゾイル(BPO)やメチルエチルケトンパーオキサイド(MEKPO)を用いるが、配合比は小さくその添加量により、硬化速度が大きく左右される。
(7) アルキド樹脂
グリセリンと無水フタル酸から合成されるので不飽和ポリエステルに属するが、アルコールのalと酸のcidを合わせてアルキッド樹脂という。一般的には多塩基酸と多価アルコールとの縮合であるから脂肪油や脂肪酸が原料となる。当初は接着剤に利用されたに過ぎないが、エナメル電線被膜や一般塗料として耐候性の良さが見直され使用量が増大する。

(8) ウレタン樹脂
ポリウレタン樹脂文字通りウレタン結合を有するからこの名がある。イソシアネート基とポリオール(水酸基)を縮合してできる。これには熱硬化型と熱可塑性とがあり、右の図における R′や R″の大きさ及び官能基の数により、多種多様のものが得られる。

2. 汎用熱可塑性樹脂

オレフィン系樹脂
オレフィンとは化学式 CnH2nで表される化合物で、脂肪族不飽和炭化水素の一種である。二重結合を一つ有するアルケン (alkene)であり、エチレン系炭化水素またはオレフィン系炭化水素ともいう。おなじみのポリエチレンやポリプロピレンであり、プラスチックの中で最大の生産量を誇る。
オレフィンであるから炭素数が増えればポリブテン、さらにはポリペンテン(ポリメチルペンテン)となり、あまり聞き慣れないけれど現実に存在する。

(1) ポリエチレン樹脂(PE)
  エチレンの重合によってできる直鎖状の高分子である。その分子構造内の側鎖の形状によって分類が可能 であり、重合法によって平均分子量や分枝数、結晶性が異なりそれにより当然 特性にも差が生じる。
高密度ポリエチレン (HDPE) 比重 0.94〜0.96、耐熱性 130 ℃ PE のなかで最も硬い。
スーパーのレジ袋、テープ類、網類、コンテナ、ボトル・タンク(灯油のポリタンク)など。
低密度ポリエチレン (LDPE) 高圧で作るから高圧法PEともいい、また軟質PEとも言う。
 分子がランダムに枝分かれするから密度が低くなる。比重 0.91〜0.92、耐熱性は 100℃
 エアキャップ(プチプチ)、ガス管、輸液袋、フィルムなどに使用。
超高分子量ポリエチレン (UHMW-PE) 比重 0.92〜0.94、 通常の分子量は 2〜30万が300〜700万 に増加 、スーパーエンプラに分類される。 耐摩耗性を利用した機械類の摺動部品、フィルム。
直鎖低密度ポリエチレン  (LLDPE) 低密度ポリエチレンの丈夫さと高密度ポリエチレンの剛性を兼ねた  性質がある。若干量のαオレフィン(αとは二重結合が末端にあるものを指す)との共重合品であ る。リニアポリエ チレンとも言う。 比重:0.91〜0.925
架橋ポリエチレン(XLPE) 高密度ポリエチレン内の分子が熱水や触媒、放射線等により部分的に網掛 け 構造になる超高分子体である。高密度ポリエチレンに比べ丈夫で硬く化学薬品には耐性になる が、架橋のためにリ サイクルは難しい。屋内の温水配管、発泡体などに利用。

(2) ポリプロピレン樹脂(PP)
プロピレンを重合させたポリマーであり、これも重合法により分子量が異なる。プラスチックの中で第一位の生産量(約 300 万ton/年、国内)である。耐熱温度が 130〜165 ℃ と、熱可塑性プラスチックの中では高く、比重も 0.90〜0.91 で軽い。機械強度にも優れており、表面は硬く、摩擦に対しても強い。
酸、アルカリにも強く、加工性がよい。射出成形、押出成形、ブロー成形、コーティングなど様々な加工が可能であり、それに応じた多くの用途がある。自動車部品、家電部品、家庭用雑貨、合成紙、食品/医療品包装フィルム、コンテナ等である。融点は 160〜170 ℃ である。

(3) ポリブテン樹脂(PB)
ポリブテン樹脂ポリブテンは、ポリエチレンや、ポリプロピレンと同 じポリオレフィン系の樹脂であり、ブテン−1を原料とし、側鎖にエチル基がある。分子量が120〜130万と大きいが柔軟性があり、住宅その他の温冷水の配管に用い、塩ビ管と違って自由に曲げることができる。耐衝撃性、耐クリープ性、耐ストレスクラック性がある。

(4) ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)
PVCはPE、PP、PS と並んで4大汎用樹脂※1 の一つで生産量が多い。塩化ビニルモノマーを付加重合させることで得られる。この樹脂だけでは、硬くて脆く、紫外線にも弱いので、可塑剤や安定剤、着色剤等を加える。カレンダー、押出、射出などの成形加工法によって製造される。低温での衝撃強度が小さいので、他の樹脂をブレンドして耐衝撃性を向上させる。透明で硬質だが、可塑剤を加えることにより軟質にすることができる。比重は1.4で比較的大きく、塩素を含むため難燃性であるが、これが焼却後の塩素ガスが廃棄を困難にする。
※1 三大とか五大とかもいうが、実際の生産量は次のとうりである。PE:324万トン、PP:291万トン、PS(AS,        ABS を含む):182万トン、PVC:215万トン、PET:72万トンである。

(5) ポリスチレン樹脂(PS)
スチレン通常のポリスチレン樹脂(スチロール樹脂)は過酸化ベンゾイルを重合開始剤※2としてスチレンの付加重合により得られる。無色透明であるが耐衝撃性や耐薬品性に弱い。これを改良するために合成ゴムやゴムラテックス等を添加したものは高衝撃PSとなるが、透明性は失われ、剛性も低下する。射出成形が主で家電製品が多い。他の用途は発泡スチロール(包装、緩衝、断熱材等)である。
※2 時に触媒という意味で使用されるが、触媒自身は反応しない。重合開始剤は基(ラジカル)を発生し、自らもポリマーの一部となる。重合開始剤という言葉では長ったらしいので、省略の意味で触媒ということがある。

(6) アクリロニトリルスチレン(AS)
アクリロニトリルアクリロニトリル とスチレンの共重合化合物である。ASは原料の頭文字であり、ポリスチレン樹脂の透明性及び寸法安定性に加え、耐薬品性や耐衝撃性が優れている。

(7) アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS)
 原料名を連ねた長い名前であり、アクリロニトリルとブタジエンとスチレンの共重合体である。
強靭性、寸法安定性、加工性、メッキ性、塗装性などに優れており車両、民生機器、工業用機器、高級雑貨などの分野に幅広く用いらる。

(8)メタクリル樹脂(PMMA)
メタクリル酸メチル  通称はアクリル樹脂であり、この方が分かりやすい。メタクリル酸エステルのポリマーの総称がメタクリル樹脂である。通常はメタクリル酸メチルが主成分である。終戦直後から生産された歴史のある樹脂であり、その透明度は他にない。耐候性に優れているが、有機溶剤に溶ける。注型成形が出来る。

(9) ポリビニルアルコール(PVA)
アセトアルデヒド  通称ポバールとも言う。PVAの構造式(表26)はビニルアルコールの重合体であるが、ビニルアルコールにモノマーは存在しない。右図のように異性体であるアセトアルデヒドに移行するからであり、実際の製造は酢酸ビニルを重合し、ポリ酢酸ビニルをけん化 することで得られる。任意の割合で水に溶解する樹脂であり、接着剤やバインダー、界面活性剤に使用される。耐溶剤性であり、皮膜形成性があり、耐候性、ガスバリア性、防曇性、透明性を生かしたフィルムとしても利用される。

(10) ポリエチレンテレフタレート(PET)
ポリエチレンテレフタレート(PET)その頭文字から通称ペット(PET)と呼ばれる。右図のようにエチレングリコールとテレフタル酸の脱水縮合によりエステル結合が作られる。繊維関係でポリエステルという場合はこの樹脂を指す。 プラスチック一覧
熱可塑性プラスチック一覧
熱硬化性樹脂

6.3.9  ゴム

イソプレンゴムは不思議な物質である。驚異的に低い弾性率は他の材料に見ることができない。ゴムの木から取れるゴム成分は右図のようにシス型のポリイソプレンの重合体である。ゴム質を有する植物はゴムの木だけでなく、他に500種もあるといわれている。たとえばタンポポの茎を折ると白い液体がにじみ出るが、これにもゴム質が含まれている。ただ量が少ないために利用価値がないだけである。1493 年にコロンブスがゴムに遭遇するが、それから346年後(1839年)にグッドイヤーがゴムの加硫法を発見するまでゴムの有効利用はほとんどなかった。自動車が発明され、タイヤに使用されるようになり、ゴムの使用量は急拡大し、現在は様々な合成ゴムが生産されている。それでも天然ゴムは総合性能において合成ゴムを上回っている。そして多くの材料が合成品に置き換わっている中で天然ゴムは未だ主流をなしており、ゴム全体(天然+合成)の約40%を占めている。
(1)天然ゴム  ゴムの木から得られる白い液体(ラテックス)のゴム成分は約35%である。これに酸を加えると凝固して生ゴムとなる。このままだと冬は硬く夏はベトベトするので使い物にならない。
これに硫黄を数%加えて加熱すると性能が向上し弾性のあるゴムになる。これを加硫という。ポリイソプレンの二重結合の一部が硫黄原子でつながり架橋構造になるためである。硫黄をもっと増やして数十%にすると架橋はさらに増し弾性がなくなる。これをエボナイトという。ゴムにはゴム成分以外にカーボンその他の添加剤が種々加えられて性能が改善される。
(2)合成ゴム 合成ゴムが発明されたのは1814年ドイツでのメチルゴムが最初である。性能が悪く現在は生産していない。当時英国が東南アジアを植民地とし、世界のゴムを独占していた。世界大戦によりゴムの入手が難しくなるとドイツや米国は合成ゴムを開発する。ついに1934年米国デュポン社からクロロプレンゴムが、ドイツではSBRやNBRが、そして翌年ソ連でブタジエンゴムが開発された。最初から天然ゴム(イソプレン)をまねて作るという夢が実現したのは1954年である。合成ゴムの種類も数多いが、表28に代表的なものを示す。

合成ゴム

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