第六章 目次 6.1 空気 6.2 水 6.3 元素単体と無機化合物 6.4 有機化合物
コーヒータイム(6)プラシーボ コーヒータイム(7)宗教と教義 執筆後記(第六章)
目次(頁内) 6.3.1 元素の概要 6.3.2 鉄鋼材料 6.3.3 非鉄金属材料 6.3.4 無機化合物 6.3.5 セラミックス
元素の周期表には人工も含めて 111 の元素が記載されているが、天然のものに限れば 92 元素である。第二章 3 節.3 で述べたように存在量のほとんどない元素や利用されない元素を除けば
77 元素である。このうち金属元素は 62 種であり、非金属元素は15種である(表 9 から He 以下の希ガス元素6種、表 10 から原子番号
69、71 を除く)。これらの元素が様々に組み合わされて数え切れない物質を構成している。原子核の構造は 図 5 のように陽子と中性子が殻となり、その外側を電子が回っている構造である。原子核の大きさは種類により異なるが、おおよそ10−10 mである。原子の大きさは電子の軌道で決まるのであり、その大きさはおおよそ10-15 である。原子核をパチンコ玉の大きさ(1cm)とすると原子の大きさは 1000 m となる。故に原子自体は隙間だらけの構造体である。電子核のエネルギーは原子核に近いほど小さいのでK殻から順に埋まっていく。そして最外殻の電子はエネルギーが高く、化学結合で重要な役割を果たす。
このように結合に関与する最外殻の電子を価電子という。各元素の電子配置は 表 2.6 (45頁) に示した。希ガス原素(18属元素)の価電子は
Heが2、Neが8であり、このように数が満たされた電子殻を閉殻という。他の 18 属元素も最外殻が 8 個と安定した電子配置であり、価電子は零である。故に18属元素は化合物を作らず、単原子分子で存在する。最外殻に一個や二個の電子を有するアルカリ金属(1属)やアルカリ土類金属(2属)はその電子を放出しやすく、+イオンになりやすい。また最外殻が7個のハロゲン属は電子一個を受け入れて安定するので、−イオンになりやすい。原子番号が大きくなり複雑になると、遷移金属のように、原子番号が増えても、最外殻で増えず内側で増える。電子の放出や受け入れも複雑になり、結合する様式も複雑になる。炭素原子は最外殻の電子が4個であり、化学結合の中でもっとも強い共有結合の化合物を作る。
同素体: 同じ元素どうしが結合して、異種の物質のような性質を示す物質を同素体という。非金属元素の中で同位体のある元素は次に述べる 7 種である。その中で金属ヒ素とか金属セレンなどという言葉があるけれど、これは金属を意味しているわけではない。「金属のような」という意味であるが、誤解をまねく言葉である。それを避けて「金属態ヒ素」のように言う場合もある。
O(酸素):1. 酸素 O2 空気中の通常の気体。 2. オゾン O3 酸化力の強い有毒気体。
S(硫黄):1. 単斜硫黄 環状分子 S8 :溶融した硫黄を放置して冷却するとできる。
淡黄色、針状結晶、CS2 に可溶。
2. 斜方硫黄 環状分子 S8 :CS2 に溶かして再結晶で得る。黄色、塊状結晶、CS2 に可溶。
3. 無定型硫黄 鎖状分子 Sγ :溶融した硫黄を水中で急冷して得る。暗褐色 ゴム状固体 、
CS2 に不溶。
C(炭素):1. ダイヤモンド 八面体結晶 絶縁体:試薬に安定、空気中で高温で燃える。
物質中最も硬い。
2. グラファイト 無定型炭素 電導体:石墨 or 黒鉛、天然にも産するが、無煙炭粉やコークス
粉を電気 炉で数十時間白熱して作る。試薬に安定だが、高温で徐々に燃える。
3. フラーレン C60 、サッカーボール状 絶縁体
4. カーボンナノチューブ 筒状結晶
P(燐): 1. 黄燐 半透明黄色ろう状固体 猛毒 空気中で発火 融点 44 ℃ 発火点 60℃ CS2 に溶解。
2. 赤燐 赤紫色の結晶、無毒、空気中で発火なし 融点 590 ℃ 発火点 260 ℃ 溶媒に溶けない。
As (ヒ素): 1. 金属態ヒ素(灰色) 2. 無定型固体(黒色) 3. 透明ろう状結晶(黄色)
Se(セレン):1. 灰色金属状(ラセン構造) 2. 黒色ガラス状 3. 赤色結晶状
4. 赤色無定型
Te(テルル): 1. 金属態テルル(銀白色結晶) 2. アモルファステルル(無定型、灰色の粉末)
元素の種類の数としては8割を占める金属であるが、それらに共通している性質がある。
1. 常温で結晶である(例外:水銀) 。 2. 特有の金属光沢がある 3. 熱や電気の良導体である。
4. 展性や延性があり加工ができる。 5. 多くは陽イオンとして化学反応する。 6. 酸素と化合して多くは塩基性酸化物を作る。(例外:AlやZn、Wなどのように両性酸化物を作るものがある)。
金属の結晶構造は 第二章 3 節 2. で述べたように 1. 体心立方構造 2. 面心立方構造 3. 最密六方構造 の
3 種がある。またLi(リチウム)は最も軽い(比重:0.53)金属であり、Os(オスミウム)は最も重い(比重:22.5)金属である。比重が 5
以下を 軽金属といい、5 以上を重金属という。非金属固体はすべてが軽く、最も重いヨウ素(I)でも比重は 4.9 である。軽金属は融点が低く 700
℃ 以下であるが、重金属は一般に融点が高く、1000 ℃ 以上である。しかし何事にも例外はあり、Hg は −39 ℃ で常温で液体であり、Pb
は重金属であるが融点は 327 ℃ である。気体の多い非金属の場合は、C(炭素)の融点は 4100 ℃、B(ホウ素)の融点は 2200 ℃ である。金属でW(タングステン)は最も融点が高く、3410
℃ である。

ヒ素(As)
As は古くから知られた元素であり、毒殺に使われた物質として有名である。比較的地殻に存在量が多く、火山の近くでは鶏冠(けいかん)石(せき)(As4S4)が比較的簡単に入手可能である。これを焼くと無水亜比酸 As2O3 となり、温水に溶かすと亜比酸 As(OH)3になる。これが猛毒である。しかし少量なら逆に医薬品となり、古くから使われ現在も続いている。亜比酸は液晶ガラスに多く使用され、GaAs は半導体素材,発光ダイオード に使われる。過去には森永ヒ素ミルク事件、和歌山ヒ素カレー事件などがあり、話題に事欠かない。亜比酸は無味無臭だから,殺人の道具としては好都合だが、髪の毛や爪に残留し、それは簡単に検出できるのでヒ素は「愚者の毒」とも言われる。ヒ素の毒性は 3 価にあって、5 価の有機化合物(例:アルセノベタイン As+(CH3)CH3COO- )は無毒である。最近では海産物の「ひじき」に無機のヒ素化合物が多く含まれているとして、英食品規格庁が「ひじき」を控えるよう勧告した。これも食べる量の問題であり、常識的範囲なら殆ど問題はない。物質の毒性は、そのイオンの状態で左右され、As単体では無毒である。炭素や窒素に毒性はなくても、これがシアン化合物(CN)になれば途端に危険な物質となるように、物質はすべてその形態により毒性が決まる。
鉄を作るには磁鉄鉱や石鉄鉱から酸素を取り除く(還元する)事になる。そのための還元剤としてコークスを用いる。コークスは石炭を粉砕して大きさを揃えコークス炉で 1200 ℃ で 20 時間ほど蒸し焼き(乾留)するとできる。コークスの役目は還元作用だけでなく、炉内に隙間を作りガスや溶けた鉄が流れる通路を造る重要なものである。故に硬さと強さ、強粘結性があること、灰分、水分、硫黄分が少ないことが要求される。原料の鉱石も大きさを揃えるために、粉砕や造粒される。これらの鉱石とコークスと石灰石の三つを高炉へ交互に層を作るように投入し、下から1200 ℃ の熱風と微粉炭を吹き込む。これによりコークスが燃焼し水素や CO が発生する。これらのガスが上昇すると内部は 1500 ℃ 以上になり鉄鉱石は溶けて流下し、同時に酸素を奪われ(還元)、約8時間かけて炉底にたまる。これが炭素分が約 4.5 % 程度になった銑鉄であり、さらに石灰石によりシリカやアルミナなどの不純物がスラグとなったものが浮く。これらは分離されて銑鉄は混銑車(ドーピードカー)という特別な貨車に入れ転炉に送られるのであるが、その前に珪素、燐、硫黄などを除く溶銑予備処理がなされる。分別されたスラグはセメント材料として再利用される。転炉では高圧の酸素を吹き込み、炭素やその他不純物を酸化させて取り除き、銑鉄を鋼に作り替える。転炉が終了して、産出された溶鋼を、高級鋼とするためにはさらに硫黄などを取り除いたり合金元素添加など成分を微調整する二次精錬が行われる。こうして作られた鋼は、次の工程でスラブやブルームの半製品になる。
鉄鋼材料は多岐にわたっておりその名前も様々である。分類法も同じ材料が別の名前になっていたりする。炭素を0.02〜2.0 % 含むものを炭素鋼(普通鋼)といい、2.0〜4.0
% を鋳鉄という。炭素成分が多いから炭素鋼というのかというとそうではない。なぜかわからないが、用途により、性能により、成分により呼称がつけられ、統一されていないから、はなはだ分かりずらい。まずそれらを列挙してみよう。
1 成分による分類:炭素鋼(低、中、高 がある)、合金鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデ ン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、マンガン鋼。
2. 性質による分類:ステンレス鋼、マンガン鋼、電磁鋼、耐候性鋼、耐海水鋼、耐サワー鋼、耐火鋼、耐熱鋼、低温用鋼、非磁性鋼、非磁効性鋼、快削鋼、窒化鋼、肌焼鋼、強靭鋼。
3. 用途からの分類:一般構造用鋼、建築用構造用鋼、自動車用鋼板、配管用鋼管、油井用鋼管、刃物鋼、工具鋼〔炭素工具鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼(ハイス)〕、合金工具鋼、ばね鋼、軸受鋼、ピアノ線。
呼称がまちまちとはいえ、鉄鋼の JIS 材料記号名称には原則があり、次のようになっている。
SUP6 を例にとると、最初の文字は材質を表し英語またはローマ字の頭文字、または元素記号である。SはSteel(鋼)であり、Fの場合は Ferrum(鉄)である。(ただし、SiMn:シリコンマンガン、MCr
金属クロムなどは例外で、これも合金鉄である)
2 番目の文字 UP は英語またはローマ字の頭文字で次のように製品の形状や種類、用途を表す記号である。
P:Plate(薄板)、 T:Tube(管)、K:Kogu(工具)、U:Use(特殊用途)、C:Casting(鋳物)、
F:Forging(鍛造)、W:Wire(線材、線)、
ただし構造用合金鋼は SNC (ニッケルクロム鋼)のように添加元素の符号を付ける。
最後の3番目は材料の種類番号、最低引張強さ又は耐力を示す。例外が多く統一的説明は不可能である。
個別に調べるしかない。表11の鋼材の種類と用途に一部記載するが、さらなる形状や製造方法を3番目以降に続けて表示する。

鉄に炭素が含有する場合、Fe3C(炭化鉄、セメンタイト)の形で存在し、これは硬くてもろい。炭素鋼はこのセメンタイトと鉄の混合物であり、Cの含有量が多いほど鋼は硬くなる。従って炭素が
2 % 以上の鋳鉄はたたくと割れるほどもろいが、融点が低いので鋳物に利用される。さらに他の元素を加えることで様々な性質を与えることが出来る。合金の特徴は熱処理の仕方によりその性質を様々に改善できることである。
高温の状態から水や油で急冷すると硬度を増すことを「焼き入れ」という。焼き入れ後ジュラルミンのように時間が経つにつれ硬度が増すことを「時効硬化」という。また焼き入れ後適当な温度に数時間保つと硬度が下がり、靭性(じんせい)が増すがこの処理を「焼き戻し」という。また合金を冷間圧延や引抜きなどの加工を冷間で行うとそれによる歪みが増大し材料が硬化する現象があり、これを「加工硬化」という。この加工硬化による内部歪みは、適当な温度に数時間保つと柔らかくなり、次の加工が容易になる。この熱処理を「焼鈍または焼きならし」という。鋼の性質を改善するために添加する元素は次のようなものである。
Mn: 靭性、耐摩耗性、耐食性 。 Si :耐熱性、限度を超えるともろくなる。
Ni、Cr: 粘り、強度、耐熱性、耐食性 。 Mo:粘り、高温強度、硬度。 W: 高温強度、硬度 。
V:硬度、強度、他の元素と組み合わせ 。 Co:粘り、耐熱、耐食、他の元素と組み合わせ。
Cu:耐海水性 。 Nb:粘り 。 B:硬度(微量使用) 。 Al:表面硬化 。
鋼の欠点は錆びやすい事である。しかし錆は水と酸素の両方がなければ錆びることはない。水中でも酸素が全くなければ錆は発生しない。その化学反応は次のようになり、赤褐色の赤さびが発生する。
4 Fe + 2 H2O + 3O2 → 2 Fe2O3・H2O
ステンレス鋼
鉄に Cr を入れると耐食性が増す。当然含有量が多いほど耐食性が増し、12 % 以上を含む合金をステンレスという。さらに Ni を追加することで耐食性が向上する。代表的な配合は
3 種あり、
1. Cr が 13 % の 13 クロムステンレス(マルテンサイト系、SUS 410、強磁性)
2. Cr を 18 % 含む 18 クロムステンレス(フェライト系、SUS 430、 強磁性)
3. Cr を 18 % と Ni を 8 % 含む 18 Cr-8 Ni ステンレス(オーステナイト系、SUS 304、非磁性)
である。ステンレスが耐食性を示すのは厚さが 1〜3 ナノ m の不動態膜ができて内部を保護するためで、これは破れてもすぐに回復する。これは Cr
に酸素と水酸基が作用してできる水和オキシ水酸化クロムなる化合物とされている。ただし Cl− には弱く食塩、次亜塩素酸ソーダなどの塩素系の漂白剤などでは錆が発生する。
トタンとブリキ
錆を防ぐ方法として、塗装、樹脂コーティングがあり、効果が大きいのがメッキである。鉄板に亜鉛をメッキしたのがトタンであり、これの製法には亜鉛を溶融し鋼板を浸して作る方法と電気メッキの方法とがある。溶融メッキの方法は皮膜を厚くすることができ、また大型の鉄材にも適用できる。鉄板に錫を電気メッキしたのがブリキである。電気メッキは均一にきれいな仕上がりになる。トタンはイオン化傾向により鉄を守るが、ブリキは緻密な膜で鉄を水や酸素との接触を防ぎさびの発生を止めている。
ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板とは、アルミニウム・亜鉛合金めっき鋼板のことであり耐食性、耐熱性、加工性などに優れている。この鋼板のめっき組成は、アルミニウム
55 %、亜鉛 43.4 %、シリコン 1.6 % からなり、耐食性、加工性、耐熱性、熱反射性などのアルミニウムの特質と、亜鉛が鉄の溶解を防止する犠牲防食作用と鋼板から錆を守る被膜保護作用で優れた耐久性を発揮する。トタン板の
3〜6 倍以上の耐久力があるとされている。この鋼板のメッキ層はアルミニウムが多く含まれているアルミリッチ層と、亜鉛が多く含まれている亜鉛リッチ層とが網目状に入り混じった合金層でできている。まずメッキ層中の亜鉛が電飾作用により自ら溶け出し、鋼板の錆を防ぐが、亜鉛は減耗する。この減耗した部分に、アルミの酸化生成物が補填されて亜鉛の溶出した部分を埋めていく。これを自己修復機能と云いい、防食効果を高めている。
アルミナの製法
アルミニウムの粗原料は粘土のようなボーキサイトであり、それからアルミナ(Al2O3)を抽出して、これを電気分解する。ボーキサイトにはアルミナが 50 % 強含まれているが、ボーキサイトからアルミナを得るには次の方法による。ボーキサイトを粉砕し
NaOH を加えて加圧加熱すると NaAlO2 (アルミン酸ソーダ)になる。これは水溶液であるから、溶けない不純物を濾過分離する。分離された成分の殆どは酸化鉄で
あり、赤いから赤泥と呼ぶ。この NaAlO2 の水溶液から Al(OH)3 を析出させたいのであるがこのままでは何も起こらないので種として Al(OH)3 自身の粉末を添加すると析出が始まる。これを沈降分離し、洗浄する。これを焼成すると目的のアルミナができる。この方法をバイヤー法という(図6)。アルミニウムは地殻には
3 番目に多く存在する金属である。日本にどこにでもある粘土の中にも Al2O3・2SiO2・2H2O として存在する。しかし Si がこの形で50 % 弱もあるとバイヤー法では全くアルミナを抽出できない。オーストラリアに多量に存在するボーキサイト
(SiO2分=5〜6%)のものしか、経済的に引き合わないということである。
アルミナの電解
アルミナは融点が高い(2020℃)。これを下げるために融点の低い氷晶石(Na3AlF6、融点 1020℃)を加熱融解しそれにアルミナを加えると解けて混合物ができる。これを電気分解すると溶融したアルミニウムが電解槽の底に溜まるのを排出する。この製法を発明したのは
1886 年にアメリカのホールとフランスのエルーが偶然同じ年に発見したので、この電解法をホール・エルー法という。
用途及び合金の種類と材料記号
アルミニウムは鉄と違って合金でなくても使用できる。純アルミは耐食性があり、強度を必要としない用途に採用されている。空気中では表面は酸化されるが、内部までは進まない。表面に緻密なアルミナ(Al2O3)の酸化被膜が出来るからであり、人工的にこれを作った製品がアルマイトである。アルミニウムの粉末と酸化鉄(Fe2O3)の混合物に点火すると燃焼熱で融解した鉄ができる。これは溶接に利用されテルミット法という。なお JIS 材料記号では最初に A という文字がつく。表
12 にアルミニウム合金の種類と用途を示す。

銅の原鉱石は黄銅鉱(CuFeS2)、輝銅鉱(Cu2S)などであるが、銅の地殻における存在量は 0.01 % で Al や Fe よりはるかに少ない。それでも古くから使われていたのは、銅鉱床ではときたま純粋な銅が採取され、加工性の良さでそれが利用できたとされている。原鉱石で黄銅鉱が
100 % であれば、そこに含有する Cu は 34.65 % であるが、採鉱品位といわれる銅鉱石でもその含有量は 0.2〜0.5 % 程度である。
選鉱
含有量がすくない鉱石は濃度を高くしなければならない。それが選鉱であり、まず岩石としての鉱石を砕き、粉砕し、ボールミル等で微粉末にし、さらに浮遊選鉱により分別する。これでも完全な分離は程遠い。選鉱された製品(これを精鉱という)の銅の含有量は
20 % 程度であり、残りの捨てられる不要の鉱滓(これを尾鉱という)の銅含有量はまだ最初の半分も残っている。もったいないがこれはどうにもならないらしい。
溶練
精鉱になっても、銅はまだ黄銅鉱のままであり、不純物も含んでいる。これを溶鉱炉で溶かして Cu2S (硫化銅)にする。溶鉱炉には 1. 精鉱(CuFeS2) 2. 含銀鉱石(SiO2+Au、Ag) 3. 石灰石(CaCO3) 4. コークス
の 4 種類の原料を投入する。ここで 1700〜2000 ℃ に加熱すると銅成分は Cu2S (これを「かわ」という)となり、他の成分はガラス(xFeO・yCaO・zSiO2 、これを「カラミ」という)となって「かわ」の上に浮き分離される。
2.の含銀鉱石が存在しないとこのカラミが生成しない。また金や銀を入れるのは、元の鉱石に多少ともそれらが存在しているからであり、それを捕集するためである。精鉱中の硫黄分は燃えてSO2 になり、これは捕集して硫酸工場に送られ利用される。ここでできた「かわ」にはまだ硫黄分が残っているので、溶鉱炉からでた溶けた状態の「かわ」を転炉に入れ、空気を吹き込むとやはり「カラミ」と銅に分離する。溶けた銅を型にいれて畳の大きさにする。これを粗銅という。
電解精製
粗銅の品位はまだ 98.5 % 程度でありこれを 100 % の銅にするには電気分解をする。それは粗銅を陽極とし、純粋の銅を陰極にして行う。純粋の銅は電気銅という薄い板(種板という)である。粗銅が溶け出し種板に電析してたまり、ここで始めて純粋の銅ができる。粗銅中の不純物は下に落ちて泥になる(これを陽極泥、スライムという)。これには金や銀が含まれており、前段の溶練の時に投入した含銀鉱石のものであり、当然回収されるが純粋にするにはさらなる精製を必要とする。この電解に使用する液は硫酸と硫酸銅の混合溶液である。
用途及び銅合金の種類と材料記号
銅合金の材料記号は最初に銅を意味する C をつける。表13 に銅合金の種類と用途を示した。

チタンの地殻存在量は銅や亜鉛よりはるかに多い。しかし工業的に使用されるようになったのは 1948 年以降である。酸化チタン(TiO2)の形で存在していても分離が難しいということである。銀灰色の金属であり質量当たりの強度は鉄の2倍、アルミの 6 倍、軽くて強い金属である。さらに耐食性があり、海水にも強く、融点も高く(1668℃)、電気も熱も伝えにくい。メリットの多い金属である(5章.18
ヤング率参照)。チタン鉱石の産出国はオーストラリア(36%)、カナダ(21%)、南ア共和国(18%)、ノルウェー(6%)である。
塩化工程
どこにでもあるチタンであるが、精製するとなると話が変わる。チタンが濃縮された鉱物は 95 % の TiO2 を含むルチルと FeO が混じるイルメナイト(FeTiO3)である。しかしルチルはすでに枯渇した。故にチタン含有量 50 %以下のイルメナイトから酸化鉄を取り除き、TiO2 を 90 % 以上にする。
その原料に塩素を加えて 900 ℃ で加熱すると四塩化チタン(気体)ができる。これを液化して不純物を除き次の工程で還元される。
還元工程(クロール法)
四塩化チタンとマグネシウムを不活性ガスの存在化で密閉し熱を加えて反応させるとチタンの塩素は塩化マグネシウムとなって取り除かれる。このとき純粋のチタンはスポンジ状になっているので「スポンジチタン」という。ここでできた塩化マグネシウムは分解され再使用される。
用途及びチタン合金の種類と材料記号 チタンの場合は最初にTの文字がつく。
TP270 純チタン1 種 最も高純度が高く、軟らかい。 プレス成型に使用。
TP340 純チタン2 種 標準の材料。性能のバランスが良く、広く用いられる。
TP480 純チタン3 種 強度の高い材料。
チタン合金にはアルミニウム、モリブデン、クロム、タングステン、バナジウム、ジルコニウム、ニオブ、タンタル 等が用いられる。
チタンの用途は ○ 輸送機器 航空機、○ 火力、原子力発電用の復水器 復水管、管板 ○ 産業用機器
○ 電解反応用機器、触媒 ○ 電子・情報機器 燃料電池、磁気ディスク
○ 建材、モニュメント、架橋ケーブル ○ 医療部品 人工骨 ○ その他 鉄鋼添加材、塗料、
印刷インキ、合成樹脂、製紙、化学繊維、ゴム、ガラス部品等あらゆる分野に及ぶ。
亜鉛 亜鉛の鉱石は閃(せん)亜鉛鉱 ZnS である。岩石と一緒に産出するから粉砕して微粉にし浮遊選鉱を行う。選鉱を行っても亜鉛成分は 50 % 程度であり、他に金属酸化物が含まれている。ここから行う精錬法には二つあり、乾式と湿式である。乾式法は選鉱した原料を焙焼反応(硫化亜鉛ZnSは燃える)し、ZnO
に酸化させる。これをコークスで還元すると金属亜鉛ができる。亜鉛の沸点は 907 ℃ と低いからコークスで 1400 ℃ に加熱すると亜鉛は蒸気となり、これをコンデンサーで冷却すると液化し、これを型に流し込みインゴットを作る。湿式法は焙焼までは同じであり、ZnO
を硫酸に溶かして溶液とし不純物を除去したあと電解法によりアルミニウムの陰極に析出させる。亜鉛は両性元素であり、単体も化合物も酸、アルカリに溶ける。
主な用途 :トタンや真鍮の製造用、溶融亜鉛メッキ、ダイキャスト、電池用材料、有機化学の還元剤。 染料中間体、漂白剤、防錆塗料、金属製錬、抜染剤
。
ニッケル ニッケルの主な鉱石はケイニッケル鉱(Ni,Mg)SiO2・nH2O や磁硫鉄鉱 FeS であり、鉱石から不純物を除き、硫黄と反応させて Ni3S2 とし、これを焼いて砒素や硫黄を追い出し、生成する NiO を転炉に入れて還元すると粗製のニッケルが得られる。これにはまだ少量の銅が含まれているので次に電解またはモンド法で純粋な金属ニッケルを得る。モンド法とは粗製ニッケルに一酸化炭素を反応させニッケルカーボニル
Ni(CO)4 (液体)を造る。これを揮発させると爽雑物と分離が可能であり、それを熱して分解し純ニッケルを得る。
用途 :ニッケルはステンレス鋼の合金としての用途が多く、他にニクロム線、熱電対、磁性 材料、メッキ等に利用される。
クロム クロムの鉱石はほとんどがクロム鉄鉱(FeCr2O4)であり、種々の操作を経て重クロム酸ナトリウム
(Na2Cr2O7・2H2O)を作り、さらに炭素で還元して酸化クロム Cr2O3 とし、アルミニウムのテルミット法によりクロムを分離する。テルミット法とは金属アルミニウムで金属酸化物を還元する冶金法の総称である。金属酸化物と金属アルミニウムとの粉末混合物に着火すると、アルミニウムは金属酸化物を還元しながら高温となる。これにより目的の金属は下部に沈降し、純粋な金属が得られる。この方法は炭素燃料を使用しないので金属に炭素を含まないという特徴がある。
用途:クロムは強磁性で、安定な金属であり、殆どはステンレスやニクロム線などの合金に使用される。
マンガン マンガンはその酸化物であるマンガン鉱 (MnO2 や Mn3O4) をアルミニウムで還元して得られる。マンガンは酸素との結合力が強く炭素で還元することはできない。故に粉末アルミニウムで還元(テルミット法)するか、硫酸塩を電解して得る。極めて純度の高いマンガンは蒸留によって得られる。
用途:鋼の製造(脱酸や脱硫)、合金成分、有機溶剤製造の酸化剤、フェライトの原料、花火やマッチの原料、ガラスの着色、二酸化マンガンはマンガン乾電池の電極。
鉛 この鉱物はほとんど方鉛鉱 (PbS) であり、これを焙焼して酸化して酸化鉛 (SbO) にして炭素で還元する。さらにこれを電気分解して精製する。鉛は水と空気で水酸化鉛になり、鉛色になる。これは水に不溶であり、この被膜によりこれ以上の変化はしなくなる。柔らかくて重いので防音シートに単体で使用される。合金は錫と行われハンダに使用される。最大の用途は鉛蓄電池である。正極が酸化鉛
PbO2、負極が Pb である。鉛もまた両性元素である。
錫 錫の鉱石はスズ石 (SnO2) であり、炭素で還元し、電気分解で精製する。古くから知られている元素であり、合金である青銅もしかりである。単体は柔らかい銀白色で酸素や水に侵(おか)されない。三種の同素体がありそれらは
α錫(灰色 13.2 ℃ 以下)、β錫(白色 161 ℃ 以下)、γ錫(161 ℃ 以上、融点 232 ℃)である。α錫はもろく非金属的である。常温では金属であるが、低温になるとぼろぼろになる。これをスズペストという。錫も両性元素である。最大の用途はブリキであるが、次いで多いのはハンダである。
金属が天然に単体で算出することは、一部の例外を除いてほとんどない。多くは鉱石として表14のように酸化物や硫化物として産出する。それらを利用するには当然化学的操作により分離、精錬しなければならない。そしてそれらの鉱物は地球に均一に分散しているわけではなくある地域に偏在して居る。日本にそれらの資源はほとんどなく外国からの輸入になるが、それに頼らなくてよいのは石灰石とヨウ素、硫黄ぐらいである。
多くの元素からなる化合物は無機化合物に絞っても膨大であるが、人間に関わる化合物はかなり限定される。そのなかの主要な物質といえばさらに限られるが、それらの物質は結合の法則に従って分解、結合を繰り返し、人間に都合の良い化合物へと再生することができる。
これの基礎的なことは第二章5.3で述べたが、具体的な物質については殆ど触れていない。ここでは主要な化合物について概略を述べる。
硫酸(H2SO4)
100 % の硫酸は無色のねばい液体であり、比重は 1.83、融点は 10.5 ℃ である。高濃度では酸化力が極めて強く、低濃度では酸性が強い。吸湿性と強い脱水作用があり、硫酸が皮膚に付くと火傷を起こす。非鉄金属精錬での排ガスに含まれる
SO2 や重油脱硫による硫黄等を利用して製する。化学工業における重要な原材料であり、その使用量はその国の工業の大きさを測る目安となる。用途は工業用品、医薬品、肥料、爆薬などの製造や、電池の電解液に用いる。
硫酸から得られる塩類
硫酸亜鉛 ZnSO4・7H2O 繊維工業、防腐剤、医薬品、メッキ、農薬
硫酸アルミニウム Al2(SO4)3 皮なめし剤、顔料の製造、製紙用定着剤、水の浄化用、医薬用
硫酸アルミニウムカリウム AlK(SO4)2・12H2O 一般的な明礬、染色剤、防水剤、消火剤、皮なめし剤
硫酸アンモニウム(硫安) NH4・2SO4 肥料
硫酸カリウム K2SO4 肥料、明礬の原料、
硫酸カルシウム CaSO4、CaSO4・2H2O 2 水和物は石膏、陶磁器製造、製紙用、セメント混和剤
硫酸水素ニトロシル NOHSO4 ニトロソ化試薬
硫酸ニッケル NiSO4 ニッケルメッキ
硫酸鉄(緑礬) FeSO4・7H2O インク、顔料(紺青)、還元剤、媒染剤、医薬、木材防腐剤
硫酸銅(胆礬) CuSO4 銅メッキ、銅精錬、エッチング、顔料、殺菌剤、媒染剤、防腐剤
硫酸ナトリウム(ぼう硝) Na2SO4 ・10H2O ガラス工業、ソーダ、パルプ製造
硫酸ニコチン C10H14N2・1/2 H2SO4 殺虫剤
硫酸バリウム BaSO4 X線造影剤、光沢紙、印画紙
硫酸マグネシウム MgSO4 医薬品、肥料、乾燥剤
その他及び関連物質
硫酸鉛(PbSO4):鉛蓄電池で発生。硫酸マンガン(MnSO4):肥料、農薬・顔料・乾燥剤等の原料、排煙脱硫 剤。 亜硫酸水素ナトリウム (NaHSO3):還元剤、食品添加物。 亜硫酸ナトリウム(Na2SO3):防腐剤、製 紙工業、写真工業。
硝酸(HNO3)
空気中の窒素を固定してアンモニアを作り、それをオストワルド法により白金触媒により直接酸化して得られる二酸化窒素(NO2)を温水に溶かすと硝酸になる。濃硝酸は水素よりイオン化傾向の小さい金属を溶かす。濃硝酸と濃塩酸を 1:3 の割合で混ぜた王水には白金や金が溶ける。また、Al、Fe、Ni
などは硝酸不動態が作られるため完全には溶けない。肥料の原料、有機化合物の原料など有用な硝酸塩の原料となる。濃硝酸と濃硫酸の混合物である混酸を用いたニトロ化合物の合成物からは爆薬が作られる。
硝酸から得られる塩類
硝酸ウラニル UO2(NO2・6H2O 他の ウラン化合物の原料、ガラス工業、陶磁器、写真、医薬品
硝酸カリウム KNO3 (天然産硝石成分)硝酸の製造、肥料、防腐剤、黒色火薬、食品添加物、医薬
硝酸ナトリウム NaNO3 (天然産チリ硝石)、爆薬の成分、ガラスや陶器の光沢剤・釉、食品の防腐剤
硝酸アンモニウム NH4NO3 爆薬、窒素肥料、硝酸塩製造、爆薬、花火、殺虫剤、
硝酸カルシウム Ca(NO3)2 吸湿性のため乾燥地帯での肥料、
硝酸カルシウム (Ca(NO3)2・4H2O 肥料、冷媒用剤、染色加工剤
硝酸銀 AgNO3 塩の製造原料・写真感光剤・電気通信機器用・魔法ビン用・医薬の原料。
硝酸鉛 Pb(NO3)2 マッチ、爆発物、媒染剤、鉛化合物の合成原料、感熱紙の被覆剤、殺鼠剤。
硝酸バリウム Ba(NO3)2: 火薬類の酸化剤、医薬品の原料、分析試薬
硝酸第一鉄 Fe(NO3)2・6H2O 顔料製造。
燐酸 H3PO4
五酸化二燐 (P2O5) が水に溶けて生ずる mP2O5・nH2Oの総称であり、通常はオルト燐酸(P2O5・3H2O)を言う。工業的な製法はリン灰石 Ca5F(PO4)3 を濃硫酸で分解して作る。しかしこの方法では純粋のものは得られないので、黄燐(白燐)を硝酸で酸化するか、十酸化四燐(組成式から五酸化二燐ともいう)を水と作用させ煮沸する。純燐酸は透明で固い結晶で、比重
1.83、融点が 42.35 ℃ であり、潮解性がある。水に溶けやすくエタノールにも解けるやや強い酸である。用途は 肥料原料、金属表面処理、燐酸塩類製造用、食品添加物、活性汚泥処理等であるが、生化学においても重要な働きをする。
燐酸から得られる塩類
ピロ燐酸マグネシウム Mg2P3O7 触媒
メタ燐酸ナトリウム (NaPO3)n 食品添加物、清缶剤、水処理剤、染料分散剤、金属イオン封鎖剤、等
第一燐酸アルミニウム Al(H2PO4)3 表面処理剤、防炎剤、耐火物バインダー、等
ホスフィン酸ナトリウム NaH2PO2・H2O 無電解メッキ、還元剤、医薬原料、等
ピロ燐酸カリウム K4P2O7 窯業、医薬培養基剤、緩衝剤、醸造、pH調整剤、等
燐酸第2水素アンモニウム NH4H2PO4 葉面散布剤、肥料原料、消火剤、発酵助剤、染料分散剤、等
メタ燐酸ナトリウム NaPO4 染色、医薬、金属洗浄剤、清缶剤、食品、等
第3燐酸リチウム Li3PO4 窯業の原料、光学の原料、等
トリポリ燐酸ナトリウム Na5P3O10 業用洗剤、洗浄剤、清缶剤、硬水軟化剤、セメント混和材
燐酸石灰 Ca(PO4)2 白色粉末、動物の骨の主成分。Ca(H2PO4)2 は肥料となる。
第一燐酸ナトリウム NaH2PO4 食品加工、ベーキングパウダー、乳化剤、食肉結着剤、緩衝剤、pH 調整剤
第二燐酸ナトリウム NaH2PO4・2H2O 食品加工、乳化剤、食肉結着剤、発酵助成剤、緩衝剤、pH 調整剤
第三燐酸ナトリウム Na3PO4 食品加工、砂糖精製、乳化剤、果実剥皮剤、アルカリ洗浄剤、緩衝剤
塩酸 HCl
気体の塩化水素の水溶液である。液中では完全に電離し強い酸性を示す。純粋の塩酸は無色であるが、工業用は塩化鉄(V) FeCl3 を含んでいるため黄色である。市販の濃塩酸は濃度が 12 mol/L( 37.2 重量 % )が一般的であり、比重は 1.19 である。強酸であるから、イオン化傾向がHより大きい金属と反応して水素を発生し、金属の塩化物を作る。工業的には
NaCl の水溶液の電気分解によって NaOH とともに水素と塩素を生成し、その後水素と塩素を混合して作る(イオン交換膜法)。用途は各種化学工業、医農薬、食品の製造、金属表面処理等の幅広い分野で使用される。
塩酸から得られる塩類及び塩化物
塩化亜鉛 ZnCl 毒性、マンガン乾電池の電解液、半田付け融剤
塩化アルミニウム Al2Cl6 有機化学反応の触媒、
塩化アルミニウム6水和物 Al2Cl6・6H2O 塩析剤、木材防腐剤、染色剤、写真の定着、医療用防汗剤。
塩化アンモニウム NH4Cl 肥料、食品添加物、染色、火薬の原料。
塩化カリウム KCl 清涼飲料水、食塩代替物、カリウム塩類の製造、緩衝液、電解液、
塩化カルシウム CaCl2 除湿剤、融雪剤、豆腐用凝固剤、食品添加物。
塩化銀 AgCl 写真感光材料(ハロゲン化銀)。
塩化水銀 HgCl
塩化ナトリウム NaCl 食塩、工業化学原料、寒剤
塩化チタン TiCl3 チーグラー・ナッタ触媒(ポリオレフィン系)
四塩化チタン TiCl4 触媒原料、金属チタン原料、酸化チタン原料、その他チタン化合物原料
塩化第一鉄 FeCl2 下水処理剤
塩化第二鉄 FeCl3 プリント基板エッチング剤、下水処理剤
塩化ニッケル NiCl2 化学合成における触媒
塩化銅 CuCl 有機化学反応の触媒
塩化第二銅 CuCl2・2H2O 有機化学反応の触媒
塩化マグネシウム MgCl2 豆腐のニガリ、肥料の製造、金属マグネシウムの原料、
塩化リチウム LiCl 金属リチウムの原料、溶接融剤、除湿剤
炭酸 H2CO3
CO2 を水に溶かすと炭酸ができ、弱い酸性を示す。炭酸自身は酢酸より強い酸であるが、水中の CO2 はその一部しか炭酸にならないので、全体として弱い酸性になる。炭酸は水溶液にだけしか存在せずそれを単離することはできない。
炭酸から得られる塩
炭酸ナトリウム Na2CO3 洗剤(界面活性剤)、入浴剤、ガラスの原料、かんすい
炭酸水素ナトリウム NaHCO3(重曹) 入浴剤、食品添加物(発泡剤)、洗剤、研磨剤、医薬品。
炭酸カルシウム CaCO3 石灰石、貝殻、白亜の主成分、窯業、製紙、ゴムや充填剤の添加剤。
炭酸アンモニウム (NH4)2CO3 接着剤の原料、漢方薬、鹿角精成分。
炭酸水素アンモニウム NH4HCO3 食品添加物、泡消火剤、防火剤原料、医薬品原料、染料、肥料、触媒
炭酸水素カリウム KHCO3 殺菌剤
炭酸カリウム K2CO3 ガラス原料、液体石鹸、かんすい
炭酸マグネシウム MgCO3 運動競技用滑り止剤、研磨剤、医薬品。
炭酸バリウム BaCO3 毒重石の主成分。
硼酸 (H3BO3)
光沢ある透明な結晶であり、B2O3 の水和した形の酸の総称であり、分子式は H3BO3 で与えられる。この酸は遊離して天然にも産する比重 1.44、融点 185 ℃ の極めて弱い酸である。食料の貯蔵、医療の消毒剤、防腐剤、医薬の原料、顔料の製造原料、ガラスなどに利用される。
硼酸塩:硼砂(ほうしや) (Na2B4O7・10H2O) 温泉沈殿物や乾燥した塩湖(カリフォルニア)から産出するが、他のホウ酸塩 鉱物からも製する。陶磁器や琺瑯の釉薬(うわぐすり)、ガラスの原料、洗剤、防腐剤、硼砂球反応(金属の訂正分析)に使用。
苛性ソーダ(NaOH)
常温では無色無臭の固体で米粒状やフレーク状で供給される。融点は約 318 ℃、比重は 2.1、潮解性が強く、空気中で徐々に吸湿して炭酸ナトリウム水溶液となる。水溶液では完全に電離し水酸化物イオンとな
り、強いアルカリ性を示し、溶解時には激しく発熱する。市販品は通常48%水溶液であり、無色透明で比重は約 1.5、重要な工業薬品であり、人造繊維製造、石鹸製造、石油精製、パルプ製造等。
その他の水酸化物
水酸化バリウム Ba(OH)2 有機酸の滴定試薬、有機合成での加水分解。
水酸化カルシウム Ca(OH)2 (消石灰)漆喰、土壌の中和剤、試薬、pH調整剤、化学合成原料、体質顔料。 水酸化アルミニウム Al(OH)3 白色粉末の両性酸化物、難燃材、人造大理石の充填材。
水酸化カリウム KOH 洗浄剤の材料、液体石鹸の材料、医薬品原料。
水酸化リチウム LiOH 蓄電池の電解質、写真の現像液、重合反応の触媒、セラミックスの原料
水酸化鉄(U) Fe(OH)2 顔料の製造
水酸化鉄(V) Fe(OH)3 複合色素の製造
水酸化マグネシウム Mg(OH)2 ガラス添加剤、合成樹脂添加剤、土壌改良資材、排水中和・排煙脱硫
水酸化コバルト Co(OH)2 顔料の原料、タイヤ、塗料
水酸化ストロンチウム Sr(OH)2・8H2O ガラス工業、Sr塩及び蛍光顔料の製造。
水酸化銅 Cu(OH)2 レーヨン製造用
アンモニア(NH3)
常温常圧で無色の気体であり特有の強い刺激臭がある。水に非常に溶けやすく(水の体積の 442 倍、20℃)、水溶液は弱い塩基性を示す。工業的生産はハーバー・ボッシュ法により水素と窒素を鉄触媒(Fe3O4)存在下で反応させる。硝酸、硫安などチッソ肥料の原料である。
高温高圧で CO2 と反応させると尿素 CO(NH2)2を生じる。ネスラー試薬により水溶液中のNH4+ は黄褐色〜赤褐色の沈殿を生成する。
塩の生成
塩が生成するのは酸と塩基の反応だけではなく、他の反応によっても生成する。
1. 酸と塩基性酸化物 2HCl + CaO → CaCl2 + H2O
2. 酸と金属単体 2HCl + Zn → ZnCl2 + H2
3. 酸性酸化物と塩基 CO2 + 2NaOH → Na2CO3 + H2O
4. 非金属単体と塩基 Si + 2NaOH + H2O → Na2SiO3 + H2
5. 酸性酸化物と塩基性酸化物 CO2 + CaO → CaCO3
6. 非金属単体と金属単体 Cl2 + Mg → MgCl2
全元素のなかで金属は圧倒的に多い事は前述した。金属が酸素と化合してできる物質は多様である。
主要なものを列挙してもキリがない。表15に示したのはほんの一部であるが、これらは純粋の酸化物である。これらが複数混合したり、割合が異なると膨大な数になる。それぞれの場合は個別に調べることになるが、有用な物質についてはかなり、知ることができるであろう。

酸素と珪素で地殻元素の約 70 % を占める。その化合物の SiO2(二酸化珪素)は天然にどこにでも存在する。それらは粘土、
原料は粘土として
カオリン(Al2O3・SiO2・H2O)や 石英(SiO2)や、
長石(KAlSiO2,NaAlSiO2)
などである。それらは右の表のように、原料の配合や焼成温度により分類される。土器の素地は黄褐色、赤褐色、黒褐色などで吸水性で透光性はない。
ガラスも古い材料である。そして種類も多く分類の仕方により数千種にもなるとされる。しかし大きく分類すれば化学成分的には 表17 のように 4
つ のグループになる。
1. シリカガラス、 2. ソーダ石灰ガラス 3. 鉛ガラス、 4. ほうけい酸ガラス である。
これで全ガラスの 95 % を占め残りの 5 % は特殊ガラスとなる。
これらの成分は基本であり、これ以外にも多くの成分が添加され、それぞれその添加割合により特殊な機能を発揮する。SiO2 やB2O3 は網目構造を作り、PbO は屈折率が大きい、等である。
着色:着色剤としては金属酸化物が使われる。これらは珪酸と作用して珪酸塩を作って発色する。あるいはコロイドの微粒子が分散して発色するのもある。(青:CoO、黄:CdS、赤:AuCl3 、緑:Cr2O3等)。
強化ガラス:板ガラスを軟化点近く(約700度)に加熱した後、空気を吹きつけ、急激に冷やして焼き入れしたものである。通常のガラスの3〜5倍の強度となり、耐熱性も増す。一カ所破損すると全体が破損し破片は角が丸くなる。中間に樹脂層を設けた合わせガラスとしても利用される。

セメントは水と混ぜ合わせ、混練すると時間と共に硬化する石灰を主成分とした粉末である。セメントといえばポルトランドセメントであるが、1824 年イギリスの煉瓦職人ジョセフ・アスプディンにより発明され、ポルトランド島の建築用石材に似ていることから付けられた名前である。ポルトランドセメントは石灰石・粘土・鉱滓などを粉砕して石炭で高温焼成(1450℃)したのち、空気で急冷するとセメントクリンカーと呼ばれる
1 cm 程度の黒い塊になる。これをさらに粉砕し、石膏(CaSO4・2H2O)を加え粉砕してセメントが完成する。この石膏を加えないと粉砕したクリンカーは自然に固まってしまう。ポルトランドセメントの一般的な主成分は CaO(63〜66%)、SiO2(20〜24%)、Al2O3(5〜7%)、Fe2O3(2〜4%)、CaSO4(2〜3%)である。これらの成分はそれぞれ水和反応速度や強さの発現性、水和熱などが異なるためにその配合割合や粉末度により
1.普通ポルトランドセメント
2. 早強ポルトランドセメント
3. 超早強ポルトランドセメント
4. 中庸ポルトランドセメント
5. 低熱ポルトランドセメント
などが作られる。さらにポルトランドセメントをベースにして高炉スラグ、フライアッシュをそれぞれ添加したセメントがある。高炉セメントやフライアッシュセメントは長期強度、化学抵抗性、水密性などの特徴がある。
ファインセラミックスとは人工的に製造したホウ化物(ZrB2、TiB2、LaB6、BN)や酸化物(BeO、ThO2、ZrO、ZrO2、Al2O3、SiO2)また窒化物(Si3N4、BN、AlN)、その他の化合物を焼成の原料とするセラミックである。特にエレクトロニクス産業をはじめ、各種産業用途に用いられる磁器は高い性能や精度が要求され、それに答えるために開発された。粘土や珪石などの自然材料から作られる一般の陶磁器と区別してニユーセラミックとも言う。ファインセラミックスは、精選または合成された原料粉末の化学組成を精密に調整し、高度に制御された製造工程をへて作られるセラミックスである。また JIS では『目的の機能を十分に発現させるため、化学組成、微細組織、形状および製造工程を精密に制御して製造したもので、主として非金属の無機物質から成るセラミックス』と定義されている。これらの機能としては 電磁気的(半導体、永久磁石、磁気記録、超伝導)、機械的(耐摩耗性、耐熱性)、医用的(人工骨、人工歯等)、光学的(透光性、光ファイバー)性能を有し用途も多岐にわたっている。
参考: 顔料
顔料は水・油・溶媒に溶けない不透明の粉末でその状態のままで着色する物質の総称である。「顔料」という表現は、
赤系 弁柄:(Fe2O3) 鉄さびと同じ物であり、多くの呼び名がある。
白系 チタン白:(TiO2)
黄系 黄鉛(別名:クロムイエロー)(PbCrO4)、その他:亜鉛黄(ジンクイエロー:ZnCrO4)、カドミウムイ エロー(CdS)、チタニウムイエロー(TiO2+NiO+Sb2O3)、黄土(Fe2O3+Al2O3+SiO2) 等。
青系 ウルトラマリン(Na8(Al6Si6O24))、コバルトブルー(CoAl2O4)、セルリアン(Co・nSiO2)
ウルトラマリン青(群青(ぐんじよう))、 プロシア青(紺青(こんじよう)) 等。
緑系 エメラルドグリーン(Cu(C2H3O2)・3Cu(AsO2)2)、ビリジアン (Cr2O3・2H2O)、酸化クロム(Cr2O3)、
コバルトグリーン(CoO−ZnO−MgO)、クロム緑(PbCrO4+KFe3+[Fe2+(CN)6])。
黒系 カーボンブラック,骨炭(アイボリーブラック)、桃核炭(ビーチブラック)、油煙(ランプブラック)。