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第五章 物理量の比較

 第五章 目次   5.1 長さ    5.2 質量    5.3 時間    5.4 面積    5.5 体積    5.6 速度  
 5.7 電磁波   5.8 エネルギー    5.9 温度    5.10 熱伝導率    5.11 音圧    5.12 圧力  
 5.13 電気抵抗率    5.14 密度  5.15 濃度(%)   5.16 濃度(pH)   5.17 粘度    5.18 ヤング率
 5.19 粒度     5.20 価格   コーヒータイム(5)擬態   第五章 執筆後記

5.7 電磁波(m)

 電磁波と聞いて何を思い出すであろうか。想像するものが何であれ、それは図表Fに見るようにγ線、x線、紫外線、光、赤外線、電波などがひとくくりで電磁波なのである。それは「電気と磁気の波が互いに絡み合いながら、その周期的変化が空中を伝わる波動」であるというように定義される。電磁波は物体からも生じ「その温度に応じたエネルギーを放射する現象」でもある。
マクスウェルは 1873 年に電磁波の存在を予言し、1888 年にヘルツがその存在を電気放電の実験により確認し、そのとき光と同じ反射屈折の性質も確かめ光も電磁波であるとした。電磁波の波長λと周波数νの関係は λ=c/νであるから(c=光の速度)、波長でも周波数でも電磁波を特定できる。図Fでは波長(m)は青帯の中に示し、その下に周波数(Hz)を示した。

1. 電子が動けば電磁波が発生

 電子の流れは電流であり、それは電界と磁界を生じる(これらの関係は3章7節 12、13 を参照)。
故に電磁波が磁界と電界の波であれば、その発生には電子の挙動が大きく影響する。可視光線も赤外線も電子が関係し、電子殻の位置をどう動くか(遷移)に関係する。(電子殻については2章3節 2 参照)γ線のように波長の短い電磁波は原子核が放射性崩壊(人工の放射性元素)をするときの電磁波であり、X線が発生するのは電子殻の一番内側(1S)の電子が励起し、それが基底状態に戻るときに発生する。可視光線を含む近傍の電磁波は原子や分子の外殻電子が基底状態から励起しそれが戻るときに生じる。電子が空気中に飛び出すのが放電であり、このときも電磁波が発生する。故に雷からも電波が発生する。静電気が生じてぱちぱちと音がするときも、我々の身体からも電磁波が発生する。送電線からも、家庭における様々な電気製品からも電流により電波を発生する。これらすべての根本原因に電子が関係しているのである。

2. 温度と放射エネルギー(ステファン・ボルツマンの法則)

 物体には必ず温度があり、その温度に応じてエネルギーを電磁波として放出する。すべての電磁波を吸収する物体を完全黒体といい、この黒体はまた温度に応じたすべての電磁波を放射する。そして「黒体が放射する全エネルギー量は物質の種類に関係なく、その絶対温度の4乗に比例する」というのがステファン・ボルツマンの法則であり、次式で表される。
σT4 ・・・・・・・(E):放射エネルギー kW/m2
σ:ステファンボルツマン常数 = 5.6705×10−11 kW/m2・K4
:黒体の絶対温度 K
式(E)を図表化したのが図(A)である。完全黒体の放射率は 1 であるが、完全黒体は存在しない。 赤外線を利用する放射温度計はこの法則を利用したものであるが、放射率ε(ε<1)という係数を用い、εσT として計算することになる。物質の放射率はそれぞれ決まっており、0.98〜0.3 の範囲にある。 電磁波1

3. 温度と波長(ウィーンの変位則)

それでは物質が温度毎に放射する電磁波の波長はどうなっているかに関係するのがこの法則であり、次式で与えられる。これも物質の種類によらず、そのピーク波長は絶対温度のみに関係する。
λ=0.00289/T・・・ (F)
  λ:ピーク波長(m)、
  T:絶対温度(K)
これを図表化したのが図(B)である。この波長をピークとして短波長側にも長波長側にも分布する。
短波長側はピークの 1/3 程度であるが、長波長は 5 倍ほどになる。これらの関係は次のプランクの波長分布の図に示されている。太陽を完全黒体とするとそのピーク波長から表面温度を測定できる。常温の物体の熱放射のピークは約10μm(赤外線)にあり、地球上のほとんどの物質は赤外線を放出している。 電磁波2

4. 電磁波と温度と放射エネルギー(プランクの法則)

 すべての物質は温度に応じたエネルギーを電磁波として放出し、その波長は絶対零度(−273.15℃)に逆比例する。これが前節までの知見である。ではエネルギーと波長と温度の関係はどうかというのがプランクの法則で判明する。
電磁波3
それは完全黒体を実験的に作り、たとえば内部が空洞の鉄の箱に小さな穴を開け、その箱を加熱すると、その穴から温度に応じた電磁波(光)が放出(黒体放射)される。この小さな穴から入射した外部の電磁波は電磁波4完全に吸収されると考える。この場合この黒体の穴だけが問題であり、穴以外の部分に外部の放射がいくらあっても関係ない。温度が測定された黒体の穴からの放射のみが必要であり温度を変化させその放射能を調べる。この黒体の温度(T)と波長及び放射エネルギー(Wλ)との関係がプランクの法則であり、次式で表される。  
    Wλ:単位面積、単位波長当たりのエネルギー W/m2 ・m
      定数:C1 =2πhc2 =3.743×10−16 (W・m2
        C2 =hc/k=0.0144 (m・K)
            c=光速 3×108 m/s 、
            k=ボルツマン定数 1.3807×10−23(J/K)
            h=プランク定数 6.626×10−34(J・s)
            λ=波長(m) 
この(G)式をグラフにしたのが図(C)である。高い温度の物質からは可視光線が多く放射され、それを中心として電磁波が広がっている。3 K は−270 ℃ であるが、それでもわずかなエネルギー(長波長の電磁波)を放出していることがわかる。 このプランクの式を積分すると前述のステファン・ボルツマンの式が得られ、微分するとウィーンの変位則が導かれる。

5. 光通信

(1)光ファイバー
光ファイバー  開発当初、光ファイバーの講演を聞いた人が、「おれのこの眼鏡の厚さを通しただけで光は減衰する、まして長距離を光が通るわけがない」と怒りをこめて叫んだ。1960 年代では胃カメラ用の光ファイバーの伝送損失は 1000 dB/km もあったからこれでは絶望的と思われるのも無理はない。しかし改良に改良が重ねられ、ついに純粋石英ガラスにより理論的限界値とされる 0.15 dB/km (波長1.55μm)が達成された(1986年)。まさに驚異的な前進であり、当初これを予想できた人々には脱帽
する。ガラスファイバーは直径 10〜50 μm 程度と細くて弱いので、表面に樹脂をコーティングすることで10倍の強度になる。ファイバーの構造は図のように屈折率の異なるコア(高屈折率)とクラッド(低)から構成されその境界面で全反射して光は進行する。直進する光が曲がったファイバー中を進むのはこのためである。髪の毛のように細い中を電波が通るためには、波長がそれに近く短いものでなければならない。それが光近傍の電磁波であり、その範囲は 1.26〜1.625×10−6 m の近赤外線である。
(2)レーザー
 光ファイバーがどんなに性能がよくても、そこに光の信号を送り込む装置がなければ「猫に小判」である。それを実現するのがレーザーである。これもまたファイバーと同じくらいの断面積の半導体の窓から信号を送り込む。その前段として電気信号を光信号に変える(デジタル信号の〈1〉や〈0〉は光の点滅に置き換わる)ことになる。受信側では光信号をデジタル信号に変える。いずれも微少な位置あわせを必要とする技術が必要である。
レーザーが誕生したのは 1960 年である。自然には存在しない光であり、レーザーとは「方向、位相、波長の揃った人工の光」である。原子の中の電子がエネルギーを得て励起してもとの基底状態にもどるとき、波長や位相が不揃いの電磁波を放出する。これを位相や波長を揃え増幅させてレーザーとなる。わずか 40 数年まえに、初光をみた光ファイバーとレーザーは大きく発展し実用化した。20 世紀最大の発明品は種々考えられるが、最初に述べた電子が動くと電磁波が発生するように、それを自由に制御する技術の一つとして光通信を挙げても異論はないであろう。 電磁波5